マーチングバンド マーチングバンドの組織

マーチングバンド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/24 20:31 UTC 版)

マーチングバンドの組織

ドラムメジャー

マーチングバンドの指揮者は、鼓隊の伝統から「鼓手長」を意味する「ドラムメジャー」(en)の名称で呼ばれる[要出典]。ドラムメジャーは、指揮を振るほか、メジャーバトンとホイッスルを用いて団員に様々な隊形変化の合図を促すこともある。また、バトンを使ってトス、トワーリングなど曲に合わせて技を披露する場合がある。

マーチングでは横や後ろを向いて演奏することも多いので、横や後ろで指揮を振る「サブドラムメジャー」がいる[要出典]

ほとんどの団体で、ドラムメジャーは他のメンバーとはユニフォームの色が違う。指揮杖には赤や黄色、オレンジの房が付いていることが多い。

日本の学校の部活動では指揮者は生徒ではなく指導者が行うことが多いが、ドラムメジャーに関しては生徒が行っている。

管楽器を演奏するセクション

ブラス

一般的にマーチングで使われる金管楽器には、信号ラッパから発展したビューグルとオーケストラや吹奏楽で使われる金管楽器をマーチング用に改良したマーチングブラスの二種類がある。

アメリカでは、信号ラッパがG調であったことから、1998年までのドラムコーの大会 (DCI) においてはすべてG調のビューグルで統一されていた。しかし1998年以降、DCIのルール改定により、マーチングブラスが使用可能になると、ビューグルからマーチングブラスに変更する団体が多くなった。日本のマーチングバンドでは、金管楽器のみの編成であっても、ビューグルが選択されることは少ない。また、DCIのルール改定に伴い、ドラム&ビューグルコーでも使用する楽器をマーチングブラスに変更する団体が多くなってきており、純粋にドラム&ビューグルコーと呼べる団体は日本全国で見ても少ない。

ビューグル
信号ラッパに由来する金管楽器。G調以外のビューグルも存在するがマーチングで使用されることは稀。
バルブを持たない信号ラッパから発展してきた楽器だが、現在[いつ?]のビューグルは、通常のトランペットと同じように3つあるいは4つのピストンを持つ。大きく分けてソプラノ、アルト、バリトン、コントラバスがある。アルトはアルト(フリューゲルホルン)、メロフォンフレンチホルンの3タイプがあり、バリトンにはバリトンとユーフォニアムの2タイプがある。また、ソプラノとアルトは管長は同じであるが管の太さの違いとベルの形状で音色に差がある。
全てフロントベル(トランペットのようにベルが前を向いていること)であり、サウンドの指向性を統一することにより、音響の悪い屋外でも、最大限の効果が得られるようになっている。また、視覚的効果の統一も図ることができる。さらに、演奏者の向いている方向を変化させることによって演奏のダイナミクスと視覚的効果とをリンクさせることができる。
調性すなわち管の長さ以外にも、トランペットに対してソプラノビューグルは、円錐管部の開きが早く、円筒管部の径も太い。このことからビューグルは、倍音を多く含み、遠達性に優れた、輝かしい音色を特徴としている。2006年現在ビューグルを販売しているのは、アメリカのDynasty社とKanstul社である。古くはバック社、ラディック社、ゲッツェン社、スリンガーランド社、オールズ&サン社、キング社等様々なメーカーが生産していた。
マーチングブラス
吹奏楽編成のマーチングバンドでは、ビューグルでなく、Bb管・F管のマーチングブラスが使われる。
ソプラノに対応する楽器はトランペット(Bb管)。アルトに対応する楽器はマーチングメロフォン(F管)。Bb管のマーチングフレンチホルンフリューゲルホルンを使用して響きを厚くするバンドもある。バリトンに対応する楽器はマーチングバリトンとマーチングユーフォニアム(どちらもBb管)。コントラバスに対応する楽器はマーチングチューバ(Bb管・Es管)である。
また本項冒頭の写真にもあるように、楽器のベルの向きを「地面に対して水平、もしくは少し高く上げた状態」で演奏するスタイルが主流となっている。
スーザフォン
Bb管のチューバと同じ管長を持つ低音金管楽器。アップライト(上向き)ベルのチューバでは歩行中の演奏が困難であることから、管を体に巻き付けるような形状のヘリコーンバスと呼ばれる楽器が生み出され、さらに改良されて今日のスーザフォンとなった。かつては、大きくて目立つことと、どこかしら愛嬌のある容姿から、マーチングバンドの代名詞的存在であった。近年では、音楽的表現においてチューバに劣るとされ、マーチングチューバに置き換えられる傾向にある。しかし「低い音が出る楽器=大きい」という直感的に分かりやすい視覚効果は、他の楽器には代え難い魅力である。また、楽器の操作の習熟のために長時間の訓練を要するマーチングチューバと異なり、スーザフォンは担ぐだけで演奏が始められる。問題となる音色も、優秀なチューバ奏者が演奏する限りでは、軽量化のためコンパクトに設計された3/4サイズのマーチングチューバより、むしろ良い結果が得られる。また自衛隊の音楽隊でもスーザフォンが使用されている。
管体は、本来、他の金管楽器同様、真鍮製であるが、奏者の負担を軽減するため、ベルをFRPABS樹脂にして軽量化したものも広く用いられている。

打楽器を演奏するセクション

バッテリー

「ドラム」、「ドラムライン」とも呼ばれる。ドリルに参加する打楽器のセクションで、スネアドラム、テナードラム、バスドラム、シンバルで構成される。スネアドラムは2–8人、テナードラムは1–5人、バスドラムは3–5人程度で構成されることが多い。シンバルは、近年、取り入れない団体が多くなっている。単に演奏されるだけでなく、スティック等を用いた視覚的な演技(ギミック)も行われる。かつては楽器をベルトで吊り下げて使っていたが、専用のキャリングホルダーが開発され、楽器の保持が容易であることや、奏者の歩行動作の妨げにならないことなどから、今日ではこれにドラムを取り付けて使用することがほとんどである。

マーチングスネアドラム
通常のスネアドラム(コンサートスネアドラム)に比べ、頑丈なつくりで、ハイテンションのチューニングが可能。また、シェル(胴)は深く、独特の倍音が特徴となっている。
ドラムコーを中心とした作編曲技法の発展や演奏技術の進歩に伴い、マーチング・ドラムの音域は年々拡大され、最高音を担当するスネアドラムには極端なハイピッチが要求されるようになった。今日では楽器自体の剛性が高められ、ヘッドにも合成繊維(ケブラー)を用いたハイテンションに対応するものが使われるようになっている。
ハイピッチとはいっても、「高い音」が出るピッコロスネアドラムが、極めて浅いシェルにより高次倍音を共鳴させるのとは、音色に違いがある。野外で演奏される小太鼓は、天然皮と紐締めの時代から、深い胴で太い音色の楽器が使われていた。この伝統が今日のマーチングスネアドラムにも生かされ、コンサート用に比べはるかに深いシェルが使われ、音色も太く遠達性に優れている。
近代的なコースタイルパーカッションでは、屋外という劣悪な環境においても、多くの音で空間を埋め尽くすことで効果的な音響を得ようとするオーケストレーションが用いられる。そのため、歯切れのよい、ツブのはっきりした音が好まれる。
締りのある音色が好まれるということは、響線(スナッピーとも呼ばれる)にも表れている。コンサート用では金属製のワイヤーがほとんどだが、マーチングでは音量と歯切れの良い、テニスラケットのガットに近いものが用いられている。
しかし一方では、従来からのプラスチックフィルム・ヘッドとワイヤー・スネアを深胴シェルに組み合わせて使う動きもある。これは、吹奏楽編成の団体が伝統的な行進曲を主体に演奏するような場合、ドラムコー・チューニングのスネアドラムではサウンドが突出してしまうからである。
スネア特有の叩き方で、右手と左手で握り方が違うトラディショナルグリップがある。かつてスネアをベルトで吊り下げていたとき、楽器が右側に傾いてしまい、左手が叩きづらかったことがことからおこったもの。現在[いつ?]はキャリングホルダーの使用により楽器の傾きはないが、その見た目のよさからほとんどの団体がこのグリップで叩いている。また、昔のようにあえて楽器を傾けて演奏する団体もある。(グリップについてはスネアドラム#グリップ(握り方)もご覧下さい)
オプションとして小さいシンバルカウベルなどを取り付けることもある。
マーチングバスドラム
スネアドラム同様、キャリングホルダーに取り付けて使用する。主に、楽曲のベースラインを担当する。「ベースドラム」とも呼ばれる。
ドラムコーやコースタイルバンドでは、通常3–5人の奏者が、それぞれ大きさの違うバスドラムを演奏する。シェルの大きさは16インチから32インチのものが一般的である。
奏者の分担により、ランニングと呼ばれる、細かいリズムに移るなど、演奏の幅を広げることができる。このことでマーチングバスドラムは古典的な「頭打ち」の楽器から、独立した「声部」すなわちメロディアスなラインを持った楽器へと発展したと言える。本来バスドラムにあるはずの「響き」は細かいリズムを不鮮明にするため、ヘッドにミュートを取り付けて響きを消すことが多い。これにより「コン」というアタック音のみが聞こえる。
オプションとしてジャムブロックなどを取り付けることもある。
マーチングマルチタム
スネアドラムと、バスドラムの中間の音域を担当する楽器で、キャリングホルダーに取り付けて使用する。ドラムセットでいうタムにあたる楽器だが、それと比較するとはるかに高いチューニングが施される。各タムの音程間隔は短3度と言われているが、決まりはない。
かつてはダブルヘッドの楽器が用いられていたが、今日では1人の奏者が複数のシングルヘッドタムを組み合わせて担当する楽器が主流。マルチ、トリオ、クォード、クイント、テナードラム等、呼ばれ方は様々。一般的にタムの数で区別される。
  • 3つのタムによって構成されるトリオ。
  • 4つのタムによって構成されるクォード。
  • 5つのタムによって構成されるクイント。
  • 6つのタムによって構成されるセクステット。
  • 7つのタムによって構成されるセプテット。ただしこれは70S後半、アメリカで稀に見られたもの。
オプションとしてカウベルなどを取り付けることもある。
クロスオーバーという腕を交差して叩く独自の奏法がある。
視覚的にも大いにアピールできるクロスオーバーだが、ある程度奏者の技量も必要である。
マーチングシンバル
コンサート用のシンバルに比べて小型で軽量、そして薄いものが使われる。叩いて演奏するほか、さまざまなアクションを披露して視覚的な演技も担当する。
しかし、フロントアンサンブル(フロントピット)のサスペンディッドシンバルで演奏が補えることから、最近[いつ?]ではマーチングシンバルを取り入れない団体も多い。
マーチングシロフォン
キャリングホルダーに取り付けて使用する。軽量化のため、音域は2.5オクターブに狭められ、また1つの鍵盤の大きさもコンサート用シロフォンより一回り小さくなっている。それでも以前は重量が20キログラム近くにもなっていたが、軽量化が進められ、近年は7–8キログラムのモデルが主流である。パレードなどでよく使用される。
マーチンググロッケン
キャリングホルダーに取り付けて使用する。グロッケンシュピールは元々小型の鍵盤楽器であるため、マーチングシロフォンとは違い、軽量化目的で音域を狭めてはいない。ベルリラとは別の楽器。パレードなどでよく使用される。
ベルリラ
小型のグロッケンシュピールに棒を取り付けて片腕で持ち運び、もう片方の腕でマレットを使って演奏する鍵盤楽器。演奏には片方の腕しか使えないため、難易度の高いリズムは演奏できない。主に小学生や幼稚園の鼓笛隊で使用される。
マーチングキーボード
キャリングホルダーに小型のキーボード(電池式)を取り付けたもの。主に小学生や幼稚園の鼓笛隊・マーチングバンドで使用される。打楽器ではないがここに分類。

フロントピット

「フロントアンサンブル」や「ピット」とも呼ばれ、ドリルの前、または横などに様々な打楽器を置いて演奏する。ドリルに参加しないため、歩幅を合わせて歩くなどマーチング的要素はほとんどない。しかし、逆に歩きながら叩かなければならないという制限がなく、実に豊富な種類の打楽器を演奏できるともいえる。

基本的に奏者それぞれの担当楽器が異なり、奏者それぞれの譜面も異なる。多彩なピット楽器によりさまざまな音色が生み出され、全体の曲を華やかにするという役割も持つ。ドリルにはほとんど関係がないピットだが、演奏面においては、なくてはならない存在といえる。

ドリルの前で演奏している位置関係上、ドラムメジャーに合わせてもピットの演奏だけが突出してしまうため、ピットは後ろのドラムやブラスの演奏を聞き、それに合わせて演奏しなければならない。ブラスとドラムがしっかりドラムメジャーのテンポに合わせていなければピットが演奏を合わせるのは難しいということである。

主にマリンバシロフォンヴィブラフォングロッケンシュピールティンパニトライアングルタンバリンカウベルスレイベルクラベス、コンサートバスドラム、コンサートスネアドラムゴング(ドラ)、チャイムウィンドチャイム、コンサートタムタムコンガボンゴ、和太鼓締太鼓小豆波(サーフドラム)ドラムセットブレーキドラムクロテイル、サスペンディッドシンバル、といった楽器が使われる。

1970年代、もともとティンパニや鍵盤楽器は可搬式の物が使われたが、1980年後半にはフロントピットというセクションが確立した。

マーチング独自の楽器編成として、サスペンディッドシンバルが何枚もあったり、コンサートベースドラムが2台以上使われることがある。吹奏楽ではあまり見られない光景だが、主にマーチングが行われる屋外ではホールでの演奏と違い反響がないため、多くのシンバルやベースドラムを使う必要がある。

ほとんどの場合、ユニフォームで帽子を着用している団体でも、フロントピットだけは帽子を着用しない。これはフロントピットがドラムメジャーの真下で演奏している関係上、帽子のせいで指揮が見えづらくなってしまうためである。

視覚効果を担当するセクション

カラーガード

ドラムコーや、その影響が強いコースタイルマーチングバンドに見られる。軍隊において、国旗等の警護を担当するカラーガードが、鼓隊あるいはラッパ鼓隊とともに行進していたことに由来する。ドラムコーの発展に伴い、カラーガードの視覚効果における有効性が認識されるようになり、今日のマーチングではカラーガードの演技が極めて重要視されている。 また、競技で演技をするカラーガードにおいて、今日ではフラッグやライフル等を巧みに使いながら、衣装やアイテムにて色彩の表現や踊りにて楽曲のストーリーを表現している。

バトントワラー

バトントワリングは、そもそもマーチングバンドのドラムメジャーが指揮杖を回したり投げ上げるといった演出を行なったことから発生したものである。かつてマーチングバンドにはバトントワラーがいるのが当然であった。その後、ドラムコー的視覚表現の発達や、バトントワリングが独自の運動競技として発達してきたこともあり、以前ほどバンドとバトンは一体のものではなくなってきているが、今日でもマーチングにバトントワリングが取り入れられる機会は多い。トワーリングバトンは視覚的なボリューム感に乏しく、色彩の表現がないため、カラーガードに比べ表現力が豊かでないともいえる。しかし、トスによる立体的な空間構成や、スピード感に溢れる演技がバトントワリングの特色であり、適切に活用することで強い視覚効果を与えることも可能である。

チアリーダー

アメリカの大学フットボールでは、チアリーダーとバンドとが一体となって試合の応援をするので、ハーフタイムショーの演技も一緒に行なわれてきた。日本の大学においても、応援団の組織にチアリーダーとバンドが含まれていることもある。


  1. ^ a b c d MAMOR編集部『MAMOR 2014年11月号』55頁
  2. ^ MAMOR編集部『MAMOR 2014年11月号』56頁
  3. ^ 2021年度マーチングコンテスト規定 (PDF) の冒頭より。
  4. ^ エンタメ|Sport of Sound|2024マーチング祭 ALL JAPAN CHAMPIONSHIPS|マーチング祭組織委員会”. マーチング祭|エンタメ. 2024年2月24日閲覧。





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