逆さまの世界とは? わかりやすく解説

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逆さまの世界

★1a.金銀嫌われいやしめられる世界

莫切自根金生木きるなのねからかねのなるき唐来参和財産多さ苦し萬々先生は、「3日なりとも貧乏がしたい」と願い、金を減らす工夫をする。しかし、大損ねらって米相場手を出せば大儲けし、博打をすれば勝ち続け富くじ買えば皆当たる。泥棒誘い入れて金銀盗ませると、あまりの大金泥棒手間取るうちに夜が明け余所盗んだ金銀まで置いて逃げる。ついに金銀すべてを海へ捨てるが、世界中金銀連れて萬々先生のもとへ飛び戻る。

孔子縞于時藍染こうしじまときにあいぞめ山東京伝両国麒麟見世物が出る聖代人々金銀忌み嫌って貧者は尊まれ富者卑しめられる。皆、金の捨て場困り「大安売り」ならぬ「大高売り」の店が繁盛し遊廓では女郎手練手管で客に大金押しつける夜には「追剥がれ」が出没し、自ら真っ裸になって、衣服金銀通行人くくりつけて逃げる。ついには天が人々の徳に感じ、空から小判降らせる

ユートピアモアユートピア島では、金や銀はよりも下等なものと考えられている。人々安価な土器ガラス食器飲食し金銀からは、便器や、奴隷をつなぐ鎖が造られる犯罪者の耳には金の環を下げ、指には金の指輪をはめ、首には金の鎖をまき、頭には金の帯をしばりつける

★1b.時間逆転する世界

『逆まわりの世界ディック1986年6月突如時間逆流現象が始まる。死者は墓から蘇生し、しだいに若くなり、ついには赤ん坊になって子宮中に消えるようになる。しかしそれは母親の子宮である必要はなく、赤ん坊は、入るべき子宮を探すのだった。やがては歴史上の人物、たとえばベートーベンもよみがえるだろう。そして彼は一生かかって自分の創り出した名曲消去していくのだ〔*→〔若返り1aの『ギリシア奇談集』(アイリアノス)巻3-18類似〕。

★1c.昼と夜覚醒と夢が逆転する世界

『列子』「周穆王第3 世界果ての古莽の国では、人々食事もせず着物着ず眠ってばかりいて、50日に1度目覚める。そして、夢の中で行なったことが本当で、起きている時に見たものは虚妄だと思っている。

★1d.美醜基準が逆の世界

聊斎志異巻4-132「羅刹海市美男の馬驥は海で嵐に遭い羅刹国漂着する。そこは美醜基準人間世界とは逆で、住民は馬驥の顔を見て恐れ逃げた身分の高い者ほど容貌醜く、馬驥が煤で張飛隈取りをして大臣や王に会うと、皆「美しい顔だ」と感嘆した

★1e.親子関係逆転する世界

『サザエさん』長谷川町子朝日文庫版23185ページ 父親となったカツオ煙草片手に、子供波平フネ呼んで勉強お使いなんか、まあいいからと言って千円札手渡す波平フネは「またお小遣い下さるの、お父様」と感謝する。「僕ならそういう親になる」とつぶやくカツオは、今、フネから豆腐3丁のお使い言いつけられたところだった。

戦争勝敗逆転した仮想世界→〔仮想世界〕2の『高い城の男』ディック)。

★1f.逆さまに見る世界

河童芥川龍之介10 河童の国に滞在する「僕」は、学生ラップ往来真ん中両脚をひろげ、上体倒して股の間から後ろを覗く「股目金(まためがね)」をしているのを見て驚いたラップは「あまり憂鬱ですから、逆さま世の中眺めてみたのです。けれどもやはり同じことですね」と言った

★2.動物人間支配する世界

『ガリヴァー旅行記』スウィフト第4篇 小人国巨人国・飛ぶ島を訪れた後、4度目航海出た「私(ガリヴァー)」は、部下叛乱遭い未知の島に置き去りにされる。そこは、理性美徳そなえた馬族フウイヌムが、知性のない邪悪な家畜人間ヤフー使役する国だった。「私」ヤフー生態衝撃を受け、イギリス帰国後人間との接触を嫌い、2頭の馬を飼って毎日4時間彼らと話をした〔*→〔馬〕10の『御曹子島渡』(御伽草子)では、馬頭人身馬人間が住む島を義経訪れる〕。

猿の惑星(シャフナー) テーラー隊長らが乗った宇宙船未知惑星不時着するが、そこは高度な知能を持つ族が、下等な人間たち支配する社会だった。ジーラ博士は、「人間進化してになった」という学説立てていた〔*実はそこは、未来地球だった。核戦争によって人類壊滅状態になり、生き残った者たちも、退化して原始人同様になってしまったのである〕→〔空間移動〕7。

吾輩は猫である夏目漱石)8 飼い猫である「吾輩」が、昼寝をして虎になった夢を見る。「吾輩」が、主人・苦沙弥先生鶏肉命ずると、主人恐る恐る鶏肉持って来る。「うー」と唸って迷亭を脅し、「牛肉ロース取って来い早くせんと喰い殺すぞ」と言うと、迷亭は駆け出す〔*まもなく夢は覚め後架から走り出主人に「吾輩」は横腹蹴られる〕。

★3.前後さかさまに着せられ衣服

『チャイナ・オレンジの秘密クイーンホテル一室殺された男は、上着・ズボン・ワイシャツなど衣服をすべて後ろ前着せられていた。室内家具調度でも、逆向きだった。被害者は首のカラー後ろ向きにつけるという、カトリック牧師特有の格好をしていたので、犯人それ以外のもの逆向きにして、被害者職業身元わからないように細工したのだった〔*特異なもののまわり同類のもので囲んで目立たなくする、という点で→〔隠蔽5aの『折れた剣』(チェスタトン)と共通する発想〕。

★4.逆立ち死体

犬神家の一族横溝正史犬神佐清(すけきよ)が殺され、その死体が、氷の張った湖の汀に、逆立ち格好突き立てられていた。死体を佐清の名前に見立てれば逆さまだから「よきけす」。上半身水没していたので「けす」を取り去ると、残るのは「よき」。「よき」=「斧(よき)」で、これは、犬神家三種家宝(*→〔三つの宝〕3)の1つである「斧」にまつわる殺人ということ意味していた〔*実際はその死体は、佐清ではなかった〕。

諸国百物語61庄屋が妾と共謀して妻を絞め殺し2度と家に戻らぬようにと、死体逆さまにして、足を空に向けた姿で、川向こう埋めた。妻は逆立ち幽霊となり、逆立ちのままでは川を渡れないので、通りかかりの侍に頼んで舟で渡してもらう。妻は妾の首をねじ切り、侍に礼を述べて消える。侍はこのことを主君報告し主君川向こうを掘らせると、逆さま埋めた妻の死骸があった。庄屋打ち首になった

早桶に、死体上下逆さま入れる→〔〕4bの『東海道中膝栗毛』(十返舎一九)「発端」。

★5.逆立ち刑罰

『神曲』ダンテ)「地獄篇第19歌 地獄の第8圏谷第3濠には、いくつも円い穴があった。穴のどの口からも、逆立ちし罪人たちの足がふくらはぎの所まで突き出ており、それより上部は穴に埋まっている。彼らの左右足の裏には火がついていた。ひときわ赤い炎に舐められ、脚で泣いている男と、「私(ダンテ)」は話をする。彼は法王ニッコロ3世で、聖職売買の罪で罰せられているのだった

★6.逆さま

逆柱さかばしら)(『水木しげる日本妖怪紀行』) 木の上下を間違えて逆さま立てたは、人が寝静まる夜中に、腹を立ててきしむという。逆柱は、火災家鳴りなど凶事原因とされ、大工たちに忌まれた。昔、小田原商家祝いごとがあった時、「俺は首が苦しい」と声がした。調べると座敷逆さになっており、そのため苦しんでいることがわかった

*倒さかさだけ)→〔あり得ぬこと1a親鸞伝説

★7.逆さま屏風

みちのくの人形たち深沢七郎死者枕元には逆さ屏風立てる。だが、「私」訪れた東北地方のある集落では、出産時に逆さ屏風立てていた。この集落では、今でも間引きが行なわれているのだ。生まれたばかりの嬰児産声をあげる前、つまり呼吸しないうちに、産婆産湯タライ中に嬰児入れて呼吸止めてしまう。どの家でも1人2人しか子供育てず、あとは消してしまうのだという。

★8.「水死」とは逆の「水生」。

地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ落語) 鬼の船頭が、大勢亡者たちを船に乗せ三途の川漕いで行く。鬼は、亡者たちが川へ落ちないように注意与える。「うろちょろするな。おい、はまった生きるぞ」〔*この後、4人の亡者熱湯の釜に入れられ針の山送られ、鬼に呑まれて、閻魔失敗昔話)と同様の展開になる〕。

水死した男女が、龍宮の川に身投げしてこの世へもどる→〔影〕2bの『聊斎志異』巻11-420「晩霞」。

*沓を前後逆さまにはく→〔靴(履・沓・鞋)〕6。

主の祈り逆さま唱える→〔扉〕4の『半開きの戸』(イギリス昔話)。

逆さま綴った名前。

アシモフ( Asimov )⇒ ヴォミーサVomisa ) →〔ロボット3cの『ヴォミーサ』(小松左京)。

オルデブ( Oldeb )⇒ ベドロウ( Bedlo ) →〔記憶〕4の『鋸山奇談』(ポオ)。

「すけきよ」⇒「よきけす」 →〔逆さまの世界〕4の『犬神家の一族』(横溝正史)。




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