魚類の鰭(ひれ)赤病菌 [Aeromonas hydrophila]
外見的な症状は鰭、腹側の皮膚、肛門などに発赤が現れ、病状が進むと腹部に出血斑、皮膚の壊死(えし)、白変、潰瘍をともなって内臓が壊死・崩壊して死亡する。病原菌は腸管の中だけで増殖するので、その粘膜が剥がれるカタル性腸炎をおこすことが特徴である。 予防法としては実験的に死菌ワクチンの注射で免疫効果があるとされている。治療は初期であれば抗生物質やサルファ剤などの化学療法剤が有効である。
鰭赤病菌は水中や魚の腸内に常在している条件性病原菌であるが、ときにヒトの日和見感染(創傷感染)の原因となり、また、下痢などをおこす食中毒の原因にもなるので、厚生省で食中毒細菌として指定された(1982年)。この細菌は通性嫌気性、グラム陰性の短桿菌(0.6-1.0×1-6μm)であるが、同属のせっそう病菌と違って1本の鞭毛で運動するので、運動性エロモナスともよばれ、28℃゚近、pH7.2-7.4、塩分0.5%でよく発育する。また、タンパク質、リン脂質、デンプンを分解し、哺乳類の赤血球を強く溶解(溶血)する。この細菌の病原性は数種のタンパク質分解酵素、脂質分解酵素、溶血毒素(エロリジンなど)、腸管毒素などによると考えられている。また、この細菌が産生するアモナバクチンとよばれるシデロフォア(鉄イオンと結合する物質)も知られている。
なお、コイやドジョウの"赤斑病"、コイやキンギョの"松笠病(立鱗病)"、また、1967年に東北、九州の数河川でアユが大量斃死(へいし)した"口赤病"の原因菌やアメリカでコノシロから分離された病原菌(A.sobria)なども運動性のエロモナスである。最近、アメリカではこれらの運動性エロモナスが原因になる魚病を運動性エロモナス敗血症とよぶようになった。
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