HTLV-Ⅰ
【概要】 ヒトTリンパ球指向性ウイルスⅠ型。成人T細胞性白血病(ATL)やその他の疾患(ある種の神経筋疾患など)の原因ウイルス。逆転写酵素を持っており、CD4陽性Tリンパ球に住み着く。感染者のおよそ1~2%が、感染後平均50年ぐらいして難治性の白血病であるATL、あるいはT細胞性リンパ腫になる。流行地は西南日本の他、西アフリカ、カリブ海諸国に局在しており、感染力が弱いとわかる。アメリカインディアンやエスキモーにもあり、民族の移動と関係があるようだ。発見者のアメリカのギャロ博士は、最初はエイズの原因と考えていた。
【詳しく】 HIVと違い血漿の中にはウイルスは大量にはいない。CD4陽性の細胞同士が直接接触した場合に感染する。したがって感染経路は、細胞成分を含んだ血液の輸血、母児感染、性行為に限られている。1986年11月以降は輸血用血液の検査をしているので、輸血感染はなくなった(陽性の供血者には告知されない)。日本のキャリアは150万人。妊婦検診の任意検査項目になった。子宮内の感染は少なく、母乳感染が主体。従ってキャリアの産婦は母乳を与えない(=断乳)か、母乳の熱処理がよい。性行為感染はコンドームで予防する。カウンセリング体制を持っておくことが必要。

HTLV-I
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/29 03:39 UTC 版)
「ヒトTリンパ好性ウイルス」の記事における「HTLV-I」の解説
HTLV-1は腫瘍ウイルスのひとつで、ウイルス保持者(キャリアと呼ぶ)は生涯の何れかの時点でATL(=adult T-cell leukemia, 成人T細胞白血病)を発症する可能性がある。 1977年に、京都大学の内山卓、高月清らによって、日本の九州出身の白血病患者には特有のT細胞性白血病が多いことから成人T細胞性白血病 (adult T-cell leukemia; ATL) という疾患概念を提唱した。その後、1981年に、京都大学の日沼頼夫らによってレトロウイルスが分離され「ATL virus (ATLV)」とした。これは1980年にアメリカ国立衛生研究所のロバート・ギャロらが菌状息肉症患者から分離した、ヒトから初めて発見されたレトロウイルスと同一のウイルスとのちに判明し、名称はHuman T-cell leukemia virus type 1 (HTLV-1) と改められた。 このウイルスは、自然には性行為または哺乳などの水平感染により感染することが多いが、出産時、母体内での垂直感染もある。母乳感染は、母親がHTLV-Iキャリアであることが判明した場合、母乳哺育を行わずに人工乳を用いることによって回避できる。人工的には、血液曝露(感染リンパ球を含んだ輸血)により感染するが、血漿成分輸血、血液製剤ではあまり感染しない。これはcell-to-cell infection(細胞から細胞へ感染)のためだといわれている。日本では現在、献血に際して抗体スクリーニングが行われており、輸血での感染のリスクは低い。また発症率は3-5%と低いため、HTLV-1キャリアであっても生涯発症しない場合もある。 感染力は極めて弱く、大量の生きたリンパ球が入らないと感染しない。そのため、輸血・授乳・性行為を除けば通常生活での家族感染や職場等での感染はほぼ無く、特別の配慮は必要無い。 文化人類学的に、HTLV-Iの塩基配列を検討することによって、人類の移動を推測する研究もなされている。夫婦・親子と感染するため、ヒト・ゲノムと同様に、一群のヒト集団(血族)の移動を示唆すると考えられる。 「ティワナク」も参照 tax遺伝子をT細胞および胸腺細胞で発現させたトランスジェニックマウスではT細胞性白血病 / リンパ腫を発症する。
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