HyperCardとは? わかりやすく解説

HyperCard

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/04 01:06 UTC 版)

HyperCard
作者 ビル・アトキンソン
開発元 Apple (旧:Apple Computer)
初版 1987年 (38年前) (1987)[1]
最終版
2.4.1 / 1998年 (27年前) (1998)
プログラミング
言語
Apple Pascal英語版
対応OS Macintosh: System 6, System 7, Mac OS 8, Mac OS 9
Apple IIGS: Apple GS/OS英語版 5 ~ 6
プラットフォーム Macintosh, Apple IIGS
種別 ハイパーメディア, ソフトウェア開発
ライセンス プロプライエタリ
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HyperCard(ハイパーカード)は、ハイパーテキストを実現した最初の商用ソフトウェア。1987年にApple Computer(現:Apple)のビル・アトキンソンが開発した[2]Macintosh (Classic Mac OS) で動作し、ゲームの制作、簡単なプログラムの開発等に利用される。

概要

ハイパーテキストのノードとしてカードを用い、カードとカードをつなぐリンクとしてはボタンを用いる。カードの上にはボタンの他にテキストやグラフィックをおくことができた。プログラムを記述するにはHyperTalkと呼ばれるスクリプト言語を用いる。

ボタンを押すと各ボタンに対応付けられたカードにジャンプするか、HyperTalkで記述されたプログラムを実行する。HyperCardを使えばプログラムを直接記述しなくても簡単なアプリケーションを作ることができたので、マルチメディアオーサリングツールとして使用された。

アドベンチャーゲーム『MYST』の最初のバージョンはこのHyperCardを使って制作された。この他にHyperCardで制作されたものとして、ベートーベンの交響曲第9番CD-ROM英語版全地球カタログの初期バージョン、Wizzy Active Lifestyle Telephone英語版のプロトタイプなどがある。

当初アトキンソンはHyperCardを個人的に開発し、Macintoshに標準添付することを条件にAppleに提供した[3]。その結果、バージョン 1.x はMacintoshに無償で添付され、オーサリングを含む全機能を利用できた。

しかし、バージョン2.0以降になって、オーサリングツールとして使えるHyperCardは有償、ファイルを実行する機能のみのHyperCard Liteは無償配布という形になった。一般にこれら両方を総称して「HyperCard」と呼ぶことが多い。実際はLiteもコマンド「magic」によってオーサリング可能となる。ただし、バージョン2.3になってLiteに代わりバンドルされるようになったHyperCard Playerは、完全にオーサリング機能が除去されていた。最終バージョンは 2.4.1。

バージョン 3.0はQuickTimeのコンポーネントの一部として開発が行われていたが、途中で打ち切られたため、現在は搭載されていない。その後、QuickTimeはHyperCardの統合で実装が予定されていた機能の代わりにFlashファイルをサポートした。

ジョブズ復帰後の2000年にハイパーカードチームは完全に解体された。AppleのウェブサイトでかつてHyperCardが配付されていたURL(http://www.apple.com/hypercard )にアクセスすると、英語版Wikipediaの記事にリダイレクトされる。

2017年、HyperCard 30周年を記念し、インターネットアーカイブによってHyperCardスタックをアップロードしエミュレートできるプロジェクトが設立された[4]

評価

  • Compute!には、1988年に「HyperCardは、人々がパーソナルコンピュータとしてMacintoshを選択するきっかけになるかもしれない」[5]、1989年には「将来のほとんどのMacintoshのソフトウェアはHyperCardを用いて開発されるだろう」[6]と書かれた。
  • Stewart Alsop II英語版は、HyperCardがMacintoshのグラフィカルユーザインタフェースとしてFinderを置き換える可能性があると推測した[7]
  • スティーブ・ウォズニアックは、HyperCardを「これまでで最高のプログラム」と呼んでいる[8]
  • アラン・ケイは、HyperCardをWebのユーザー体験の規範とすべきものだったと評価している[9]

HyperCardによって生まれた言葉

  • HyperCardで、カードやボタンなどを積み重ねて制作したファイルのことを「スタック」と呼ぶ。スタックという言葉はしばしば「作品」というニュアンスで扱われ、作者はプログラマーやデザイナーでなく、敬意を込めて「スタック作家」と称されることすらあった[10][11]。HyperCardはそのような意味で、紛れもなくMacintosh文化の一翼を担っていた。
  • HyperCardでプログラムを制作する上での制約を打破すべく、HyperCardに実装されていない機能を実現するXCMDXFCNと呼ばれるシステムが生まれた。
  • ウェブブラウザのフィンガーカーソルは、HyperCardに由来するものとされている[12]

HyperCardに影響されて開発されたオーサリングツールや類似するもの

HyperCardは非常に優れたソフトウェアである。そのため多数の類似品が生まれた。また現在のmacOSでは言語体系がHyperTalkに似たAppleScriptが開発環境の一つになっているが、用途がオーサリングではなくmacOSのバッチ処理が主体であり、大きく異なっている。そのためHyperCardの復活を望む声は原作者のアトキンソンを始め絶えることはない。

脚注

  1. ^ “Hypercard – How About New Mac Owners”, Mac GUI, http://macgui.com/usenet/?group=14&id=4987 
  2. ^ Bill Atkinson: Hypercard”. YouTube TWiT Tech Podcast Networkチャンネル. 2023年4月17日閲覧。
  3. ^ Apple Introduces Bill Atkinson's HyperCard, Referencing Vannevar Bush and the Memex in the Marketing : History of Information”. historyofinformation.com. 2025年2月17日閲覧。
  4. ^ HyperCard On The Archive (Celebrating 30 Years of HyperCard) - Internet Archive Blogs”. 2020年7月16日閲覧。
  5. ^ “Information On A Card”. Compute!'s Apple Applications: pp. 6. (December 1987). https://archive.org/stream/COMPUTEs_Apple_Applications_Vol._5_No._2_Issue_6_1987-12_COMPUTE_Publications_US#page/n9/mode/2up 18 August 2014閲覧。 
  6. ^ Leemon, Sheldon (April 1988). “The Hazards of HyperCard”. Compute!: pp. 49. http://www.atarimagazines.com/compute/issue95/049_1_MICROSCOPE_THE_HAZARDS_OF_HYPERCARD.php 18 August 2014閲覧。 
  7. ^ PC-Letter_19880118.pdf”. 2020年9月23日閲覧。
  8. ^ Wozniak's fireside chat”. 2020年9月23日閲覧。
  9. ^ Should web browsers have stuck to being document viewers? - Quora”. Quora.com. 2025年3月4日閲覧。
  10. ^ 例えば、宮下由紀子 著 ; SE編集部 編『宮下由紀子コレクション : フツーの主婦が作ったアブノーマルなスタック20本+α』翔泳社1994.2 の内容説明には「ニフティサーブなどの商用ネットワークで人気を博しているスタック作家、宮下由紀子氏の作品集です。」(「BOOK」データベースより)とある。 http://webcatplus.nii.ac.jp/webcatplus/details/book/2410441.html (閲覧2022-02-13)
  11. ^ 小寺信良,ITmedia. “HyperCardの思い出 ゲームスタック作家だったあの頃”. ITmedia. 2022年2月13日閲覧。
  12. ^ There is some important history behind ‘the finger/link/pointing-hand/pointer’ cursor (personally…”. 2020年9月23日閲覧。
  13. ^ 清水計宏『マルチメディアへの挑戦』、ソフトバンク、1991年、338頁。ISBN 4-89052-233-6
  14. ^ 『青空のリスタート(富田倫生)』:新字新仮名 - 青空文庫
  15. ^ HyperSense パンフレット

外部リンク


HyperCard

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Macintosh LC 475」の記事における「HyperCard」の解説

HyperCardスタック利用出来るようにするため、HyperCard 2.2J Lite添付されていた。

※この「HyperCard」の解説は、「Macintosh LC 475」の解説の一部です。
「HyperCard」を含む「Macintosh LC 475」の記事については、「Macintosh LC 475」の概要を参照ください。

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