てんりゅう‐がわ〔‐がは〕【天竜川】
天竜川
天竜川は、長野県の諏訪湖にその源を発し、南アルプスと中央アルプスから流れる支川を集めながら伊那谷を流れ、飯田市の天竜峡より山間部に入り、佐久間ダムなど発電ダム、天竜市鹿島地先を過ぎると浜松の広い平野を経て遠州灘に注いでいる流域面積5,090km2、幹川流路延長213kmの河川です。 |
伊那谷を流れる天竜川と遠州灘に注ぐ天竜川 |
河川概要 |
| ○拡大図 |
1.天竜川の歴史 |
"天竜川は全国有数の急流河川で、暴れ天竜と呼ばれるほど沿川では洪水の被害を受けてきました。明治時代になり地元の地主、金原明善は多額の資金を寄付するとともに天竜川の治水事業を開始し、やがて国の直轄改修事業に受け継がれました。" |
2.地域の中の天竜川 |
"天竜川の上流域では、観光船やウィンドサーフィン、花火大会、ワカサギ釣りなどと諏訪湖の湖面等の利用を、中流域では、人気の観光川下りの他、カヌー、ラフティングなど、急流ならではの水面レジャーを、下流域では広い河川敷を利用して大凧を揚げる飛竜祭りやグライダーの滑空などが、それぞれ楽しまれています。" |
天竜川の特徴は、諏訪湖に代表される上流域、峡谷・ダム湖に代表される中流域そして遠州平野から河口までの下流域において、それぞれ大きく異なります。 上流域では、観光船やウィンドサーフィン、花火大会、ワカサギ釣りなどと諏訪湖の湖面等を利用した多種多彩な楽しみ方が満喫でき、多くの温泉宿泊施設も整えられています。
下流域の遠州平野に入ると、高水敷が広く公園などに開放されており、野球やサッカーなど各種スポーツ施設や公園が整備され、沿川住民のスポーツ、レクリエーション、憩いの場として利用されているほか、浜北市の飛竜祭りでは、河川敷が大凧をあげる会場として利用されており、大勢の観客が訪れています。また、浜北市の高水敷にはグライダーの滑空場があり、天竜川を背景に、ゆったりと大空を飛ぶグライダーを見る事ができ、河口付近では、水上バイクなどの水面でのレジャーが盛んです。
天竜川と密接なかかわりをもつこの地方の独特の食文化としては、水生昆虫食「ざざむし」(ヒゲナガカワトビケラを主体とする水生昆虫の冬世代の佃煮)が異彩を放っています。
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3.天竜川の自然環境 |
"天竜川の流域の自然環境は、水際から河岸段丘、森林までと多様性が保たれた自然豊かな流域です。環境の特徴としては、河川の土砂移動が多く環境のかく乱が激しいことが挙げられますが、近年は砂礫主体の河原が減少し、河道内の州に樹木が繁茂することにより州が固定化する状況も見られます。" |
天竜川の流域には、中央・南アルプスの3,000m級の山々から湖、峡谷、平野、海岸までの多様な環境が存在しています。 地質は複雑で、フォッサマグナの西縁をなす糸魚川-静岡構造線、中央構造線を始め数々の構造線、断層が走っています。糸魚川-静岡構造線の北東側の諏訪地方では、グリーンタフ地帯、中央構造線より西は領家帯、それより東は秩父帯等種々の地質構造が見られます。特に多くの構造線が集まる伊那谷は、古生代から新生代にかけての各時代の堆積層や様々な火成岩、変成岩が分布し、加えて急峻な地形である事から崩壊し易く、大雨が降ると山腹崩壊や土石流など幾多の災害に見舞われてきました。 流域の自然環境は、水際から河岸段丘、森林まで多様性が保たれ、「河川水辺の国勢調査」における動植物の確認種数は、各分類のすべてが全国平均以上であり、多くの国立公園、国定公園、県立公園が存在する自然豊かな流域です。 上流部には、カワラノギク、ツメレンゲ、カワラニガナ、ミクリなど貴重な植物群が確認され、河川の自然環境の豊かさを象徴しているといえます。また、ニホンジカなどは天竜川の東側を分布としており、川が動物の生息界となっているなどの特徴もあります。しかし、近年、植物ではハリエンジュ、アレチウリ、オオキンケイギク、シナダレスズメガヤなど、魚類ではバスなどの外来種が増加し、在来種の衰退の危険性も心配されています。 中流部の急峻な露岩にはツメレンゲ、ヤシャゼンマイなどの貴重種が確認されており、河川沿いの山地は「天竜美林」と称されるスギ、ヒノキの植林に覆われています。
下流部では、上流部から運ばれる土砂により、洪水のたびに環境の変化が大きいとことが特徴です。近年では砂礫主体の河原が減少し、河道内の州に樹木が繁茂したことから静水域が見られるようになってきました。そのため、砂礫地を営巣地とするコアジサシ、砂礫地に生育する植物を好むツマグロキチョウ、ミヤマシジミが見られる一方、静水域や湿地ではミクリやタコノアシ、ヤナギ樹林ではコムラサキなどの生息が確認されるようになりました。
水質面では、夏には諏訪湖で発生したアオコが天竜川を流下し、伊那市付近まで川の水を緑色に染めていたこともありましたが、近年では湖の水質とともに改善されてきています。 |
4.天竜川の主な災害 |
"行政と流域住民とが協働した帰化植物対策を行っています。河川環境に高い関心を持っている住民が、アレチウリの駆除対策に乗り出しています。" |
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5.その他 |
地域との連携 特に天竜川の上流部で増え続ける帰化植物に対し、河原固有植物が生息できる場を再生するための対策を検討しています。検討にあたっては、流域の方々と行政の河川担当者双方が河川環境について共通認識を持つことが重要だと考えています。 検討あたっては、天竜川沿川にお住まいの方々の意見を伺うため、帰化植物対策を中心としたアンケートを実施しました。アンケートは天竜川沿川の約4,000世帯に配布し、多くのマスメディアに取り上げられたこともあって、アンケートの回収率は6割にも上りました。河川環境に関する流域の方々の関心の高さが伺えるとともに、地域の意見を広く集約することができました。 また、天竜川の上流部では、帰化植物アレチウリ(つる性の草)の繁殖が凄まじく、市民団体が駆除を呼びかけています。こうした動きと呼応し、今回のアンケートの結果を踏まえ、今後は天竜川における帰化植物の繁殖状況、帰化植物対策の必要性を広く流域の方々に知って貰うためにマスコミへの情報提供を行うとともに、パンフレットを作成し流域の方々に広く配布しています。
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(注:この情報は2008年2月現在のものです)
天竜川
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/24 02:08 UTC 版)
天竜川(てんりゅうがわ、天龍川)は、長野県から愛知県、静岡県を経て太平洋へ注ぐ天竜川水系の本流で、一級河川のひとつ。幹川流路延長は213km[1](日本全国9位)、流域面積は5,090km2[1](日本全国12位)。
- ^ a b c d e f g h 中部地方整備局、天竜川水系河川整備計画(平成21年7月)、1-1(第1章第1節第1項 流域及び河川の概要)2022年9月29日閲覧。
- ^ 『続日本紀』巻第6、霊亀元年5月乙已(25日)条。新日本古典文学大系『続日本紀』1、228 -229頁。
- ^ 『続日本紀』巻第23、天平宝字5年7月辛丑(19日)条。新日本古典文学大系『続日本紀』3、382 - 383頁。
- ^ a b “天竜川について | 天竜川流域を考える | 天竜川上流河川事務所”. www.cbr.mlit.go.jp. 2019年9月6日閲覧。
- ^ 日外アソシエーツ編、『河川大事典』(1991年)、658ページ「天竜川」。
- ^ 小学館、『日本大百科全書』(コトバンク版)、北川光雄「天竜川」
- ^ 平凡社、『百科事典マイペディア』(コトバンク版)、「天竜川」
- ^ ブリタニカ・ジャパン、『ブリタニカ国際大百科事典』(コトバンク版)、「天竜川」
- ^ 『日本の川 自然と民俗』I、203頁。
- ^ a b 『日本の川 自然と民俗』I、202頁。
- ^ 『日本の川 自然と民俗』I、204頁。
- ^ 流路の長さは『日本の川 自然と民俗』I、206頁。直線距離は地図上で計測。
- ^ a b 『日本の川 自然と民俗』I、206頁。
- ^ 斎藤栄吉「いかだ」『新版 林業百科事典』第2版第5刷 p25
- ^ 『日本の川 自然と民俗』I、207頁。
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