破堤(決壊)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 15:27 UTC 版)
堤防が崩壊することで川の水が堤防から流れ出すことを破堤(決壊)という。 越水破堤 洪水により水位が堤防を越えて水があふれ、堤脚部(堤防の下部)が削り取られることで土塊が崩落して決壊するもの。堤防の破堤(決壊)の原因の多くは越水破堤である。 越水だけであれば堤防の高さを増せば単純に防げるが、費用対効果や堤体の総合的な耐力を考慮すれば現実的な高さには上限が生じる。ここでいう越水対策とは天端や川裏側の浸食に対する備えであり、越流水で生じる浸食作用から堤体を護ることである。越水対策では、越水された場合であっても容易には流水で堤体を侵食されないように、天端の川裏側角や川裏の法尻部分にはそれぞれ法肩保護工と法尻工が行われ、天端や法面という平面部は遮水シートや保護マットを覆うといった対策が行われる。 なお、越水では破堤の有無に関わらず漏れ出た水によって「超越洪水」が起きる場合がある。 洗堀破堤河川の流水が直接堤防を削り取り決壊するもの 表法面をコンクリート製などの護岸工事を行ったり、水制(すいせい)を設けるといった対策が行われる。適切に管理された斜面の芝もある程度有効である。 浸透破堤河川の水位が上昇するとともに堤防内の水位も上昇して浸透し、土の粒子間の接触が弱まることで内部から堤防が削り取られ決壊するもの。堤内側地盤との水頭(水圧)差により生じる堤防内の間隙水圧が大きくなった場合に、川表側からの河川の浸透水による水みちが形成されることで、裏法側や堤内基盤に漏水を生じさせる。 鋼矢板製の止水壁を川表側の土中に打込んだり、透水性の低いブランケットと呼ばれる土で川底を覆う工法や、遮水シートやブランケットで表法面を覆う工法を採る。また、川裏側にドレーン工と提脚水路を設けて堤体内に浸透した水をできるだけ早期に排水できるようにするといった対策が行われる。大量の雨水が堤体内に浸透するのも避ける。 パイピング破堤(パイピング現象)河川の水位の内外差により河川側から浸透流が発生し基礎地盤の土砂が流出して陥没するもの。パイピング破堤は堤防から水があふれていなくても生じることがあり予測が難しいといわれている。堤防付近の地盤から水が噴き出すといった前兆現象がみられることもある。 なお、浸透防止策、浸食防止策、越水対策などの対策を施された堤防は「難破堤堤防」と呼ばれる。
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