East i-Dとは? わかりやすく解説

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JR東日本キヤE193系気動車

(East i-D から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/03 00:35 UTC 版)

JR東日本キヤE193系気動車
登場時のキヤE193系(2007年6月)
基本情報
運用者 東日本旅客鉄道
製造所 新潟鐵工所
製造年 2002年7月3日(新製)
製造数 3両
投入先 南秋田運転所→秋田車両センター→秋田総合車両センター南秋田センター
主要諸元
編成 3両固定 (Mzc + Mz + Tzc)
軌間 1,067 mm(狭軌
最高運転速度 110 km/h
車両定員 非営業車両(事業用
車両重量 乾燥重量:46.5t(Mzc車)
44.6t(Mz車)
41.3t(Tzc車)
編成重量 131.6 t
全長 21,760 mm(Mzc車/Tzc車)
20,500 mm(Mz車)
全幅 2,900 mm
全高 4,050 mm(観測ドーム高さ)
3,980 mm(パンタグラフ折りたたみ)
車体高 3,277.5 mm
床面高さ 1,140 mm(Mzc車/Tzc車)
1,160 mm(Mz車)
車体 アルミニウム合金
ダブルスキン構造
台車 ボルスタレス台車
DT67/DT67A(Mzc車)
DT66(Mz車)
TR253B/TR253C(Tzc車)
機関 直噴式直列6気筒横型ディーゼルエンジン
DMF14HZB(カミンズ製N14R)
機関出力 450PS×2基×2両
(Mzc車・Mz車に搭載)
変速機 液体式 (DW22×2)
変速段 変速1段・直結4段
制動装置 電気指令式空気ブレーキ
抑速ブレーキ機関ブレーキ排気ブレーキ)、耐雪ブレーキ直通予備ブレーキ
保安装置 ATS-P, ATS-Ps,ATACS
備考 出典[1]
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キヤE193系気動車(キヤE193けいきどうしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の事業用気動車ディーゼル動車)である。East i-D(イーストアイ・ダッシュディー)の愛称をもつ。

概要

キヤ191系気動車の置き換え用として、2002年(平成14年)に新潟鐵工所で製造された。電気・軌道総合試験車の役割を持つ[2]

3両1編成が秋田総合車両センター南秋田センターに配置され、自社管内の狭軌かつ非電化区間の検測を目的として走行するが、例外として電化区間である仙石線[注 1]等の検測も実施している。

運用範囲はJR東日本管内路線に限定されず、接続する日本貨物鉄道(JR貨物)の路線[注 2]のほか、北海道旅客鉄道(JR北海道)の路線[注 3][注 4]、JR以外では青い森鉄道会津鉄道真岡鐵道わたらせ渓谷鐵道鹿島臨海鉄道山形鉄道京葉臨海鉄道[3]の各路線でも検測に使用される。えちごトキめき鉄道では日本海ひすいラインの検測を行う[4][注 5][注 6]

構造

車体はアルミニウム合金製のダブルスキン構造を持ち、耐寒耐雪仕様を採用している[2]。塗装は「清潔・厳正」をイメージした白色をベースとし、「探求・情熱」をイメージした赤色のサンレッドを配色している[2]。East i-D(イーストアイ・ダッシュディー)の愛称は、「イースト」はJR東日本(東)を表し、「アイ」は「intelligent」(知能の高い)、「integrated」(統合された)、inspection」(検査)の意味を表し、在来線気動車であることから「-D」(気動車を示すDC)を付けている[2]

先頭部はE231系近郊タイプを基本としたもので、踏切事故時の安全対策として衝撃吸収用のアルミハニカム材を配置し、後位寄りにはクラッシャブルゾーンを設置する[2]前照灯シールドビーム灯とHID灯を併用する[2]運転台は左手操作式ワンハンドルマスコンを採用する[2]

冷房装置はMz車は床上(室内)搭載の集約分散式AU405形(17.44 kW ≒ 15,000 kcal/h)を2基、Mzc車とTzc車はAU405形とAU403-G2形(13.95 kW ≒ 12,000 kcal/h)を1基ずつ搭載する[5]。乗務員室には専用のAU205形空調装置を搭載する[5]

機器類

DMF14HZB(カミンズ製N14R 連続定格出力450 PS/2,100rpm直列6気筒・電気式燃料噴射制御の直接噴射式横形(水平シリンダー形)エンジンで、Mzc・Mzの各車にそれぞれ2台搭載している[5]

補助電源は発電機駆動定速回転装置(Constant Speed Unit)に繋がれたDM112形発電機(60 kVA、2台)により三相交流440Vが出力される[5]

液体変速機

Mzc・Mzの各車に電気指令油圧制御変速機DW22をそれぞれ2台搭載する[5]。変速1段、直結4段で、補助電源用定周波数駆動装置(CSU、前述)・逆転機を内蔵する[5]抑速ブレーキとして機関排気ブレーキを有する[5]

ブレーキ

電気指令式空気ブレーキ装置を有するほか、直通予備耐雪、抑速(機関・排気)の各ブレーキを装備している[5]。Mzc車・Mz車では床下にブレーキ関係の機器が収容できないため、機器は室内に設置している[2]

故障時は他の自動ブレーキ車・電気指令式車と非常ブレーキの読替が出来るよう救援ブレーキ装置を有する[5]。また機関車による無動力回送時は常用ブレーキの読替も行える[5]

台車

ボルスタレス式空気ばね台車で、動台車は2軸駆動のDT67(Mzc車 前側)・DT67A(Mzc車 後側)・DT66(Mz車)、付随台車はTR253B(Tzc車 前側)・TR253C(Tzc車 後側)となっている[5]軸距は2,100 mm。

その他

  • 気動車向けのモニタリング装置としてDICSを搭載する[5]。同装置は後にキハE130系などにも搭載された。
  • 先頭車は双頭連結器を装備するほか、マヤ50形建築限界測定車を組み込むことも可能である。
  • 遅くとも2016年までに、先頭車正面部にカメラを取り付ける改造がなされている[6]
  • 埼京線及び仙石線で導入されている保安装置ATACSにも対応している。車上装置のIDは21。

形式および検測内容

キヤE193-1 (Mzc)
信号・通信関係
  • 地上信号機器・通信機器の測定装置を有するほか、運行上必要な保安装置・補助電源装置を有する[2]。車内には仮眠室(簡易ベッド)を1か所設置している[2]
キヤE192-1 (Mz)
電力関係
  • 測定用の下枠交差式PS96A形パンタグラフを2基備え、架線測定用の装置を有する[2]。パンタグラフは進行方向に応じて使い分ける。屋根上には架線観測ドームを備えている[2]。車内にはトイレを1か所設置している[5]
キクヤE193-1 (Tzc)
軌道関係
  • 軌道状態・騒音測定用の装置を有する。なおこの車両のみ走行用のディーゼルエンジンは搭載されていない。

編成表

 
青森仙台
東京上野
車両番号 キヤE193
(Mzc)
キヤE192
(Mz)
キクヤE193
(Tzc)
搭載機器 DE,CSU,BT DE,CSU,BT CP,BT

凡例

  • DE:駆動機関(ディーゼルエンジン、1両に2台)、CSU:補助電源装置(発動機駆動用定速回転装置、1両に2台)、CP:空気圧縮機、BT:蓄電池

脱線事故

2017年平成29年)5月22日わたらせ渓谷鐵道わたらせ渓谷線水沼駅 - 花輪駅間の踏切で、中間車のキヤE192-1が脱線する事故が起きた[7][8]。脱線したキヤE192-1は2017年(平成29年)7月30日までは高崎車両センター高崎支所(現・ぐんま車両センター)に留置されていたが、翌7月31日までに秋田総合車両センターに陸送された。また、先頭車2両であるキヤE193-1とキクヤE193-1についても同年6月21日から翌日22日に秋田総合車両センターへ配給輸送された[9][注 7]

脱線事故後の運用復帰

2017年11月7日からキヤE193-1+キクヤE193-1の2両編成で運用に復帰し、青い森鉄道線で検測を再開した[10]、同年11月24日には小海線で検測走行を実施した[11]。その後は事故前と同様に非電化区間の検測に使用され、真岡鐵道会津鉄道などの第3セクター路線の検測も行われているが、事故が発生したわたらせ渓谷鐵道への入線は見送られている。

2018年(平成30年)12月下旬には秋田総合車両センター構内で運用から離脱していたキヤE192-1を加えた3両編成の試運転が行われ、翌2019年2月14日にえちごトキめき鉄道日本海ひすいラインの検測で約1年半ぶりに3両編成での運用に復帰した[12]

この間、キヤE192-1の運用離脱によってマヤ50形を組み込んでの検測ができなくなったため、2018年3月にはディーゼル機関車牽引によるマヤ50形単独での検測が行われている。

脚注

注釈

  1. ^ 電化区間の飛び地となっており、非電化の東北本線支線(松島駅 - 高城町駅間の仙石東北ライン接続箇所)や石巻線を経由せざるを得ないため、E491系では仙石線への自走入線が不可能である。
  2. ^ この場合はJR貨物のディーゼル機関車に牽引されることが多い。
  3. ^ 青函トンネル内は防災上気動車ディーゼル機関車の自走は禁止されている(異常時に救援列車として運転される場合を除く)ため、トンネルがある海峡線を通過する際はEH800形電気機関車に牽引(甲種輸送)されながらトンネルを通過することとなっている。なお、海峡線の検測にはE926形およびマヤ35形を使用する。
  4. ^ 青函トンネルを有する海峡線区間は北海道新幹線との供用区間であるため、交流50Hz25,000Vまで昇圧、保安装置がDS-ATCとなっており、E926形でなければ自走できない。また仮に札幌都市圏の電化路線へ向かう場合でも、まず函館本線の非電化区間を走破しなければならない。これらの事情により、本形式は青函トンネルおよび北海道内各線へ自走での入線ができない。
  5. ^ 経営移管前は西日本旅客鉄道(JR西日本)北陸本線だったため、JR当時は入線していなかった。本系列が入線する現在もJR西日本キヤ141系JR西日本DEC741形が入線しており、JR2社の検測車が同じ路線に入線する珍しい事例となっている。
  6. ^ 折返しの都合であいの風とやま鉄道線泊駅まで入線。
  7. ^ 鉄道事故調査報告書によると事故路線(わたらせ渓谷鐵道わたらせ渓谷線)においては不良枕木が発生していたことで犬釘が浮いた状態での「軌間拡大」が考えられる要因での脱線により、キヤE192-1の前台車・第1軸に関しては事故後の車輪内面距離の数値が大きくなってしまっていたことが確認されている[8](「キヤE192-1の前台車・第1軸に関しての事故後の車輪内面距離の数値」については脚注・報告書のp.13を参照)。

出典

  1. ^ 交友社『鉄道ファン』2002年10月号新車ガイド「JR東日本キヤE193系 East i-D」p.70。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l 交友社『鉄道ファン』2002年10月号新車ガイド「JR東日本キヤE193系 East i-D」pp.67 - 69。
  3. ^ 【JR東+京葉臨海】"East i-D"が京葉臨海鉄道を検測”. 鉄道ホビダス(RMニュース ). ネコ・パブリッシング (2013年5月23日). 2013年6月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年8月11日閲覧。
  4. ^ キヤE193系、えちごトキめき鉄道線を検測”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2017年4月29日). 2017年8月11日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m 交友社『鉄道ファン』2002年10月号新車ガイド「JR東日本キヤE193系 East i-D」pp.69 - 71。
  6. ^ キヤE193系「East i-D」が会津鉄道へ入線 鉄道ファン、2016年6月4日(2022年12月17日閲覧)
  7. ^ “検査用車両が脱線、復旧見通し立たず わたらせ渓谷鉄道”. 上毛新聞ニュース (上毛新聞社). (2017年5月23日). オリジナルの2017年8月10日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170810162005/http://www.jomo-news.co.jp/ns/2914954762761475/news.html 2017年5月23日閲覧。 
  8. ^ a b 鉄道事故調査報告書 わたらせ渓谷鐵道株式会社 わたらせ渓谷線 花輪駅〜水沼駅間 列車脱線事故” (PDF). JTSB 運輸安全委員会 (2018年6月28日). 2018年7月30日閲覧。
  9. ^ キヤE192-1が陸送される”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2017年8月3日). 2017年8月11日閲覧。
  10. ^ キヤE193系「East i-D」が2連で青い森鉄道線を検測”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2017年11月9日). 2017年12月18日閲覧。
  11. ^ 「East i-D」が小海線を2両編成で検測”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2017年11月24日). 2017年12月18日閲覧。
  12. ^ キヤE193系「East i-D」が,えちごトキめき鉄道線を検測”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2019年2月15日). 2019年2月20日閲覧。

参考文献

  • 交友社鉄道ファン
    • 2002年10月号新車ガイド「JR東日本キヤE193系 East i-D」(東日本旅客鉄道(株)運輸車両部企画課 車両開発プロジェクト 加藤 純)
  • 「キヤE193系電気・軌道総合試験車」

関連項目


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