ディーゼルエンジン
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歴史
1885年、イギリス人の発明家ハーバート・アクロイド・スチュアートがパラフィンを使ったエンジンの可能性について調査し始めた。これはガソリンと違いキャブレターで蒸発させるのが難しかった[60]。彼の発明した焼玉エンジンは1891年にリチャード・ホーンスビー・アンド・サンズ社にて製造された。これは世界初の加圧式燃料噴射装置を使った内燃機関であった[61]。このホーンスビー・アクロイド式機関は比較的に低圧縮比で、圧縮加熱による燃料の着火には温度は不十分であった。現代的なディーゼルエンジンは直接噴射と圧縮着火を組み込んだものであり、この2つのアイディアはアクロイド・スチュアートとチャールズ・リチャード・ビニー(Charles Richard Binney)によって1890年5月に特許が取得されている[60]。1890年10月8日には、燃料と空気を分けてエンジンに供給する完全なエンジンの基本的な働きを詳しく述べたもうひとつの特許がとられた。アクロイドのエンジンと現代のディーゼルエンジンの違いは冷間始動時にシリンダーに特別に熱を供給する必要があるかどうかである。1892年、ディーゼルエンジンが発明される1年前にアクロイドスチュアートは追加の熱源を必要としない改良版を作り出した[62]。
1892年、アクロイド・スチュアートは圧縮比の向上を可能にするウォータージャケット気化器の特許を取得した。同年にトーマス・ヘンリー・バートンが実験的に気化器をなくし、シリンダーヘッドに置き換えた高圧縮比版を制作した。それ故、高い圧縮比を通して着火し、空気の予備加熱に頼らなくなった。
ルドルフ・ディーゼルはアクロイドエンジンを発展させ、1892年にドイツ、スイス、イギリス、アメリカで特許を取得した[注釈 11]。
1893年にアクロイドはエンジン開発をやめている。
年表
- 1892年: 2月23日、ルドルフ・ディーゼルが "Arbeitsverfahren und Ausführungsart für Verbrennungskraftmaschienen" と題した特許 (RP 67207) を取得。
- 1893年: ディーゼルが「既知の蒸気機関と内燃機関を置換する合理的熱機関の理論と構築」と題する論文を発表。
- 1897年: 8月10日、ディーゼルがアウクスブルクで初の実働するプロトタイプを製作。
- 1898年: ディーゼルがロシアの石油会社 Branobel にディーゼルエンジンのライセンスを供与。同社は蒸留していない石油で動くエンジンに興味を持っていた。同社の技術者らは4年をかけて船用のディーゼルエンジンを設計。
- 1898年: ディーゼルは製造業者クルップとスルザーにディーゼルエンジンのライセンスを供与。両社はまもなく主なディーゼルエンジン製造業者となる。
- 1902年: 1910年までにMANが据え置き型ディーゼルエンジンを82機製造。
- 1903年: ニジニ・ノヴゴロドの造船所で、世界初のディーゼルエンジン搭載石油タンカー "Vandal" が進水。
- 1904年: フランスで世界初のディーゼル潜水艦 Z を建造。
- 1905年: Alfred Büchi がディーゼルエンジン用ターボチャージャーとインタークーラーを考案。
- 1908年: Prosper L'Orange がDeutz社と共に、ニードル型噴射ノズルで精密に制御可能な噴射ポンプを開発。
- 1909年: Prosper L'Orange がベンツ&シー社と共に予燃焼室式の半球型燃焼室を開発。
- 1910年: ノルウェーの探検船フラム号にディーゼルエンジンを搭載。商船ではシェランディアが最初となる。
- 1912年: デンマーク初のディーゼル船シェランディア(Selandia) 建造。世界初のディーゼル機関車製作。
- 1913年: アメリカ海軍の潜水艦がNELSECO社製のディーゼルエンジンを採用。郵便船ドレスデン号でイギリス海峡を渡っているとき、ルドルフ・ディーゼルが謎の死を遂げる。
- 1914年: ドイツのUボートがMAN社製ディーゼルエンジンを搭載。
- 1919年: Prosper L'Orange 予燃焼室式の特許を取得し、ニードル噴射ノズルを製作。カミンズがディーゼルエンジンを生産開始。
- 1921年: Prosper L'Orange が連続可変出力式噴射ポンプを製作。
- 1922年: ベンツがディーゼルエンジンを搭載した初のトラクターを発売。
- 1923年: MAN、ベンツ、ライムラーが初のディーゼルエンジン搭載トラックを製作し、試験を開始。
- 1924年: フランクフルトモーターショーにディーゼルエンジン搭載トラックが出展される。フェアバンクス・モースがディーゼルエンジンを生産開始。
- 1927年: ボッシュがトラック用噴射ポンプと噴射ノズルを生産開始。Stoewerが初のディーゼルエンジン搭載乗用車を試作。
- 1930年代: キャタピラー社が自社製トラクター用にディーゼルエンジンの生産を開始。
- 1932年: MAN社が160馬力という当時世界最高出力のディーゼルトラックを発売。
- 1933年: シトロエンが世界初のディーゼルエンジン搭載乗用車(Rosalie)を製作。イギリスのディーゼルエンジン研究者ハリー・リカルドの設計したエンジンを採用[65]。ディーゼルエンジンの使用が規制されていたため、発売されなかった。一方、日本ではヤンマーが小型汎用高速ディーゼルエンジンの自社開発に成功(「HB型」ディーゼルエンジン)。
- 1934年: マイバッハが世界初の鉄道車両用ターボディーゼルを製造。
- 1934年-35年: ドイツのユンカースが航空機用ディーゼルエンジン「ユモ(Jumo)」シリーズの生産を開始。有名なユモ205は第二次世界大戦の勃発までに900台以上生産されている。
- 1936年: メルセデス・ベンツがディーゼル乗用車260Dを製作。ハノマーグやSaurerも相次いでディーゼル乗用車を生産。アッチソン・トピカ・アンド・サンタフェ鉄道にスーパー・チーフ用のディーゼル機関車が採用される。建造中の飛行船ヒンデンブルクでディーゼルエンジンを採用(ダイムラー・ベンツ製エンジン 602LOF6)。
- 1936年: ソビエト連邦がBT-7戦車にVD-2ディーゼルエンジンを搭載して実験、後に改良型V-2エンジン搭載のBT-7Mとして量産され、1939年末より部隊配備開始。
- 1937年: ソビエト連邦が開発中の戦車A-20及びA-32にV-2ディーゼルエンジンを搭載。1939年にA-32の拡大改良型A-34が、T-34として採用される。
- 1937年: BMWが航空機用ディーゼルエンジン BMW 114 を試作。
- 1940年: 航空機用ディーゼルエンジン・ユモ207Aを搭載したJu 86P高々度爆撃/偵察機が開発され、同年から実戦投入される。
- 1944年: Klöckner Humboldt Deutz AG(KHD)が空冷式ディーゼルエンジンを開発。
- 1953年: メルセデス・ベンツがターボディーゼル搭載トラックをシリーズで発売。
- 1968年: プジョーが204に小型車としては初のディーゼルエンジンを採用。横置きで前輪駆動。
- 1973年: DAFが空冷式ディーゼルエンジンを採用。
- 1976年: 2月、フォルクスワーゲンが乗用車ゴルフ用のディーゼルエンジンの試験を開始。チューリッヒ工科大学でコモンレール式噴射システムを開発。
- 1977年: 初のターボディーゼル搭載乗用車の生産開始(メルセデス・ベンツ・300SD)。
- 1994年: ボッシュがディーゼルエンジン用ユニットインジェクターシステムを開発。
- 1995年: デンソーがコモンレールシステムを世界で初めて実用化し、日野ライジングレンジャーに搭載。
- 1997年: アルファロメオ・156で乗用車初のコモンレールを実現。
- 1998年: BMWがディーゼルエンジン搭載の320dでニュルブルクリンク24時間レースに優勝。
- 2004年: 西ヨーロッパで乗用車のディーゼルエンジン搭載率が50 %を越えた。
- 2008年: スバルが乗用車用の水平対向ディーゼルエンジンを導入。EGRシステムで「ユーロ5」にも適合。
注釈
- ^ ディーゼルは微粉炭を含むさまざまな燃料の使用を計画したが、粉末燃料の使用には成功しなかった。1900年のパリ万国博覧会ではピーナッツ油での運転を実演した(バイオディーゼルを参照)。
- ^ フライホイールのリングギア上の何箇所かが、いつもスターターモーターのピニオンギアの位置に来る→偏磨耗の原因
- ^ ディーゼルエンジンはスロットルバルブによる回転数(出力)制御ではないものの、アイドル時や低回転域の吸気騒音を抑えるため、コンバインドガバナーのように負圧を必要とする調速機のため、アクセル全閉時に酸素過多となって発生するNOxを抑えるため、等の目的で、吸気管にバタフライバルブを備えているものがある。この場合、一般的に言われる「ディーゼルエンジンの吸気系は負圧にならない」は当てはまらない。
- ^ この方式を初めて実用化したエンジンがマツダのSKYACTIV-Xである。
- ^ ディーゼルサイクルとオットーサイクルの性質を併せ持つことから、メルセデス・ベンツが名付けた造語。
- ^ ただし、シリンダーブロックや燃料タンクに直撃弾を受けた場合、ガソリンエンジンに比べ爆発の危険は少ないが、炎上する可能性はそれほど変わらない
- ^ 農業機械では主に耕運機、トラクター、コンバインや6条植以上の乗用田植機などがある。
- ^ 軽油引取税が揮発油税よりも税率が低く、その結果として燃料そのものの価格は高額である軽油のほうが小売価格ではガソリンよりも1割強ほど安価になる。こうした軽油優遇税制は先進国に限ると日本のみ[35]。
- ^ ただし灯油・重油を燃料油にした自動車で公道を走ると軽油引取税の脱税行為となる。
- ^ BTL燃料は、生産過程と消費過程でのCO2の量が等しいことから、カーボンニュートラルとみなされ、京都議定書の目標達成には非常に有効となる。葉や茎など、植物全体を原材料としたセルロースから作られるBTL燃料は、植物の種子から得られるデンプンを元にした植物油燃料(BDF/バイオ ディーゼル フューエル、SVO/ストレート ヴェジタブル オイル)に比べ、植物の質量あたりのエネルギー量は2倍、同じ耕地面積から得られる収穫量は10倍以上と言われる。雑草などを原料にできるため、食物価格の高騰や、水不足の問題を解決する一助ともなる
- ^
冷凍機の発明で著名であったカール・フォン・リンデは、マレーシアのペナン島での講演に招かれたときに土産として圧気発火器を譲り受け、ドイツへ帰国した[63]。1877年頃、リンデがミュンヘン工業学校での帰朝講演で、この圧気発火器を実演して、葉巻に火をつけた[64][63]。ルドルフ・ディーゼルは、この講演を聴講していた[64]。ディーゼルは「この体験は、高圧内燃機関を発明するのに、もっとも大きな刺激となったもののひとつだった」と回顧している[64]
出典
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- ^ 総合効率とGHG排出の分析報告書 平成23年3月 日本自動車研究所 図5-1 標準ケースにおけるWtWエネルギー消費量・CO2排出量(J-MIX;10・15モード)
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ディーゼルエンジンと同じ種類の言葉
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