『変身物語』
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『変身物語』( Metamorphoses、メタモルポーセース)全十五巻はオウィディウスの最も野心的な作品でありかつ、最も人気のある作品である。内容面ではギリシア・ローマ神話において変身が行われる伝説を集めたカタログであると言うことができ、形式面では一貫して「英雄的六歩韻脚(ダクテュロス・ヘクサメトロス、叙事詩に多い)」用いられていることが指摘できる。ただし、歴史神話的構造は比較的緩い。全体で12,000行近くに及び、その中で250種の神話伝説が語られる。各神話の舞台は、死すべき運命の者たちが外的な影響に対して脆弱である屋外に設定される。本作品は、ヘーシオドスの『名婦列伝(エーホイアイ)』やカッリマコスの『起源(アエティア)』、コロポンのニカンドロスの『ヘテロエウメナ』、パルテニオスの『変身物語(メタモルポーセース)』といった、複数の起源神話を次々と歌っていく詩作の伝統に連なるものである。 第一巻は天地開闢、人間の時代、大洪水、アポローによるダプネーの略奪、ユーピテルによるイーオーの略奪の神話を収める。第二巻はパエトーンの物語を詠ったのち、ユーピテルに愛されたカリストーとエウローペーの物語を詠う。第三巻はテーバイの神話に焦点が当てられ、カドモス、アクタイオーン、ペンテウースの変身物語を収める。第四巻はピュラモスとティスベ、サルマキスとヘルマプロディートス、ペルセウスとアンドロメダーという、3組の恋人たちの神話を収める。第五巻はムーサの歌に焦点を当て、プロセルピナの略奪について詠う。第六巻は、死が運命付けられた儚い命を持つ者たち(人間やニンフ)が、神々に追い駆けられて変身する物語を集める。アラクネーの物語から始まり、ピロメーラーの物語で終わる。第七巻はメーデーアやケパロス、プロクリスの変身譚を収める。第八巻はダイダロスの飛行、カリュドーンの猪狩り、敬虔なバウキスとピレーモーンと邪悪なエリュシクトーンの対比を収める。第九巻はヘーラクレースの物語と、実の兄に恋をしてしまったビュブリスの物語が中心である。第十巻はヒュアキントスを想って歌を唄うオルペウスのような、報われぬことが運命付けられた恋の物語が中心である。その他にピュグマリオーン、ミュラー、アドーニスの物語を収める。第十一巻はペーレウスとテティスの結婚と、ケーユクスとアルキュオネーの愛とが対比される。第十二巻は神話の世界から歴史叙事に題材を取り、アキレウスの偉業、半人半馬族とラピテース族との戦い、イーピゲネイアの生贄の物語を叙述する。第十三巻はアキレウスの武具を巡る戦いのほか、ポリュペーモスについて議論する。大十四巻ではイタリアに舞台を移し、アイネイアースの旅について記述する。そしてポーモーナ、ウェルトゥムヌス、ロームルスの物語を語る。最終第十五巻はピュタゴラスによる哲学的講義に始まり、ガイウス・ユリウス・カエサルの神格化が語られる。そして、アウグストゥス帝へ賛美の詩句が捧げられ、本詩作により自分の名前は不滅のものになったであろうというオウィディウスの確信が表明されて、全巻の終幕となる。 過去の学者たちは『変身物語』を分析する際、オウィディウスが膨大な素材をまとめている点に注目した。地理、主題、対比により物語どうしを関連づけるという手法により、興味深い効果がもたらされ、常に読者につながりを評価させる力学が生じる。また、オウィディウスは歌ごとに語り口と素材をさまざまなかたちに多様化させた。古典学者のジアン・ビアッジョ・コンテは『変身物語』を「これら多様な文学ジャンルのギャラリーのようなもの」と評した。オウィディウスは語り口と素材の多様化という目的を心に抱いて、過去の定評ある詩作をあらゆる角度から研究し、先行する変身譚を扱う作品より優れた作品を生み出そうとした。オウィディウスは、本詩作でアレクサンドリア派の叙事詩の形式、すなわち悲劇的対句を用いた。これは伝統的な叙事詩の形式に、登場人物の心の動きを重視する様式を彼なりに融合させた結果である。
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