Paradox for Windows
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/12 16:43 UTC 版)
「Paradox (データベース)」の記事における「Paradox for Windows」の解説
Paradox for Windows は別の開発チームが開発した全く異なる製品である。DOS版の特徴である QBE やデータベースエンジンはDOSからほぼそのまま移植されているが、言語が PAL から ObjectPAL に変わり、フォームおよびレポートの作成にGUIが導入された。ObjectPAL は議論の的となったが、PAL はキー押下を記録することに基づいていたため Windows では全く異なる方式が必須だった。代わりにHyperCardのアイデアに基づいたオブジェクトベースの言語とした。フォーム及びリポートの設計には、デバイス独立なスケーリングを使い、詳細レイアウトのためにズーム可能である。AltoとSmalltalkにならってマウスの右クリックでフォームとレポートに関するプロパティにアクセスできる。これは最近のWindowsプログラムでは一般的なインタフェースである。ObjectPALは視覚的オブジェクトと対応していて、やはり右クリックで見ることができる。プロパティ表示とレイアウトツールは画面上に固定することができる。これはNeXTにならったもので、今ではWindowsプログラムで一般的である。 当初の開発ではC言語でマクロを駆使してオブジェクト指向的なコードを書いていた。その後 Turbo C++ が利用可能になると、残りはC++で書くようになった。1.0リリースまでの製品マネージャは Joe Duncan だった。開発及び品質保証を含めてチームは総勢30名だった。 Paradox for Windows は Quattro Pro for Windows と密接に連携したプロジェクトで、1990年春から Windows 3.0 のベータ版を使って開発がスタートした。当初の計画より1年間開発が遅れ、1993年初めごろリリース可能となった。遅れた要因は色々あるが、大幅な書き換えであったこと、オブジェクト指向を初めて採用したこと、GUIを導入したこと、新しいオペレーティングシステムを使ったことなどが考えられる。この遅延により、マイクロソフトはAccessをParadoxの数ヶ月前に出荷でき、市場での勝利を得た。 1990年、ボーランドは DOS および Windows 向けの xBase も開発しており、1992年に出荷を予定していた。1992年初めごろ、アシュトンテイトがWindows版の開発が困難な状況に陥ったのを知り、ボーランドは計画を変更してアシュトンテイトを買収し、dBASE の公式な後継を出荷することにした。アシュトンテイト買収にともなってInterBaseを入手したため、ボーランドは Paradox/Windows がInterBaseのデータベースにもアクセスできるようにすることを決め、データベースエンジンとのインタフェースとしてIDAPIを策定した。 この買収によって方針転換が必要になった。Paradox はこれまで dBASE と競合しており、Paradox/Windows は開発者指向の市場にシフトすることで dBASE とは異なる方向を目指す方針だった。しかし dBASE を入手したためその方針は適切ではなくなり、より一般の使いやすさを指向した市場を目指すことになった。しかし、既に開発はかなり進んでいて、そこからエントリーレベル市場に転換することは不可能だった。Access は1992年のクリスマスのリリースされ、その市場を獲得した。それでも Paradox/Windows は健闘した。しばらくするとボーランドではアシュトンテイト買収による悪影響が出始めた。多くの製品開発が中止され、痛みを伴うリストラが敢行され、買収の中心であった dBASE プロジェクトも技術的理由で中止となり、ボーランドの売り上げが低下し、早急な dBASE for Windows の開発が必要となった。ボーランドは幅広い製品を販売するだけの体力を失った。dBASE for Windows がリリースされたときに置換するという方針で Paradox は積極的にはマーケティングされなかった。dBASE for Windows は1994年にリリースされたが、既に時期を逃していた。 Microsoft Access は Paradox/Windows よりもずっと低価格で、Word、Excel、PowerPointと共に Microsoft Office Professional の一部としても販売された。しかも、FoxPro開発チームの貢献によって性能もよかった。その後のバージョンで使いやすさを改善していったにも関わらず、Paradox は徐々にシェアが減っていった。Paradox は他のボーランド製品と共にWordPerfect社に売却され、WordPerfect の製品として販売され、さらにコーレルが取得してオフィススイートの一部として販売するようになった。dBASE for Windows は出荷があまりにも遅かったため、dBASEおよびxBaseユーザーは既にほぼ同じインタフェースの Microsoft FoxBase に移行していた。ボーランドはInterBase/IDAPIサーバを保持しており、Delphiツール開発に注力するようになり、一部市場では今も根強い人気がある。
※この「Paradox for Windows」の解説は、「Paradox (データベース)」の解説の一部です。
「Paradox for Windows」を含む「Paradox (データベース)」の記事については、「Paradox (データベース)」の概要を参照ください。
- Paradox for Windowsのページへのリンク