ディーゼルエンジン
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燃料
ディーゼルエンジンの燃料は、発火点が225 ℃程度であれば多様なものが使用できるが、灯油・軽油・重油が使われる[注釈 9]。ディーゼルエンジンに誤ってガソリンを給油すると、発火点が約300 ℃と高いため点火できずにエンジンは止まる。給油配管と噴射ポンプからガソリンを除くことで復旧できるが、潤滑性のないガソリンによって噴射ポンプを傷める可能性がある。
軽油に水素などを混合した二元燃料の利用も可能である[54]が、エンジンや配管の再設計が必要となる[55]。
一方で引火点については、軽油が約50 ℃であるのに対して、ガソリンのそれは約-40 ℃となるため、ガソリンを危険なものにしている。ガソリンは-40 ℃以上で火に近づけるだけで危険だが、50 ℃以下の軽油に火を近づけても、すぐに燃えるわけではない。それにも関わらず、火がない環境でこれら2つの温度を上げてゆくと、発火点の差から先に自ら火が着くのは軽油である。この軽油の発火点の低さと引火点の高さが、燃料の爆発を自己着火に頼るディーゼルエンジンでの使用を容易にしている。
航空機では、灯油に近い性質を持ち航空用ガソリンより安価なジェット燃料が使える。これは現代の固定翼機ならびに回転翼機で主流のターボジェットエンジン・ターボファンエンジンやターボシャフトエンジンといったガスタービンエンジンと燃料を共用できる点ではガソリンエンジンよりも有利であり、また低出力機ではディーゼルエンジンを含むレシプロエンジンの低燃費のメリットが大きくなる。ノッキング対策として使用される有鉛ガソリンは有毒で取り扱いが難しく、環境負荷も大きいため環境税の値上げなどで規制される傾向にある。そのため現代では地方の飛行場で燃料補給に支障をきたすことも少なくない。以上の理由などにより、無人機も含む軽飛行機や一部の小型ヘリコプターなどのように、タービンエンジンの強みである軽量高出力やディーゼルエンジンの弱点である低温環境や高高度での性能を必要としない機材については、軍民ともに複数の大きな利点がある。
車両においては、機材が大型になるほどガソリンエンジンよりもディーゼルエンジンが有利になりやすいという一般的特徴に加えて、燃料の引火点が高いことから被弾時の火災リスクが低いといった利点があり、とくに軍用では多く使われている。また、上述のように軍用航空機と燃料を共用しやすい点も、とくに補給ルートや設備の限られる戦場では大きな優位点となる。
新たな燃料
合成油
エミッション(排気ガス)低減の足かせとなる鉱物油由来の天然燃料に代わり、次世代のディーゼル燃料として注目されているのが、GTL(Gas To Liquid、ガス・トゥー・リキッド)、BTL(Biomass To Liquid、バイオマス・トゥー・リキッド)、CTL(Coal To Liquid、コール・トゥー・リキッド)等の合成油である。これらの燃料は、単体で、あるいは軽油に混合してディーゼルエンジンに使用することで、排ガスでは低公害化が期待できる。
GTL燃料の原料は天然ガス、CTL燃料は石炭であり、軽油に比べセタン価が高く、SOxの原因となる硫黄分やPMを発生させるベンゼン・キシレンなどの芳香族炭化水素をほとんど含まない。CNGや水素とは異なり常温でも液体のため、現在の燃料販売ルートになじみやすい。ただし、加工時のエネルギー分のCO2排出量がそのまま燃焼させるより増加するために、地球環境には優しくない[56]。また、硫黄が含まれないことから、潤滑作用の点で軽油に劣るため、添加剤で対応する必要がある。
BTL燃料は、植物を原料とし液体燃料として合成したもので、GTL・CTL燃料と同様に硫黄や芳香族炭化水素を含まず、燃焼時に排出されるCO2は植物が生長する際に吸収したCO2量[注釈 10]に等しくなる、などの特徴がある。
これらの合成油は、高セタン価燃料であるため、単体専用ディーゼルエンジンとしてなら圧縮比を13–15:1へと低圧縮比化でき、エネルギー効率を上げ低燃費化できるのも利点である。これらは、生産量が増加すれば価格も下がっていくと見られており、今後のディーゼル燃料の主流として期待されている[57]。
DME
ジメチルエーテル((DM) をディーゼル燃料として使うことも実用化されつつある。メタノールを脱水縮合反応合成してエネルギー密度を上げる方法ではなく、合成ガスからの直接合成による低純度低価格な大量生産が確立しつつある。原料として天然ガス、石炭、植物など合成ガス化できるものなら良く、有酸素燃料でガス由来の合成油より合成エネルギー損失が少ないのが利点である。
DME燃料は軽油と同等のセタン価で、硫黄分や芳香族炭化水素を含まない。機械式燃料噴射では低圧で体積変化するため噴射量制御が難しかったが、コモンレールで高圧安定化されたことにより噴射量制御が正確になり、適した燃料となった。
また、重油とDMEを混合することで、排気ガスの浄化が望まれることも明らかになりつつある。A重油と混合した場合、NOx,COxもボリュームパーセントでは低下する。
BDF
植物油をエステル交換(メタノリシス)してグリセリンを除去し脂肪酸メチルエステル(FAME)とした燃料(Bio Diesel Fuel;BDF)である。
BHD
油脂を水素化分解して作る水素化処理油(Bio Hydrofined Diesel; BHD)である。
注釈
- ^ ディーゼルは微粉炭を含むさまざまな燃料の使用を計画したが、粉末燃料の使用には成功しなかった。1900年のパリ万国博覧会ではピーナッツ油での運転を実演した(バイオディーゼルを参照)。
- ^ フライホイールのリングギア上の何箇所かが、いつもスターターモーターのピニオンギアの位置に来る→偏磨耗の原因
- ^ ディーゼルエンジンはスロットルバルブによる回転数(出力)制御ではないものの、アイドル時や低回転域の吸気騒音を抑えるため、コンバインドガバナーのように負圧を必要とする調速機のため、アクセル全閉時に酸素過多となって発生するNOxを抑えるため、等の目的で、吸気管にバタフライバルブを備えているものがある。この場合、一般的に言われる「ディーゼルエンジンの吸気系は負圧にならない」は当てはまらない。
- ^ この方式を初めて実用化したエンジンがマツダのSKYACTIV-Xである。
- ^ ディーゼルサイクルとオットーサイクルの性質を併せ持つことから、メルセデス・ベンツが名付けた造語。
- ^ ただし、シリンダーブロックや燃料タンクに直撃弾を受けた場合、ガソリンエンジンに比べ爆発の危険は少ないが、炎上する可能性はそれほど変わらない
- ^ 農業機械では主に耕運機、トラクター、コンバインや6条植以上の乗用田植機などがある。
- ^ 軽油引取税が揮発油税よりも税率が低く、その結果として燃料そのものの価格は高額である軽油のほうが小売価格ではガソリンよりも1割強ほど安価になる。こうした軽油優遇税制は先進国に限ると日本のみ[35]。
- ^ ただし灯油・重油を燃料油にした自動車で公道を走ると軽油引取税の脱税行為となる。
- ^ BTL燃料は、生産過程と消費過程でのCO2の量が等しいことから、カーボンニュートラルとみなされ、京都議定書の目標達成には非常に有効となる。葉や茎など、植物全体を原材料としたセルロースから作られるBTL燃料は、植物の種子から得られるデンプンを元にした植物油燃料(BDF/バイオ ディーゼル フューエル、SVO/ストレート ヴェジタブル オイル)に比べ、植物の質量あたりのエネルギー量は2倍、同じ耕地面積から得られる収穫量は10倍以上と言われる。雑草などを原料にできるため、食物価格の高騰や、水不足の問題を解決する一助ともなる
- ^
冷凍機の発明で著名であったカール・フォン・リンデは、マレーシアのペナン島での講演に招かれたときに土産として圧気発火器を譲り受け、ドイツへ帰国した[61]。1877年頃、リンデがミュンヘン工業学校での帰朝講演で、この圧気発火器を実演して、葉巻に火をつけた[62][61]。ルドルフ・ディーゼルは、この講演を聴講していた[62]。ディーゼルは「この体験は、高圧内燃機関を発明するのに、もっとも大きな刺激となったもののひとつだった」と回顧している[62]
出典
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- ^ 総合効率とGHG排出の分析報告書 平成23年3月 日本自動車研究所 図5-3 標準ケースにおけるWtWエネルギー消費量・CO2排出量(J-MIX;JC08モード)
- ^ 総合効率とGHG排出の分析報告書 平成23年3月 日本自動車研究所 図5-1 標準ケースにおけるWtWエネルギー消費量・CO2排出量(J-MIX;10・15モード)
- ^ 総合効率とGHG排出の分析報告書 平成23年3月 日本自動車研究所 図3-14標準ケースにおけるWtTエネルギー消費量・CO2排出量(J-MIX)/表3-20 国内大規模プロセス(その1)
- ^ 労働災害事例 タイヤローラーをトラックに積込み中、突然動きだしたローラーに挟まれる - 厚生労働省 職場のあんぜんサイト
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ディーゼルエンジンと同じ種類の言葉
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