銃砲刀剣類所持等取締法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/16 02:50 UTC 版)
概要
銃砲・刀剣類の所持を原則として禁止し、これらを使った凶悪犯罪を未然に防止することを目的とする。この法律により、日本国内においては、許可を受けた者以外は銃砲・刀剣類を所持することができない。
また、許可を得た者であっても、銃砲・刀剣類の取り扱いについては規制があり、違反した場合は処罰の対象となる可能性がある。これは警察官や自衛官も例外ではない。
沿革
銃砲・刀剣類の所持規制は明治時代から行われ、「銃砲火薬類取締法」(明治43年法律第53号)において、銃砲類の市販製造は政府への登録制とし許可無く所持することが禁止されていた。また、刀剣類についても廃刀令(明治9年太政官布告第38号)により、勤務中の軍人・警察官以外の帯刀は禁止されていた。
銃砲刀剣類所持等取締法は、大東亜戦争(太平洋戦争・第二次世界大戦)終結後、旧帝國陸海軍の解体と武装解除を徹底するため、1946年に連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ) の指令によりポツダム勅令として制定された銃砲等所持禁止令(昭和21年勅令第300号)により銃砲等の所持を禁じたことを直接の嚆矢とする。GHQは大規模な刀剣の没収を行い、これらは「赤羽刀」とも通称される。
当初はこのように軍事上の目的であったが、戦後急増した暴力団とその構成員による銃器犯罪や銃器を用いた対立抗争事件の頻発により、この法律は治安の回復と犯罪抑止に大きな役割を果たすこととなった。その取締対象は、銃器本体の所持から輸入、譲渡し・譲受け、拳銃部品や実包の輸入・所持・受渡し、銃砲の発射へと順次拡大して、銃器犯罪に対処している。
1958年の制定時の題名は「等」の位置が異なる「銃砲刀剣類等所持取締法」であったが、1965年の改正法施行により現在の題名となった。これは、改正により所持に加えて拳銃の輸入を取締対象に追加したためである。
内容
- 第1章 総則(第1条 - 第3条の13)
- 定義
- 「銃砲」とは、拳銃、小銃、機関銃、砲、猟銃その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃(圧縮した気体を使用して弾丸を発射する機能を有する銃のうち、内閣府令で定めるところにより測定した弾丸の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上となるもの)をいう。
- 「刀剣類」とは、刃渡り15センチメートル以上の刀、やり及びなぎなた、刃渡り5.5センチメートル以上の剣、あいくち並びに45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛び出しナイフ(刃渡り5.5センチメートル以下の飛出しナイフで、開刃した刃体をさやと直線に固定させる装置を有せず、刃先が直線であって峰の先端部が丸みを帯び、かつ、峰の上における切先から直線で1センチメートルの点と切先とを結ぶ線が刃先の線に対して60度以上の角度で交わるものを除く)をいう。
- 所持の禁止
- 定義
- 第2章 銃砲等又は刀剣類の所持の許可(第4条 - 第13条の4)
- 許可
- 許可の基準
- 都道府県公安委員会は、次の者に銃砲等又は刀剣類の所持を許可してはならない。
- 18歳未満の者(一部の銃砲については14歳未満の者)
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 精神障害若しくは発作による意識障害をもたらしその他銃砲若しくは刀剣類の適正な取扱いに支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものにかかっている者又は介護保険法に規定する認知症である者
- アルコール、麻薬、大麻、アヘン又は覚醒剤の中毒者
- 自己の行為の是非を判別し、又はその判別に従って行動する能力がなく、又は著しく低い者(責任能力がない者)
- 住居の定まらない者
- 許可を取り消された日や、この法律によって処罰された日から起算して5年を経過していない者など
- ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)に規定するストーカー行為をし、同法の規定による警告又は命令若しくはその延長の処分を受けた日から起算して3年を経過していない者
- 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)の規定による命令を受けた日から起算して3年を経過していない者
- 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
- 他人の生命若しくは財産若しくは公共の安全を害し、又は自殺をするおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
- 射撃練習場、射撃指導員、射撃練習に関する規定
- 第3章 古式銃砲及び刀剣類の登録並びに刀剣類の製作の承認(第14条 - 第21条)
- 第4章 雑則 (第21条の2 - 第30条の3)
- 第5章 罰則(第31条 - 第37条)
- 附則
注釈
- ^ 拳銃部品とは、拳銃の銃身、機関部体、回転弾倉又はスライドをさす。
- ^ 2005年(平成17年)10月13日、東京都内のUFJ銀行のATMコーナー付近で不審者がいるという通報があり警視庁の警察官が現場に行き男性に職務質問をしたところ、カッターナイフを所持していたということで銃刀法違反で逮捕した事例がある(平成17年10月25日 第163回国会 参議院財政金融委員会会議録第3号〈政府参考人 和田康敬〉発言者番号274)。
- ^ オウム真理教関連事件の捜査において、刃渡り5センチメートルのカッターナイフが車内にあったとして軽犯罪法違反(報道によれば銃刀法違反)で逮捕した事例がある(平成7年6月8日 第132回国会 参議院法務委員会会議録第10号〈委員 三石久江〉発言者番号165)。
出典
- ^ “都内の銃刀法違反、8割はキャンプ・釣り後の「置き忘れ」…警視庁「刃物は自宅に保管を」”. 読売新聞オンライン (2022年8月17日). 2022年8月17日閲覧。
固有名詞の分類
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