ディーゼルエンジン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/03 22:20 UTC 版)
主な用途
定置型の内燃力発電やポンプなどの原動機、舶用動力、トラックやバスといった大型の自動車や戦車のような軍用車両、建設機械・農業機械などの大型特殊自動車[注釈 7]、ディーゼル機関車や気動車などの鉄道車両に使用される。発電、ポンプなどはディーゼルエンジンが主流であるが、LPGや天然ガスなど気体燃料を用いた電気点火式ガスエンジンや、ガスタービンエンジンの場合がある。
船舶
大出力を生み出す大型舶用エンジンと、そこから派生した定置発電用エンジンは、ディーゼル機関の独擅場と言える用途である。これらの分野は他用途では常に制約・問題となる機関本体および補機の重量・容積をある程度度外視でき、ディーゼル機関の持つ大型化に適した性質に合致した結果と言える。一方、軍艦においては、水上戦闘艦ではガスタービンエンジンと組み合わせての巡航用エンジンとして用いられることが多いほか、潜水艦ではディーゼル・エレクトリック方式での推進器の駆動および発電機の原動機としての二次電池の充電にも用いられる。
- 21世紀現在、大型船舶では主にC重油を使用する低速ユニフロー掃気2ストロークディーゼル機関が主流となっている。外航大型船舶用のエンジン自体の大きさは、大きな物の一例として長さ約24メートル、高さ約15メートル、重量が2000トン程度、直列11気筒で総排気量約2万2千リットル、出力約8.5万馬力(MAN B&W 11K98ME型)というものであり、耐用年数は20年程度である。頭上排気弁と強力な過給器を組み合わせ、燃費上の要請[32]と必要なトルクからピストン径が1メートル弱に対しストロークは2.8メートル程度と、超ロングストロークである。このサイズで物理的なピストンスピードを現状以上にするにはあまりに巨大すぎるため、クランクシャフトの定格回転数は毎分60–100回転程度と低速になるが、その結果、理論上のディーゼルサイクルに近い特性を現実化できている。実際に熱効率は50 %を超え、55 %に迫る水準に到達する事例もあり、単体の実用内燃機関としては最高水準の熱効率を実現している。また毎分100回転以下の低速は、船舶のスクリュー回転にそのまま適用できる速度でもあり、強度面に制約を抱える減速歯車装置を設けることなく、クランクシャフトからの直結でスクリューを駆動できる。つまり実用上の動力伝達面でも損失が少なくなる。
- 船舶用大型2ストロークディーゼル機関は、頭上弁方式であることに加え、必要なトルクを出すためにピストンの直径が大きくなりがちである。またピストン直径の大きさと燃費向上の要請[32]ゆえにコネクティングロッド部分がピストン・ロッドと連結棒に2分割されたクロスヘッド構造を取らざるを得ないため、エンジンは総じて非常に背が高い。
- 使用燃料が格安のC重油(舶用燃料油 (PDF) とも)であり、石油精製した後の残渣油由来の、粘度の高い低質燃料であるため、極めて燃焼残渣が汚く、シリンダー内部の潤滑には燃料に含まれる硫黄から生成される硫酸に対抗しうる船舶用シリンダー油が必要である[32]。船舶用シリンダーは油痛みが激しいため、通常は使い捨てであり[33]、その他エンジン部分の潤滑を担うシステム油とは経路を独立させている[33]。
- 4ストローク中速ディーゼル機関(300–1,000 rpm)は、大型漁船からフェリー、客船、外航大型船舶まで幅広く使われている。A重油が燃料の、コンロッドでピストンとクランクとが結ばれたトランクピストン機関が主流で、一部に残渣油由来のC重油やACブレンド油を使用できるものがある。熱効率では2ストローク低速ディーゼル機関に及ばないものの、出力当たりの重量や外形寸法が小さく機関配置の自由度が高いという利点が有り、それによる防振、電気推進化の容易なクルーズ船やフェリー、RO-RO船のように構造上機関室の高さを抑えたい船で主流となっている。通常、可変ピッチプロペラか減速機を介して使われる。
- 高速船艇やプレジャーボート、小型漁船などでは、A重油あるいは軽油を燃料とする4ストローク高速ディーゼル機関(1,000 rpm以上)が使われており、小型のものでは自動車用と共通のエンジンが使われている場合も多い。機関と駆動系を小型化するために減速機付きの構成になっている。
- 難点として、C重油が燃料の船舶用ディーゼルエンジンは、燃料であるC重油を事前加熱によって流動性を高める必要があり、これに関わる補機類が多数必要になること、さらに一度エンジンを休止させるとエンジン本体と補機類の再始動に長時間を要することから、船の停泊中もエンジンの低速回転を続行して各部の保温と潤滑とを維持し、かつ燃料系統の予熱も同様に維持せねばならない点が挙げられる。
歴史
1900年代から小型船に置ける試行的採用が始まったが、外航船舶として本格的な成功を収めた最初のディーゼル船は、1912年にB&W(バーマイスター・ウント・ウェイン)の1,250 hp・4ストロークエンジン2基を搭載して建造されたデンマークの5,000 t級貨物船「セランディア」(MS Selandia)である。この船は同クラスの蒸気機関搭載船に比して3分の1程度の燃料消費で航行できた(かつ、蒸気船のようなボイラー用の真水が不要であった)ことでその経済性と航続距離における優位性を立証し、実用的成功を収めた。排煙の量が蒸気船に比べて遥かに少ないため、蒸気船のような太い煙突は実用上不要で、簡易な排気管を備えるだけで済んだ(以後のディーゼル船では、主として美観上の見地から旧来同様の煙突を模したファンネルを立て、その中に外見より細い排気管を通す事例が多く見られる)。
その後の第一次世界大戦初期には、機関室の密閉が容易でガソリン機関よりも大型化に適し、航続距離を伸ばせることから、当時急速に実用水準に達した潜水艦の主動力に導入された。第一次大戦後の1920年代以後は通常の軍艦・商船にも本格的普及が始まったが、舶用動力の主流となるには時間がかかった。1950年頃までの船舶用大型ディーゼルエンジンにはある程度の高品質な重油が必要であり、また単体では蒸気タービンに比肩する大出力化が進展せず、大出力・高速の確保には複数エンジンを連動させて出力合成する複雑化を強いられた(例として1934年から1936年までに就役したドイツの「ポケット戦艦」ことドイッチュラント級装甲艦は12,000トン級ディーゼル艦で2軸のスクリューを備えていたが、49,000 hp級の出力確保のためディーゼル機関8基を搭載、4基ごとにスクリュー1軸を駆動した)。このため、特に大型船舶の動力としては、石炭や粗悪重油でも使用可能な蒸気ボイラーで作動し、なおかつ大出力化の容易な蒸気タービンを駆逐するまでには至らなかった。
1920年代、舶用大型ディーゼル機関の分野では、4ストローク式と2ストローク式、通常構造の燃焼室を持つ単動式と、ピストン下部とクランク室との間のクロスヘッド部に別途燃焼室を持つ複動式がそれぞれ並行して市場に投入され、出力増大を図っていた。この過程で燃料噴射は圧縮空気式から、より小型のエンジン同様の無気噴射式へと進化した。
1930年代初頭以降、舶用大型ディーゼル機関の国際市場を技術的にリードしていたB&W、スルザー、MANの3社は、燃焼頻度を多くでき高出力化に適する、クロスヘッド付の2ストローク複動式へ傾倒するようになるが、この方式は複雑性と熱負荷の面で課題を抱えていた。このため、第二次世界大戦後にはクロスヘッドと2ストローク方式は維持されたが、複雑な複動式燃焼室が衰退し、単動式が主流となった。この時期、大日本帝國海軍においては艦政本部が各種船舶用ディーゼルエンジンの開発を主導し、潜水艦においては当初は水上速力を重視する目的で2ストロークディーゼル機関が多用された。戦前の伊号潜水艦は複動化された2ストロークディーゼル機関で水上20ノットを超える高速力を誇っていたが、第二次世界大戦が始まると急速に4ストローク単動式へと移行し、水上速力も10ノット中盤と急速に低下した。2ストローク複動ディーゼル機関は大出力が可能ではあるが、騒音が大きく、排気圧力が低いため排気管が水中に没している潜水中はシリンダーが浸水する危険性が高く、主機のディーゼルエンジンの駆動が行えなかった。これはすなわちシュノーケルを用いた主機関での水中連続航行に不向きで、水中での移動は事実上、電動機のみに頼らざるを得ないことを意味していた。そのため、大幅な性能低下は覚悟の上で4ストロークへの移行が行われたのである。4ストロークへの移行により出力は低下したが、騒音は抑えられ燃費も大幅に向上、第二次世界大戦末期の伊四百型潜水艦では水上航続距離が37,500海里(約7万キロ、世界一周の約1.5倍)にも達するものとなった[34]。
1940年代後期、液体燃料としては最も廉価だが低質な残渣油を低速ディーゼルエンジンで用いる試みが進められ、在来ディーゼル機関での高品質燃料への混合試用のほか、事前加熱濾過装置による流動性改善、ロングストローク化を徹底したクロスヘッド式単動型構造によるシリンダー壁潤滑の保護で、残渣油のみを燃料とできるエンジンが実用化されるようになった。
蒸気タービンを代替するためのディーゼル機関大出力化過程で、低速ディーゼル機関の特性を生かした排気タービンによる静圧過給が1950年代前半から実用化された。その最初は1952年にB&Wがタンカー「ドルテ・マースク」(10,630 GRT)用に製作した6,500 HP機関である。競合各社も1953–55年までに静圧過給方式導入に進んだ。以後、舶用ディーゼルの大型化・大出力化と高効率化が進行し、舶用機関としての経済優位性は圧倒的なものとなった。ただし1970年頃までは、国際的な石油需要増大に応じて超大型化が進むタンカーの巨大動力に蒸気タービン機関しか用意できなかったため、ディーゼル機関の出力ベースのシェアが一時低下した時期もあった。しかし1973年の石油危機が到来すると、運行コストの低減が至上命令となり、タンカーでも際限なく大型化する機運は失われた。ほぼ全ての商船は30万トン以下で十分とされ、ほとんどディーゼル動力化された。
第二次大戦後の石油精製技術の向上に伴い、原油からは従来より多くの高品質成分を取り出すことができるようになった反面、高度な精製後に残る残渣油の品質は年々低下し、残渣油由来のC重油に含まれる硫黄等の有害不純物の含有量は高くなっていった。この燃料粗悪化進行にも大型舶用ディーゼル機関は時代ごとの技術改良で耐えてきたが、1990年代以降、残渣油由来燃料に起因する硫黄酸化物や、燃焼過程で生成が避けられない窒素酸化物や粒子状物質などが入り混じる、船舶からの排気ガスによる地球環境汚染が取り沙汰されるようになり、新たな課題となっている。
鉄道
自動車
世界中で大型の自動車(トラックおよびバス、特装車・特種車)や建設機械に用いられている。さらに日本においては税制によりディーゼル燃料である軽油がガソリンよりも安価なため[注釈 8]経済性を優先する商用車はディーゼル比率が高い。
乗用車用のディーゼルは国によって人気の差が激しく、欧州では、小型の乗用車でも新車販売台数の約43 %がディーゼル車(2006年)で、一時は50 %を超えた。一方で米国では、乗用車市場におけるディーゼル車のシェアはわずか0.5 %(2005年)しかなく、日本でもマツダを除き人気は無い。
2000年ごろには9–16リットル級の中型エンジンでは直列6気筒とインタークーラー・ターボ過給が採用されて500 PS程度の出力であり、16–30 Lの大型では自然吸気V形8気筒以上の配列が採用されていた。高速定速走行の頻度が高い高速バスや輸送用トラックには中型ターボチャージャーが適し、滑りやすい道(いわゆる低μ路)や走行抵抗の大きい悪路での微・低速走行の機会の多いダンプトラックには、レスポンスに優れ扱いやすい大型のV型8気筒ノンターボエンジンが好まれてきたからである。
しかし、次第に厳しくなる排ガス規制の前に、各社とも2010年までに排気量を11–13リットル程度まで落とし、排気ガスの後処理装置と親和性が高い直列6気筒エンジンに生産を絞り込んだため、排気量の大きなV型自然吸気ディーゼルは姿を消した。自動車用4ストロークエンジンでは過給機による高圧化が進み、すでに筒内最高圧力 (Pmax) の上昇限界のために圧縮比は低下傾向にある。
排気量2–5リットル程度の小型ディーゼルエンジンの多くは乗用車用なので、静粛性や排ガス対策を中大型エンジンよりも強く求められ、コモンレールによる直接噴射式となっている。
欧州に比べ日本では、CO2の削減メリットよりNOxやPMに対する法規制が優先されたため、2000年頃から小型ディーゼルエンジン搭載の乗用車は減少した[5]。しかしポスト新長期規制と呼ばれる厳しい基準群に対応するクリーンディーゼル乗用車が2010年以降に発売され、再び徐々に増加していたが、フォルクスワーゲンの排出ガス規制不正問題発覚以降ディーゼル乗用車は(特に欧州の)規制当局やメーカー、何よりユーザーの三方から見放されつつある。
装軌車両においては、単なる過給機との組み合わせでなく、タービン機関との複合機関(ターボコンパウンド機関)とされる例(ルクレール)がある。
競技の世界では、低速のトルクの豊かさから、ラリーレイドで重宝される。サーキットレースでは1990〜2010年代頃の市販車市場のクリーンディーゼルの流行に合わせて多数投入され、世界選手権や国際レースを制覇することもあったが、現在ではブームは去っている。
オートバイ
インドでは古くからディーゼル二輪車が生産、販売されていた(例:富士重工業(現・SUBARU)製の汎用型小型空冷単気筒ディーゼルエンジンを搭載したエンフィールド=ロビン・D-R400D)。
近年、イギリス陸軍がカワサキ製オフロードバイクにディーゼルエンジンを搭載し運用開始した。これにより陸軍車両燃料の軽油への統一化を完了した。同様の車輛が、HDT M1030-M2 JP8(680 cc)として市販されている。
ATV/UTV
公道を走らない、オートバイから派生したオフロード車のATV(全地形対応車)/やUTV(サイド・バイ・サイド)でもディーゼルエンジンが用いられることがある。
特に業務用(ユーティリティ型)のATV/UTVにおいては、低燃費による原価低減、急加速を必要としない、騒音が問題視されないなどの観点からディーゼルエンジンが搭載されることがしばしある[36]。
航空機
飛行船においては1920年代から1930年代に開発されたLZ129ヒンデンブルクやLZ130は、逆回転可能なディーゼルエンジン(ダイムラー・ベンツ DB 602)により、プロペラを駆動していた。カムシャフト上のギアを変えることにより回転方向を変えることができる。全出力からエンジン停止、逆回転させて全出力までの時間は60秒以下であった。これはまさに船舶用エンジンと同じ機能である。 1929年に完成したR101飛行船には直列8気筒のビアドモア製トルネードエンジンが5基搭載された。鉄道用の4気筒エンジンを2つ組み合わせて高出力、軽量化したものであった。気温の高くなるインド航路での利用が多く見込まれたため、引火点の低いガソリンでの火災事故の懸念からディーゼルが選択された。飛行船は固定翼航空機と異なり、連続運転を要求されず、中速クラスの可逆回転ディーゼル機関を流用できたが、1930年代末期の硬式飛行船そのものの衰退で、それ以上の発展を見なかった。
固定翼機において、最初にディーゼルエンジンが試されたのは1920年代から1930年代にかけてであり、1928年9月18日にパッカード製の星形ディーゼルエンジンを搭載したスチンソンデトロイター(機体番号X7654)が初飛行に成功している[37]。パッカードのエンジンを搭載した機体は発生する黒煙対策として機体色を黒にしていたが、臭いや黒煙が不評だった。
代表的なものとしてはパッカードの空冷星型エンジン(黒煙排出や強度面の欠陥により早期に市場から淘汰された)や、対向ピストン式のユモ205などがある。ソ連では第二次世界大戦中チャロムスキー Ach-30ディーゼルエンジンがイェモラーエフ Yer-2やペトリャコフ Pe-8などの爆撃機に搭載された。 フランスではブロック(Bloch)がMB.203爆撃機にクレルジェ(英語版)製の星型ディーゼルエンジンを搭載した。ロイヤル・エアクラフト・エスタブリッシュメントでは1932年にロールスロイス・コンドル(英語版)エンジンを圧縮着火式エンジンに改造して、ホーカー・ホーズリー爆撃機(英語版)に搭載してテストした。
このように多くのメーカーがエンジン開発を試みたが、ディーゼルエンジンは耐久性と燃費は良好だがスロットルの反応が鈍い、酷い排煙と振動などの理由により、主流とはなり得なかった。
大戦後のユニークな提案としては複雑なターボコンパウンド機関の燃焼にディーゼルを利用するネイピア ノーマッドがあるが、これも実用化には至らなかった。またアリソン 250などディーゼル燃料対応を謳ったターボプロップエンジンも存在するが、出力が落ちるため積極的に使われることはなく緊急用としている。
航空機用ガソリンエンジンの進化が頭打ちになり、さらに2度のオイルショックに加えて環境に悪影響を及ぼす有鉛の航空用ガソリンへの規制が強まったことから、従来の航空機用レシプロエンジンの燃料の価格が高止まりした。そのためヨーロッパでは1980年代以降、ジェット燃料も利用可能かつ低出力ではタービンエンジンよりも燃費に優れる、小型プロペラ機向け低燃費ディーゼルへの関心が復活した。1980年にNASAのグレン研究センターではコンチネンタル・モータースと共同で3気筒と6気筒の星形ディーゼルエンジンを発表するなどしている。大きく、重く、振動が大きいという欠点を改善するため、「エアロディーゼル」と呼ばれる軽量化されたエンジンの開発が試みられている。一例としてイギリスのDair[38] の2ストロークディーゼルが挙げられる。これは重たいシリンダヘッドを使わず2つの対向ピストンで一つの燃焼室を形成する対向ピストン式エンジンの現代版である。しかし、-5 ℃ 以下での始動が保証されない、着火と燃焼が安定しないので高空で使えない、など、この形式の性能や信頼性は決して高くない。ディーゼルの適用は低空で使用する飛行船・軽飛行機・ヘリコプターに限られており、発展性は少ない。
2001年ドイツのThielert(後にTechnify Motors)が、ディーゼルエンジンでは第二次世界大戦後初めてJAA(合同航空当局〈英語版〉)による認証を取得した[39][40]。2002年に認証を取得したCenturion 1.7(TAE 125)エンジンとその後のCenturion2.0エンジンはそれぞれメルセデス・ベンツ・Aクラスに搭載されたOM668、OM640エンジンをベースにしており、ダイヤモンド・エアクラフト・インダストリーズのDA40(英語版)やDA42(英語版)などの小型機に採用された。2010年までに合計3000基以上が生産されている。会社は2008年に倒産した後管財人の元で再建が行われ、2013年に中国航空工業集団公司(AVIC)傘下のコンチネンタル・モータースに買収された。
2010年にはEADSによって制御されるディーゼルハイブリッドヘリコプターのコンセプトが発表された[41]。EcoMotors社の対向ピストンエンジンが採用されている。
2015年からNASAによって電動のVTOL機やドローンをディーゼル・エレクトリック方式とすることで、航続時間を延ばす研究もおこなわれている[42][43]。
2015年11月6日にはエアバス・ヘリコプターズがHIPE-AE440(V型8気筒4.6リットル直噴ターボ)を搭載した試験機H120の飛行に成功した[44]。European Clean Sky initiativeの一環として開発された。これにより、ヘリコプターで主流のターボシャフトエンジンであるチュルボメカ アリウスを搭載した同型機よりも燃料の消費が30 %低減され、航続距離が2倍近くになり、高温高地での運用性が向上するとされる[44]。
現代の航空法ではエンジンについてピストンとタービンに分けているが、ガソリンとディーゼルどちらを使用するかについては言及しておらず、ディーゼルエンジン搭載機もピストンの資格で操縦・整備できる。特に日本では航空用ガソリンが給油できる飛行場が減少し価格が上昇していることから[45]、より安価で給油できる場所が多いJET-A1に対応したディーゼルエンジンに交換する事業者もある[46]。コンチネンタル・モータースでは換装用としてJET-A1対応のエンジンと交換用キットのセット販売も行っている。またセスナでは172にディーゼルエンジンを搭載したモデルを販売している[47]。
杭打機
大型構造物や建築物の基礎杭を打設する杭打ち機の一つとしてディーゼルハンマがあった[48]。自らの振動と自重で鋼管杭やコンクリート杭を打ち込むもの(打撃工法)で、機械の移動が容易で効率も良いメリットがあったが、騒音や排気ガスの問題から日本国内では使用されなくなった。
注釈
- ^ ディーゼルは微粉炭を含むさまざまな燃料の使用を計画したが、粉末燃料の使用には成功しなかった。1900年のパリ万国博覧会ではピーナッツ油での運転を実演した(バイオディーゼルを参照)。
- ^ フライホイールのリングギア上の何箇所かが、いつもスターターモーターのピニオンギアの位置に来る→偏磨耗の原因
- ^ ディーゼルエンジンはスロットルバルブによる回転数(出力)制御ではないものの、アイドル時や低回転域の吸気騒音を抑えるため、コンバインドガバナーのように負圧を必要とする調速機のため、アクセル全閉時に酸素過多となって発生するNOxを抑えるため、等の目的で、吸気管にバタフライバルブを備えているものがある。この場合、一般的に言われる「ディーゼルエンジンの吸気系は負圧にならない」は当てはまらない。
- ^ この方式を初めて実用化したエンジンがマツダのSKYACTIV-Xである。
- ^ ディーゼルサイクルとオットーサイクルの性質を併せ持つことから、メルセデス・ベンツが名付けた造語。
- ^ ただし、シリンダーブロックや燃料タンクに直撃弾を受けた場合、ガソリンエンジンに比べ爆発の危険は少ないが、炎上する可能性はそれほど変わらない
- ^ 農業機械では主に耕運機、トラクター、コンバインや6条植以上の乗用田植機などがある。
- ^ 軽油引取税が揮発油税よりも税率が低く、その結果として燃料そのものの価格は高額である軽油のほうが小売価格ではガソリンよりも1割強ほど安価になる。こうした軽油優遇税制は先進国に限ると日本のみ[35]。
- ^ ただし灯油・重油を燃料油にした自動車で公道を走ると軽油引取税の脱税行為となる。
- ^ BTL燃料は、生産過程と消費過程でのCO2の量が等しいことから、カーボンニュートラルとみなされ、京都議定書の目標達成には非常に有効となる。葉や茎など、植物全体を原材料としたセルロースから作られるBTL燃料は、植物の種子から得られるデンプンを元にした植物油燃料(BDF/バイオ ディーゼル フューエル、SVO/ストレート ヴェジタブル オイル)に比べ、植物の質量あたりのエネルギー量は2倍、同じ耕地面積から得られる収穫量は10倍以上と言われる。雑草などを原料にできるため、食物価格の高騰や、水不足の問題を解決する一助ともなる
- ^
冷凍機の発明で著名であったカール・フォン・リンデは、マレーシアのペナン島での講演に招かれたときに土産として圧気発火器を譲り受け、ドイツへ帰国した[63]。1877年頃、リンデがミュンヘン工業学校での帰朝講演で、この圧気発火器を実演して、葉巻に火をつけた[64][63]。ルドルフ・ディーゼルは、この講演を聴講していた[64]。ディーゼルは「この体験は、高圧内燃機関を発明するのに、もっとも大きな刺激となったもののひとつだった」と回顧している[64]
出典
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- ^ Sir Harry Ricardo
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