猿の惑星とは? わかりやすく解説

猿の惑星

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/13 14:41 UTC 版)

猿の惑星
La Planète des singes
著者 ピエール・ブール
訳者 大久保輝臣
発行日 1963年
1968年7月12日
発行元 Livre de Poche
東京創元社
ジャンル サイエンス・フィクション
フランス
言語 フランス語
形態 文庫判
ページ数 243
公式サイト www.tsogen.co.jp
コード ISBN 978-4-488-63201-4
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猿の惑星』(さるのわくせい、La Planète des singes)は、フランス小説家ピエール・ブールによるSF小説。1963年発表。アメリカで制作された同名の映画の原作である。

あらすじ

恒星間航行が当たり前になった時代。どこかの惑星の住人である一組の夫婦が、宇宙空間の遊覧飛行を楽しんでいると、一通の通信文が入った容器を偶然にも拾い上げる。そこには地球の言葉で以下のような奇妙な記録が残されていた[1]

太陽系の調査をほぼ達成した人類は、初めての恒星間飛行に踏み切った。目的地は地球から300光年先のベテルギウス。宇宙船の船内で2年間、実際の時間で300年を経て宇宙飛行士たちが到着したのは、知能の進んだ猿(類人猿)が知的に劣った人類を狩る星であった。ただ1人助かったフランス人の新聞記者ユリッス・メルーは、猿たちから他の人間と同じような知能の低い生き物と思われて檻に入れられ、研究動物として扱われる。しかし、猿と同様の知的能力や抽象的思考力があることを示して誤解を解き、彼らの言語を覚えて仲間入りに成功した。

共同生活を送るうち、ユリッスはこの星の奇妙な事実を知る。資料に残る猿たちの歴史が異常に短く、また、彼らは自分たちの起源を誰も正確に把握していない。史上初めて実施された古代遺跡の調査に同行すると、ボロボロになった人形を見つける。それは人間の少女を模った“猿の言葉を喋る”人形だった。これらの事実からユリッスは、かつてはこの星も人類が支配していたが、何らかの理由で猿に取って代わられてしまったと推理する。一方で猿たちも、猿が賢く人類が愚かという関係性は崩れるかもしれないのかと衝撃を受け、ユリッスを危険視し始める。もはやこの星には居られないと判断したユリッスは、妻となった人間の女性とともに猿の打ち上げる人工衛星に潜り込んで周回軌道上で待機していた宇宙船に戻り、無事に地球へ帰還した。

だが、600年以上も未来の地球に降り立ったユリッスを出迎えた男性は、ゴリラの姿だった。地球でも同様に猿と人間の地位が逆転してしまっていたのだ。ユリッスは家族と平穏に暮らせる新天地を目指し、再び地球を飛び立つ。その最中に、地球の二の舞となる惑星が今後は現れないことを望み、自らの冒険を記した手記を宇宙空間へ託したのだった。

この記録を読み終えた夫婦は、その情感あふれる内容に心を揺さぶられながらも、「人間が高い知能を持っているなんてありえない」と一笑に付す。なぜなら、彼らも猿だったからだ。

反響

それまでに類を見ない設定とストーリー展開、および人間社会への辛辣な風刺を込めた作風は高く評価されている。その結末は、ロッド・サーリングの脚本によるハリウッド映画らしい視覚に訴えるものと異なった内容になっている。

地球の類人猿と同じように、猿の惑星にもゴリラオランウータンチンパンジーが存在し、ゴリラは体が大きく体力もあり行動的で単純、オランウータンは記憶力などに優れて決まりきった仕事には有能であるが創造性に乏しい、チンパンジーは小柄であるが知的で発展的であるなどの性格が描かれ、地球上の人種に対するステレオタイプな見方がパロディのように投影されている。

町山智浩は、ブールが第二次世界大戦の最中に日本軍占領下の中国東南アジアに潜入していた時、仏領インドシナにて有色人種の現地人を使役していたところ、同じ有色人種の日本軍に捕まり、収容所に1年半拘束され、立場の逆転を味わった苦い経験を基に描かれたとしている[2]

それまで西部劇で描かれてきたインディアンを悪者とする白人至上主義的な勧善懲悪に代わり、「白色人種の新たなカタルシスとしてシリーズ化された映画」とも見られている[3]

2019年4月中国科学院ノースカロライナ大学によって人間のに関わる遺伝子を猿に移植したところ、野生のサルの知能を上回ったとする共同研究が発表された際には、「『猿の惑星』を彷彿させる」として国際的に物議を醸した[4][5][6]

日本語訳

日本語訳は、1968年昭和43年)4月の映画版日本公開に合わせ[7]、同年2月早川書房から小倉多加志訳が、同年7月に東京創元新社(現在の東京創元社)から大久保輝臣訳が出版された。

東京創元新社版の訳者である大久保輝臣は、当時の事情を巻末に収録の「訳者あとがき[8]」で、日本語訳翻訳権は東京創元新社が独占所有しているはずなのに、早川書房が出版しえたのは「奇怪であると言うほかない」とし、早川書房版は「英語版からの重訳であることが明らか」で、英語版に起因する誤訳や脱落が散見されることや、大久保自身の都合で出版が早川書房に先んじられてしまったことを記している[注 1]

その後も両社による併売は続けられているが、東京創元社が大久保輝臣訳を重版しているのに対し、早川書房は2000年平成12年)2月に仏文学翻訳家の高橋啓による新訳で再出版している。

翻案

20世紀フォックス社は、『猿の惑星』の直接的な映画化を2度行なっている。1つめは1968年に公開された『猿の惑星』で、フォックスはその後の1970年代に『続・猿の惑星』から『最後の猿の惑星』まで同作の続編を計4本公開した。2つめは2001年に公開された『PLANET OF THE APES/猿の惑星』で、こちらの方がより原作に忠実なものとなっている。さらに2011年、フォックスは新たにリブートとして『猿の惑星: 創世記』を公開した。

映画以外のメディアにおける『猿の惑星』の翻案としては、1974年に放送された20世紀フォックス製作のテレビドラマや、その翌年に放送されたアニメシリーズがあり、さらに、これらに付随してノベライズやコミカライズが多数発表されている。

脚注

注釈

  1. ^ この部分は、初版には掲載されているが、1995年(平成7年)刊の31版で確認すると削除されている。

出典


猿の惑星(1968年)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/05 01:25 UTC 版)

猿の惑星シリーズ」の記事における「猿の惑星(1968年)」の解説

詳細は「猿の惑星 (映画)」を参照 映画化権利取得した後、ジェイコブス3年かけて企画練った。彼は草稿書かせるためにロッド・サーリング雇い脚本完成させた。サーリングは小説要素代えて冷戦要素盛り込み、「猿の惑星の正体核戦争荒廃した未来地球」という結末用意したジェイコブスとモート・エイブラハムス(英語版)はチャールトン・ヘストン説得して主演迎え入れた製作チームヘストンスクリーン・テスト英語版)を行い、この映像は現在も20世紀フォックス保管している。 当初、製作費は1,000ドル超える想定されていたが、20世紀フォックスは580ドルまで減らすことを主張したまた、製作側はブール小説映画化した『戦場にかける橋』脚本担当したマイケル・ウィルソン起用し、サーリングの脚本手直しさせた。ウィルソン特殊効果費用節約するために、文明小説よりも原始的なものに変更したこの他脚本大幅に改変されたが、冷戦要素とサーリングが書いたエンディングシーンはそのまま残された。特殊メイクジョン・チェンバースが手がけている。 物語は、ヘストン演じアメリカ人宇宙飛行士テイラー大佐支配する惑星降り立ち、紆余曲折の末に惑星人類文明崩壊した地球だったことを知るというものであるエンディングテイラー自由の女神像発見して絶望するシーンシリーズ象徴するものとなり、1960年代映画の中で最も有名なシーン一つにもなった。映画公開同時に批評家から高い評価を受け、特殊メイク担当したチェンバース第41回アカデミー賞アカデミー名誉賞受賞した特殊メイクアカデミー賞受賞したのは彼が初めてである)。20世紀フォックス映画の興行成功受けて続編の製作をジェイコブスとエイブラハムスに提案した二人続編想定していなかったが、映画成功見て続編について検討するようになった

※この「猿の惑星(1968年)」の解説は、「猿の惑星シリーズ」の解説の一部です。
「猿の惑星(1968年)」を含む「猿の惑星シリーズ」の記事については、「猿の惑星シリーズ」の概要を参照ください。

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