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三省堂 大辞林

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へんとう ―たふ 3 0 【返答】

(名)スル

問い呼びかけなどに対して答えること。また、その言葉返事
ノックをしても―がない」「はっきり―しろ」



物語要素事典

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返答

★1a.化け物や霊などの呼びかけには返事をしてはいけない。

西遊記百回本第34回  金角・銀角に名前を呼ばれて返事をすると、彼らの持つ瓢箪中に吸い込まれる孫悟空偽名を用いるが、偽名であれ何であれ返事をすれば、吸い込まれてしまう。

捜神記巻18-25(通巻437話)  鼠が王周南に「お前は某月某日に死ぬ」と言うが、彼はとりあわない予告された日に再び鼠は現れ「お前は昼に死ぬ」と繰り返すが、周南はやはりとりあわない真昼になると、鼠は「お前が返事をしないなら、おれはもう何も言わぬ」と言い、ひっくり返って死んだ。

太平広記352所引『北夢瑣言』  江河の辺にはチョウ鬼(=溺死者の霊)が多く往々にして人の名を呼ぶ。これに返答すれば必ず溺れる。死者の霊が誘うのである

杜子春芥川龍之介)  夜、峨眉山岩上一人すわる杜子春に、さまざまな魔性のものが「お前は何物だ。返事をせよ」と迫る。しかし杜子春は、仙人冠子(てっかんし)の言いつけを守り一言も口をきかない杜子春は殺されて、地獄に落とされる閻魔大王に脅されても、鬼たちに拷問されても、彼は沈黙を守る。

船幽霊伝説  船幽霊は海で死んだ者の魂で、仲間を海に引きこもうとして現れる。人語につくといわれるので、船幽霊がでたら静かにしているのがよく、呼びかけられても返事をしてはならない

耳なし芳一のはなし』小泉八雲怪談』)  和尚が、平家亡霊から芳一を守るため、芳一全身経文書きつけて、「呼ばれても返事をするな」と教える。夜、平家武者亡霊呼びに来るが、芳一沈黙を守る。亡霊芳一を捜すが、経文の力で芳一の姿は見えず、耳だけが二つ宙に浮かんでいた→〔耳〕2。

やろか水の伝説  川上から「やろか」と呼びかけられて、男が「よこせ」と返事をすると鉄砲水呑みこまれてしまう。

幽霊と話をしてはいけない→〔無言3a

★1b.化け物に返答してはならない、という俗信利用した詐術

宇治拾遺物語9-8  醜貌若者美男子偽り長者の家の婿になる。婿の仲間が鬼のふりをして、天井の上から「天の下の顔よし」と呼び三度まで呼ばれて婿は返答する。長者から「なぜ返事をしたのか」と問われ、婿は「思わず返事をしてしまった」と答える(*これは、化け物返事をしてはならない、という俗信あったかであろう)。鬼は婿に「お前の顔を吸い取ると言う→〔闇〕3b

★2.返事をして福運授かることもある。

『とり付くひっ付く昔話)  爺が山へを切りに行くと、「とーり付こうか、ひっ付こうか」と声がする。爺は何が何だかわからぬままに、「とーり付け」と返事をする。小判いっぱい落ちて来て、身体中にくっつく(*隣りの爺が真似をすると鳥の糞がつく。広島県庄原市)。

★3a.返答するはずのないが返答する。

か人か』狂言)  夜、一人留守番する太郎冠者の肝を試そうと、主が物陰に立つ。太郎冠者はおびえ、「人であろうか。かも知れぬ。そこなは人かか」と問う。主が「じゃ」と答えると、太郎冠者は「なら物を言わぬはずじゃが」と首をかしげる(「よかった」と安心する、という演出もある)。

盗人落語)  泥棒大きな屋敷忍び込み、「ニャオ」「ワンワン」と、鳴き真似をしてごまかそうとする。しかし怪しまれて、泥棒は庭の池に飛び込み、頭だけを出す。家人が「池にあるのは盗人か」と問うと、泥棒は「くいくい」と答える。

『湊(みなと)昔話)  化け、つないだ舟を遠くへ持って行く悪戯をする。こらしめようと人々が舟に乗り、「どこにもがないなあ」と大声で言って、化けに気づかぬふりをすると、が「くいっ」と言う人々は「ああ、ここにがあった」と笑って縛り、棒で打つ(愛知県幡豆郡)。

★3b.返答するはずのない鴛鴦が返答する。

『百喩経』鴛鴦の鳴き声真似貧しい男の喩」  男がウトパラの(優鉢羅)を盗んで女に与えようとして鴛鴦の鳴き真似をしつつ王の庭園の池に忍び込む番人が「誰だ」と問うので、男はうっかり「私は鴛鴦だ」と返事をしてしまう。捕らえられてから、男はあらため鴛鴦の鳴き真似をするが、もう遅かった。

★3c.返答するはずのない死体が返答する。

千一夜物語「眼を覚ました永眠の男の物語」マルドリュス版第647653夜  アブール・ハサンと妻が死んだふりをして、教王ハルン・アル・ラシードと妃から莫大葬儀費用せしめる教王と妃がハサン夫婦死体見て、「どちらが先に死に、どちらがあとを追ったのか、教えてくれた者に一万ディナール与える」と召使たちに言う。すると死んだはずのハサンが、「まず妻が死に次に私が悲しみ余り死んだのです」と答える。 

★3d.返答するはずのない米が返答する。

笑府巻11-592「米」  女房情夫引き入れているところへ亭主帰宅する。女房情夫布袋に入れ、「米だ」と言ってごまかそうと考える。しかし亭主から「その袋は何だ」と問われると、女房動転して返事できない。すると袋の中の情夫が「米です」と答える。

★4a.鸚鵡返しの返答。

変身物語オヴィディウス)巻3  妖精エコーおしゃべりだったため、女神ユノーヘラ)によって、舌の使用範囲制限された。エコー自分から言葉発することができなくなり、他人が発した言葉終わり部分を、そのまま繰り返し言い返すことだけが許された。

★4b.鸚鵡返し返歌

十訓抄1-26  藤原成範流罪になり、後に赦免されて参内したが、以前のように女房詰所立ち入ることは、できなくなった。一人女房が「雲の上はありし昔にかはらねど見し玉垂れのうちや恋しき」と歌を書いて差し出した時、成範は「や」の文字消し傍らに「ぞ」と書いて返した。ただ一文字返歌をしたのは見事なことであった。

★4c.返歌すべきところを、せずにすます。

続古事談1-25  藤原道長三女・威子が後一条帝の后になった日。宴席道長は、「即興の歌を詠むので、必ず返歌してほしい」と右大将実資に告げ、「この世をば我が世とぞ思ふ望月のかけたることもなしと思へば」と詠じた。実資は「すばらしい歌で、とても返歌などできません。この歌を皆で唱和すべきです」と言い人々繰り返しこの世をば・・・・」の歌を詠じた。道長は満足して、返歌請求をしなかった。

★5.無心の返答。

大岡政談直助権兵衛一件」  殺人犯直助は「権兵衛」と変名し、白州呼び出されても、「直助など知らぬ。自分権兵衛だ」と主張する。やがて放免されて白州を出る直助の後ろ姿に、大岡越前守が「直助」と呼びかける。直助は思わず「へい」と答え振り向いてしまう。

世説新語文学」第4  著名な学者服虔自分の名前を隠し崔烈の『春秋伝』講義を聴いていた。崔烈は「あの男はひょっとしたら名高い服虔ではないか?」と思い、朝、まだ目覚めていない服虔に、「子慎(=服虔のあざな)」と呼びかけた。服虔は驚いて、思わず返事をしてしまった。こうして二人親友になった。





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