SAM黎明期
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/12 08:21 UTC 版)
アメリカとイギリスでは、それぞれ1943年ごろより艦対空ミサイルの開発に着手しており、大戦末期に日本軍が行った特別攻撃(特攻)の脅威を受けて開発は加速していた。アメリカでは、1944年に開始されたバンブルビー計画を基本として開発が進められており、ここから派生した中射程型のテリアは1948年、本命と位置付けられていた長射程型のタロスも1950年には試作に入った。 これらのミサイルは、まず既存の巡洋艦への改修によって装備化されることになり、1955年にはボルチモア級重巡洋艦をもとにテリアを搭載したボストン級が再就役したのを端緒として、順次に改装が進められた。しかし特にテリアは、より小さい駆逐艦ベースの船体でも十分に収容できることが判明したことから、巡洋艦への改装はそれ以上行われないことになった。かわってファラガット級がミサイル艦として設計変更されることになり、これを端緒としたミサイル・フリゲート(DLG)の整備が進められた。しかしこれらも、駆逐艦をベースにしているとはいえ、通常の艦隊駆逐艦より一回り大きく、大量建造は困難であったことから、1951年1月には、護衛駆逐艦程度の艦にも搭載できる射程10海里 (19 km)程度の艦対空ミサイルの開発要求が発出された。これに応じて、テリアの開発計画から派生するかたちで開発されたのがターターであり、1955年初頭には開発計画が認可され、1957年度からはこれを搭載したチャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦の建造が開始された。また各国も競って同ミサイルの導入を図ったものの、高性能ではあるがあまりに高価であり、導入は一部の防空艦に限られることが多かった。またイギリスはシースラグ、フランスはマズルカと、それぞれ国産のミサイルを配備した。 タロス搭載艦 アメリカ海軍 原子力ミサイル巡洋艦「ロング・ビーチ」(後日撤去) オールバニ級ミサイル巡洋艦(ボルチモア級重巡洋艦改装型) ガルベストン級ミサイル巡洋艦(クリーブランド級軽巡洋艦改装型) テリア搭載艦 アメリカ海軍 キティホーク級航空母艦 ※シースパローに換装され後日撤去 ボストン級ミサイル巡洋艦 プロビデンス級ミサイル巡洋艦 原子力ミサイル巡洋艦「ロングビーチ」 リーヒ級ミサイル巡洋艦 原子力ミサイル巡洋艦「ベインブリッジ」 ベルナップ級ミサイル巡洋艦 原子力ミサイル巡洋艦「トラクスタン」 ファラガット級駆逐艦(クーンツ級駆逐艦) ミサイル駆逐艦「ジャイアット」 ※後日撤去 イタリア海軍 ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ級巡洋艦「ジュゼッペ・ガリバルディ」 アンドレア・ドーリア級巡洋艦 ヘリコプター巡洋艦「ヴィットリオ・ヴェネト」 オランダ海軍 デ・ロイテル級巡洋艦「デ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン」(英語版、オランダ語版) ターター搭載艦 アメリカ海軍チャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦 オールバニ級ミサイル巡洋艦 ミッチャー級駆逐艦 フォレスト・シャーマン級駆逐艦 ブルック級ミサイルフリゲート イタリア海軍インパヴィド級駆逐艦 オーストラリア海軍パース級駆逐艦 スペイン海軍バレアレス級フリゲート 西ドイツ海軍リュッチェンス級駆逐艦 海上自衛隊護衛艦「あまつかぜ」 フランス海軍ケルサン級駆逐艦 シースラグ搭載艦 イギリス海軍カウンティ級駆逐艦バッチ1(GWS.1) カウンティ級駆逐艦バッチ2(GWS.2) チリ海軍カウンティ級駆逐艦バッチ2(GWS.2) マズルカ搭載艦 フランス海軍巡洋艦「コルベール」 シュフラン級駆逐艦
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SAM黎明期
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 05:08 UTC 版)
アメリカ海軍は、第二次世界大戦末期より、全く新しい対空兵器である艦対空ミサイル(SAM)の開発に着手していた。まず実用化されたテリアミサイルは、もともとは小型艦向けのシステムとして期待されており、1955年にはギアリング級駆逐艦「ジャイアット」にこれを搭載する改修が行われて、同海軍初のミサイル駆逐艦となった。しかしこの改修の結果、同システムは駆逐艦に搭載するにはあまりに大掛かりであると判断されて、まずは既存の巡洋艦への改修によって装備化されることになり、その後は駆逐艦をベースに大型化した嚮導駆逐艦(Destroyer leader, DL; 後のフリゲート)に搭載されるようになった。しかし航空機の発達に伴って、駆逐艦の主兵装だった12.7センチ砲が急速に陳腐化していたこともあり、駆逐艦でも搭載可能なSAMシステムとしてターター・システムが開発され、1960年より、これを搭載したDDGであるチャールズ・F・アダムズ級が就役を開始した。また各国も競って同ミサイルの導入を図ったものの、高性能とはいえあまりに高価であり、導入は一部のミサイル駆逐艦に限られた。 イギリス海軍では、1962年就役のカウンティ級駆逐艦に国内開発のシースラグを搭載してSAMの運用に着手したが、同級は駆逐艦と軽巡洋艦の中間的な艦と位置づけられており、艦種記号としてはDLG(ミサイル・フリゲート)に類別されていた。これに対し、DDGの記号が付与されたのが42型駆逐艦で、先行する82型駆逐艦と同系統のシーダートを搭載しつつ、艦型を大幅に圧縮した。またフランス海軍では、1962年よりシュルクーフ級駆逐艦の一部をターター搭載DDGとして改装する一方、自国でもマズルカを開発し、1967年就役のシュフラン級駆逐艦に搭載したが、これは米海軍のDLGに相当するものであった。 冷戦構造のもとで西側諸国への対抗を図っていたソ連海軍も、初の新造ミサイル駆逐艦として61型(カシン型)を開発し、1962年より配備を開始した。ただし同型を駆逐艦とするのは西側による分類であって、ソ連海軍自身は大型対潜艦(BPK)と類別していた。これと並行して、カシン型と同じSAMに加えて長射程の艦対艦ミサイル(SSM)も搭載した58型(キンダ型)の開発が進められており、こちらは駆逐艦とされていたが、後にミサイル巡洋艦(RKR)に類別変更された。 テリアを搭載した「ジャイアット」 チャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦 61型大型対潜艦 (カシン型駆逐艦)
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