破産 破産債権

破産

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/17 09:45 UTC 版)

破産債権

破産者に対し破産手続開始決定前の原因に基づいて生じた財産上の請求権を、破産債権という(同法2条5項)。

破産財団の管理及び換価

配当

破産手続廃止

破産手続終結の決定

  1. 裁判所は、最後配当簡易配当又は同意配当が終了した後、第88条第4項の債権者集会が終結したとき、又は第89条第2項に規定する期間が経過したときは、破産手続終結の決定をしなければならない(破産法第220条第1項)。
  2. 裁判所は、前項の規定により破産手続終結の決定をしたときは、直ちに、その主文及び理由の要旨を公告し、かつ、これを破産者に通知しなければならない(破産法第220条第2項)。

破産手続廃止後又は破産手続終結後の破産債権者表の記載の効力

破産手続廃止の決定が確定したとき、又は破産手続終結の決定があったときは、確定した破産債権については、破産債権者表の記載は、破産者に対し、確定判決と同一の効力を有する。この場合において、破産債権者は、確定した破産債権について、当該破産者に対し、破産債権者表の記載により強制執行をすることができる(破産法第221条第1項)。

この規定は、破産者(代理人を含む。)が異議を述べた場合には、適用しない。

相続財産の破産等

相続人の破産

破産法第238条から第244条

外国倒産処理手続がある場合の特則

破産法第245条から第247条

免責及び復権

免責許可の申立て

個人である債務者(破産手続開始の決定後は、破産者)は、破産手続開始の申立てがあった日から破産手続開始の決定が確定した日以後1月を経過する日までの間に、破産裁判所に対し、免責許可の申立てをすることができる(破産法248条1項)。例外的に、債務者の責めに帰することができない事由によって申立期間内に申立てをすることができなかった場合は、その事由の消滅後1月以内に限り、申立てが認められる(同条2項)。

破産手続開始の申立てをすれば、債務者が特に反対の意思を表示している場合を除き、同時に免責許可の申立てをしたものとみなされる(同条4項)。

債務者が免責許可の申立てをしたときは、破産債権者の同意による破産手続廃止の申立てや、再生手続開始の申立てをすることができない(同条6項)。逆に、これらの申立てをしたときは、その決定が確定した後でなければ免責許可の申立てをすることができない(同条7項)。免責手続は清算を前提とするものであり、他方、これらの手続は清算を回避するための制度であることから、同時に進めるべきではないという趣旨の制限である[15]

なお、一部免責許可の申立てが可能かという点については、これを肯定する見解と否定する見解があり、学説、裁判例とも分かれている[16]

免責の審理

免責許可の申立てがなされると、裁判所は、破産管財人に、免責不許可事由の有無や裁量許可の決定をするかどうかの判断に当たって考慮すべき事情についての調査をさせ、その結果を書面で報告させることができ(破産法250条1項)、破産者は、裁判所や破産管財人が行う調査に協力しなければならない(同条2項)。裁判所が行う調査には、審尋も含まれる。

また、裁判所は、破産手続開始の決定があった時以後、免責許可の決定をすることの当否について、破産管財人及び破産債権者(非免責債権者を除く)が裁判所に対し意見を述べることができる期間を定めなければならない(同法251条1項)。この意見申述は、期日においてする場合を除き、書面でしなければならない(破産法施行規則76条1項)。また、申述は、免責不許可事由に該当する具体的な事実を明らかにしてしなければならない(同条2項)。

破産手続と免責手続は制度上分離されているため、免責審理期間中に破産手続が終了することもある。この場合も、免責許可の申立てについての裁判が確定するまでは、破産者の財産に対する破産債権に基づく強制執行等は禁じられる(破産法249条)。

免責不許可事由と裁量免責

免責許可の申立てが不適法で却下される場合を除き、裁判所は、破産者について、破産法252条1項各号に掲げられた事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする(同項柱書)。これらの事由を「免責不許可事由」という。

1.不当な破産財団価値減少行為(1号)
「債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。」をいう。
2.不当な債務負担行為(2号)
「破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。」をいう。
経済的に苦しくなった債務者が、クレジットカードで買い物をし、購入した商品を換金して当面の資金を得るような行為がこれに該当する[17]
3.不当な偏頗行為(3号)
「特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。」をいう。
4.浪費または賭博その他の射幸行為(4号)
「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。」をいう。
5.詐術による信用取引(5号)
「破産手続開始の申立てがあった日の1年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。」をいう。
ここにいう信用取引による財産取得には、金銭消費貸借契約の締結(借金)も含まれる。支払不能について黙秘して借入をすることがここにいう詐術にあたるかについては、決定例が分かれている(大阪高決昭和59年9月20日判例タイムズ541号156頁は否定、仙台高決平成4年10月21日同誌806号218頁は肯定)。
6.帳簿隠匿等の行為
「業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。」をいう。
無知無能による商業帳簿不備は、これに該当しないとされる(大阪高決昭和55年11月19日判時1010号119頁)。
7.虚偽の債権者名簿提出行為
8.調査協力義務違反行為
9.管財業務妨害行為
10.7年以内の免責取得など
以前に免責許可の決定が確定している場合に、その確定日から7年以内に再び免責許可の申立てがあった場合などがこれにあたる。
11.破産法上の義務違反行為

裁判所は、これらの免責不許可事由がある場合でも、「一切の事情を考慮して」免責の決定をなすことができ、これを裁量免責という。例えば、破産者に浪費(破産法252条1項4号。懈怠破産行為にあたる。)や詐術(同項5号)がある場合でも、比較的軽微なものにとどまるときは、訓戒を受けたことや反省文を提出したことなどを考慮して、免責の決定がなされることもある。

免責の効果

免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権(非免責債権を除く)について、その責任を免れる(破産法253条)。非免責債権とされるのは、次のような債権である。

  1. 租税等の請求権
  2. 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
  3. 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
  4. 夫婦間の協力及び扶助の義務、婚姻から生ずる費用の分担の義務、子の監護に関する義務、扶養の義務などにかかる請求権
  5. 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
  6. 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
  7. 罰金等の請求権

「責任を免れる」の意味については、見解が分かれる。ひとつは、債務そのものは消滅せず、ただ責任のみが消滅する(したがって、債務は自然債務となる)とする説(自然債務説)であり、もうひとつは、債務そのものが消滅するとする説(債務消滅説)である。

判例は、自然人たる債務者については自然債務説、法人たる債務者については債務消滅説を取っている。破産決定のあった主債務に係る保証人債務や担保権の消滅時効援用については議論がある。[18]

免責の効力は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び破産者以外の者が破産債権者のために供した担保には及ばない(破産法253条2項)。

免責取消し

免責許可決定が確定した場合も、詐欺破産罪について破産者に対する有罪判決が確定したときや、破産者の不正の方法によって免責許可決定がされた場合、裁判所は、破産債権者の申立て(後者の理由の場合、免責許可決定から1年以内)又は職権により免責取消しの決定をすることができる(破産法254条1項)。免責取消しの決定が確定したときは、免責許可決定は、その効力を失う(同条5項)。

復権

破産法は非懲戒主義をとっているため、破産法自体には、破産者の資格や権利に対する制限規定は置かれていない。しかし、以下の資格などについては、特別法により、「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」について以下の通り制限がなされる。

  • 「○○となる資格を有しない」とされるもの
弁護士[注 1]司法書士[注 2]行政書士[注 3]弁理士[注 4]社会保険労務士[注 5]税理士[注 6]土地家屋調査士[注 7]
  • 営業に関する登録・許可等が拒否されるもの
貸金業[注 8]建設業[注 9]、特定保険募集人(生命保険募集人等)[注 10]風俗営業[注 11]古物商[注 12]質屋[注 13]、第一種動物取扱業[注 14]測量業[注 15]不動産鑑定士[注 16]不動産鑑定業者[注 17]宅地建物取引業[注 18]宅地建物取引士[注 19]、廃棄物処理業[注 20]鉄道事業[注 21]旅行業[注 22]
  • 「営んではならない」とされるもの
警備業[注 23]民泊(住宅宿泊事業)[注 24]探偵業[注 25]

復権とは、破産手続開始決定に伴う破産者の権利や資格に対する法律上の制限が包括的に解除されることをいう。復権には、一定の要件を満たせば申立て等を要しない「当然復権」と、「申立てによる復権」の2種類がある。当然復権の要件は、次のとおりである(破産法255条1項)。

  1. 免責許可の決定が確定したとき
  2. 破産債権者の同意による破産手続廃止の決定が確定したとき
  3. 再生計画認可の決定が確定したとき
  4. 破産手続開始決定後、詐欺破産罪について有罪の確定判決を受けることなく10年を経過したとき

当然復権の要件に該当しない場合であっても、弁済等により、破産債権者に対する債務の全部について責任を免れた場合、申立てにより復権が認められる(破産法256条1項)。

罰則


注釈

  1. ^ 弁護士法7条4号
  2. ^ 司法書士法5条3号
  3. ^ 行政書士法第2条の2第2号
  4. ^ 弁理士法8条10号
  5. ^ 社会保険労務士法5条2号
  6. ^ 税理士法4条2号
  7. ^ 土地家屋調査士法5条3号
  8. ^ 貸金業法6条1項2号
  9. ^ 建設業法8条1号、17条
  10. ^ 保険業法279条1項1号
  11. ^ 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律4条1項1号
  12. ^ 古物営業法4条1号
  13. ^ 質屋営業法3条1項6号
  14. ^ 動物の愛護及び管理に関する法律12条1項2号
  15. ^ 測量法第55条の6第1項第1号
  16. ^ 不動産の鑑定評価に関する法律16条2号
  17. ^ 不動産の鑑定評価に関する法律25条1号
  18. ^ 宅地建物取引業法5条1項1号
  19. ^ 宅地建物取引業法18条1項2号
  20. ^ 廃棄物の処理及び清掃に関する法律7条5項4号ロ、14条5項2号イ
  21. ^ 鉄道事業法6条3号
  22. ^ 旅行業法6条1項6号
  23. ^ 警備業法3条1号
  24. ^ 住宅宿泊事業法4条2号
  25. ^ 探偵業の業務の適正化に関する法律3条1号
  26. ^ 公認会計士法4条4号
  27. ^ 銀行法第7条の2第2項第2号
  28. ^ 保険業法第8条の2第2項
  29. ^ 特定非営利活動促進法20条1号
  30. ^ 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律24条2項2号
  31. ^ 警備業法14条1項、3条1号
  32. ^ 銃砲刀剣類所持等取締法5条1項2号

出典

  1. ^ デジタル大辞泉、当該項目参照。
  2. ^ 破産法 2条11項 <e-Gov> 2019年3月20日現在の法律。
  3. ^ 破産法 第二章第一節 <e-Gov> 2019年3月20日現在の法律。
  4. ^ 破産法 79条 <e-Gov> 2019年3月20日現在の法律
  5. ^ 破産法 184条2項 <e-Gov> 2019年3月20日現在の法律
  6. ^ 債権者平等の原則。判例・通説。
  7. ^ 破産法 1条 <e-Gov> 2019年3月20日現在の法律。
  8. ^ 罪刑法定主義と破産法全文からの解釈。通説的見解。
  9. ^ 民事執行法 152条1項の例外規定としての破産法 第十二章第一節 <e-Gov> 2019年3月20日現在の法律。
  10. ^ 判例 最決昭和36年12月13日民集15巻11号2803頁
  11. ^ 2006年度(平成18年度)の破産既済事件は、総数175,735件のうち、自然人の自己破産が166,527件(94.8%)を占め、そのうち143,375件(総数の81.6%、自然人自己破産の86.1%)が同時廃止だった。平成18年度、司法統計年報、民事・行政、破産既済事件数 破産者及び終局区分別 全地方裁判所、最高裁判所。
  12. ^ Web上の法律相談掲示板等では、両者を混同した投稿が頻繁に見られる。
  13. ^ 最高裁昭和36年(ク)第101号 同36年12月13日大法廷決定 民集第15巻11号2803頁
  14. ^ 免責不許可事由があると同時廃止にならないのか? LSC綜合法律事務所(志賀貴)、2021年3月14日閲覧。
  15. ^ 伊藤眞(2009)『破産法・民事再生法』有斐閣、537頁
  16. ^ 前掲伊藤(2009)539頁参照
  17. ^ 前掲伊藤(2009)544頁
  18. ^ 最判平成11年11月9日民集53巻8号1403頁、最判平成15年3月14日民集57巻3号286頁
  19. ^ 津市営住宅連帯保証人取扱要綱 津市 2022年11月20日閲覧
  20. ^ 入居手続きの際の「連帯保証人の資格」の変更 北見市 2022年11月20日閲覧
  21. ^ 札幌市営住宅条例施行規則 札幌市 2022年11月20日閲覧
  22. ^ 日本中央競馬会電話投票に関する約定(担保ARS会員) 日本中央競馬会 2022年3月26日閲覧
  23. ^ 日本中央競馬会電話・インターネット投票に関する約定(A-PAT会員) 日本中央競馬会 2022年3月26日閲覧
  24. ^ 競輪電話投票に関する約定書 公益社団法人 全国競輪施行者協議会 2022年3月26日閲覧
  25. ^ 司法修習生採用選考審査基準 最高裁判所 2022年11月20日閲覧


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