一般用医薬品の種類と有効成分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/03 07:23 UTC 版)
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
神経系作用薬
風邪薬
- 風邪症候群の諸症状の緩和を目的とし、解熱鎮痛成分、くしゃみ、鼻水抑制成分、抗炎症成分などを含んだ風邪薬を総合感冒薬と呼ぶ。以下の成分が用いられる。
- 解熱鎮痛成分
- 解熱鎮痛成分はプロスタグランジン抑制の副作用で、胃粘膜保護を阻害するため、胃を荒らす物が多い。そのため、合成ヒドロタルサイトのような制酸成分が含まれている場合が多い(したがって、同成分配合の胃腸薬と併用してはいけない)。また、イソプロピルアンチピリンは市販の解熱鎮痛成分では唯一のピリン系である(アスピリンはピリン系ではない)。アセトアミノフェン以外の製剤については15歳未満への使用、特にインフルエンザや水痘への投与は致死率の高いライ症候群を発症する危険性があるため、禁忌である。
- 即効性があり、アセトアミノフェン、カフェインと併用される。この3つを配合した処方をACE処方という(各成分の頭文字から採ったもの)。
- アスピリン(アセチルサリチル酸)
- 〜ピリンと名が付いているが、ピリン系ではない。そのため、アセチルサリチル酸の名をそのまま表記するケースが多い。胃を荒らしやすいので、制酸成分が併用されることが多い。15歳未満は使用禁止。
- 解熱鎮痛だけでなく、抗炎症にも効果を発揮する。胃を荒らしやすい。15歳未満は使用禁止。
- 市販唯一のピリン系成分で優れた解熱鎮痛作用を持つが、ピリン薬疹の既往歴がある場合は、使用を警戒する必要がある。若干の抗炎症作用もある。
- くしゃみ、鼻水などを抑える成分
- 抗ヒスタミン剤や抗コリン成分などが該当。ジフェンヒドラミンなどは俗に言う“眠くなる成分”であり、これらが含有されている場合は機械の操作、乗り物の運転は控えるべきである。
- 抗ヒスタミン成分
- ジフェンヒドラミン塩酸塩
- 個人差はあるが、副作用で強い催眠作用を持つ。そのため、後述の睡眠改善薬にも利用される。
- クロルフェニラミンマレイン酸塩
- カルビノキサミンマレイン酸塩
- 別名シベロン。
- 第二世代抗ヒスタミン薬に属し、眠気が比較的少ない。
- 抗コリン成分
- ベラドンナ総アルカロイド
- ヨウ化イソプロパミドなど。
- 鎮咳成分
-
- リン酸コデイン/リン酸ジヒドロコデイン
- コデイン系統は、最も優れた鎮咳作用を持つ一方で、エフェドリンと並び依存性が強い成分で、麻薬性成分の異名を持つ。同成分乱用による薬物依存症が問題になっており、以下の成分に代替されることも多い。
- デキストロメトルファン臭化水素酸塩
- デキストロメトルファンフェノールフタリン酸塩
- ノスカピン
- チペピジンヒベンズ酸塩
- キョウニン
- ナンテンジツなど。
- 去痰成分
-
- アンブロキソール塩酸塩
- スイッチOTCであり、市販感冒薬で最も新しいOTC成分。
- 抗炎症成分
-
- 塩化リゾチーム
- 抗炎症作用のほか、去痰作用も持つ。卵白から作っているため、卵アレルギー患者は絶対禁忌である。
- 炎症物質の産生を抑制し、優れた抗炎症作用を持つ一方、凝固した血液を分解しにくくする作用を持つ。血栓症、心筋梗塞などの既往歴がある場合は、要警戒である。また、肝斑治療薬として同成分が用いられることもあるが、その場合絶対に同成分の薬を併用してはいけない。
- ブロメライン/セミアルカリプロティナーゼ
- パパイン酵素から抽出したもので抗炎症作用を持ち、ブロメラインは化粧品などにも配合される。一方、血液を凝固させるフィブリンやフィブリノーゲンを分解してしまうので、血が出やすい、血が止まりにくい人には警戒が必要である(トラネキサム酸と逆の効果を持つ)。
- ステロイド性の抗炎症成分(市販の内服薬では存在しない)に類似した作用を持つ。甘草を原料にしているため、食品との食べ合わせに注意。
- カンゾウ(甘草)
- 鎮静成分
- 制酸成分
- 前述した解熱鎮痛成分によって荒れた胃粘膜を修復する目的で使用する。したがって、風邪薬、解熱鎮痛薬などの場合、制酸作用を標榜してはいけない。
- ビタミン、その他滋養強壮成分
-
- ビタミンCのこと。粘膜の健康維持目的で多用される。
- ビタミンB2のこと。発熱時に消耗しやすいので、それを補う目的で多用される。
- ヘスペリジン
- 漢方製剤
-
- ニンジン
- ここでのニンジンとは漢方生薬である高麗人参のことである。
- 風邪の引き始めに効能を発揮する。著しい発汗作用がある。
- 俗に言う治りかけの症状(吐き気、微熱、寒気)や風邪に伴う胃腸炎に効果を発揮する。
- くしゃみ、鼻水などに効果を発揮する。
解熱鎮痛薬
- 前述の風邪薬における解熱鎮痛成分を主剤とした薬品。解熱鎮痛成分のほか、鎮静成分、局所麻酔成分などが配合される。成分は風邪薬を参照。
鎮咳去痰薬
- 鎮咳とは咳を鎮める、去痰とは痰を切る、これらの症状を緩和させる薬品のこと。風邪薬に配合されていることも多い。トローチ型の薬では殺菌消毒成分(塩化セチルピリジニウムなど)を含む場合もあるが、その場合は噛み砕いては効果を発揮できない。
- 殺菌消毒成分
-
- 口中の殺菌に用いられる。効き目は弱いので、単独成分では医薬部外品扱いで販売される。一般にCPCと省略される。
睡眠改善薬
- ジフェンヒドラミン塩酸塩は、眠くなる副作用を逆に主作用に利用したもので、エスエス製薬のドリエルが、日本で初めて市販化。あくまで睡眠“改善”薬であり、医療用の睡眠薬ではない。ほかに鎮静成分としてブロムワレリル尿素、イソプロピルアセチル尿素などが配合されている。抗ヒスタミン剤を用いない、生薬製剤、漢方薬製剤の商品もある。
- 主な成分
-
- ジフェンヒドラミン塩酸塩
眠気防止薬
- カフェインは睡眠防止に用いられるほか、酔い止め、鎮痛薬などにも用いられる。ただし、その場合は頭痛緩和の補助的説明で用いられ、眠気防止を標榜することはできない(実際、プラセボを除き、医薬的な効果はない)。
- カフェイン
- ビタミンB類
- ニコチン酸アミド
- アミノエチルスルホン酸
- ミックスコーヒー浸出液
乗り物酔いの薬(鎮暈薬)
- 鎮暈とはめまいを鎮めること。乗り物酔いの原因は平衡機能の異常によるものであるため、それらによる吐き気、頭痛などを緩和する目的のもので、様々な作用を持った成分を配合している。
- 抗めまい成分
-
- ジフェニドール塩酸塩
- 厳密に言えば、抗ヒスタミン成分でもある。
- 抗ヒスタミン成分
-
- メクリジン塩酸塩
- 持続性を持つため、市販の乗り物酔い薬には多く配合される。
- ジメンヒドリナート
- 抗コリン成分
-
- スコポラミン臭化水素酸塩
- 消化管の緊張低下により吐き気を防止する。即効性があるが、持続性がない。
- 主に胃液分泌抑制成分として胃腸薬に配合されるが、比較的長い持続性を期待してスコポラミンの代用に用いることがある。その場合、絶対に同成分配合の胃腸薬と併用してはいけない。
- 鎮静成分
- 脳に軽い刺激を与え、混乱を軽減する。
- スイッチOTC。
- その他
- 局所麻酔成分
- 嘔吐中枢を麻痺させる。
小児用鎮静薬
- 主として疳の虫対策に用いられる。1ヶ月以上の長期連用を目的としているものが主流で、生薬成分を用いている。
- ゴオウ
- ジャコウ
- レイヨウカク
- ジンコウ
- 主な漢方製剤
口腔咽喉薬、含嗽薬
- 主に口腔内の炎症を緩和するものであり、外用薬に属する。剤型はトローチやドロップになったものも多いが、これらは咬まずにゆっくり溶かす必要がある。抗炎症成分(風邪薬の項)や殺菌消毒成分が含まれる。
- 抗炎症成分
- 風邪薬の抗炎症成分を参照。
- アズレンスルホン酸ナトリウム
- 塩化リゾチーム
- グリチルリチン酸二カリウム
- トラネキサム酸
- 殺菌消毒成分
- 主に口腔用
- 塩化セチルピリジニウム
- 塩化デカリニウム
- 主に含嗽用
- ポビドンヨード
胃腸薬
健胃薬・胃腸薬
- 消化不良、食欲不振、胃の痛み、胸焼け、腹部膨満感などに効果を発揮する。以下の成分が用いられることが多い。
- 制酸成分
- 中和反応により胃酸の働きを弱める成分で、解熱鎮痛薬で胃を荒らすのを防ぐために風邪薬、頭痛薬に用いられることも多い。また、アルミニウムを含んでいることで、安全性が問題視されることがあるため、同成分配合では長期連用を避けた方が良い。また、アルミニウムは止瀉薬、マグネシウムは瀉下薬に用いることがあるので、同様の副作用を招くことがある。
- 胃酸との中和反応により食塩を生じるため、透析患者には禁忌、高血圧症には慎重投与となっている。
- 酸化マグネシウム
- 水酸化マグネシウム
- 合成ヒドロタルサイト
- リン酸水素カルシウム
- メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
- ボレイ
- 制酸だけでなく、粘膜保護作用も持っている。
- 健胃成分
- 唾液や胃酸の分泌を促し、弱った胃の働きを高める。主に生薬成分が使用され、芳わしい匂いを持つ芳香成分と苦みが強い苦味成分のものがある。味覚と嗅覚を刺激するために、オブラートで包んでは効果をまるで発揮しない。
- 苦味の強い成分
- 芳香の強い成分
- 他の成分
- 塩化カルニチン
- 乾燥酵母
- 肝臓水解物
- 消化成分
- 消化酵素を補う目的で以下の物が使われる。
- ジアスターゼ
- タカジアスターゼ
- ビオジアスターゼ
- リパーゼ
- プロザイム
- サナルミン
- アスペルギルス・オリゼーNK菌培養末
- 胆汁末
- ウルソデオキシコール酸など。
- 胃粘膜保護、修復成分
- 種類は色々あり、各商品ごとの特色となっていることが多い。また多くがスイッチOTCである。
- いわゆる「緑の成分」。薬の成分によって便が緑色に着色し、また便臭も減る。
- メチルメチオニンスルホニウムクロライド
- 一般にMMSCと省略される。
- 抗炎症成分
-
- グリチルリチン酸二カリウム
- 消泡成分
- 体内に溜まったガスを放出する成分で、整腸薬に用いられることもある。
- ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)
- 胃液分泌抑制成分
-
- ロートエキス
- 生薬製剤の一つ。乗り物酔い防止薬と併用してはいけない。
- ピレンゼピン塩酸塩
整腸薬
- 腸の働きを調えるもので、腸内細菌を整えるために生菌(善玉菌)を配合した物が多い。
止瀉薬
- 止瀉とは腹下し(下痢)を止めること。以下の成分が知られる。また、食中毒、食あたりなどでは止瀉薬を用いると体内の毒素を排出できなくなるため、危険である。
- 抗炎症作用を持つが、連用は危険であるため市販されている種は少ない。
- 抗炎症作用も持つ成分で、牛乳のカゼインから抽出。牛乳アレルギー患者には厳禁である。
- 塩酸ロペラミド
- 過食、過飲、寝冷えなどによる下痢に有効。強力なため、便秘を招くこともある。
- 抗菌作用、抗炎症作用を持つ。
- 日本薬局方の木クレオソート(鉱物性は有害)のことで、局所麻酔作用も持つ。
瀉下薬(一般に便秘薬)
- 瀉下とは腸の運動を活発させ、排便を促進することで、一般に便秘薬のこと。瀉下薬は女性の購入が多い商品だが、大腸運動性成分が含まれているものを妊婦に用いると早産、流産のおそれがあるので注意が必要である。
- 小腸を刺激する成分
- 膨潤性成分
-
- カルメロースナトリウム
- プランタゴ・オバタ種子
- プランタゴ・オバタ種皮末
- オウレン
- オウバク
- 寒天
- 内容物に水分を浸透させる成分
-
- ジオクチルソジウムスルホサクシネート
- 主な漢方製剤
胃腸鎮痛鎮痙薬
- 胃腸の痛みや差し込み用の薬品。厳密には胃腸薬とは分類される。
- 臭化ブチルスコポラミン
- 塩酸ジサイクロミン
- ロートエキス
- 塩酸パパベリン
- オキセサゼイン
- 局所麻酔成分
浣腸・坐剤
駆虫薬
- 1 一般用医薬品の種類と有効成分とは
- 2 一般用医薬品の種類と有効成分の概要
- 3 血液に作用する薬
- 4 婦人薬
- 5 外皮用薬
- 6 歯や口中に用いる薬
- 7 その他の漢方薬
- 一般用医薬品の種類と有効成分のページへのリンク