警察への追及
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「桶川ストーカー殺人事件」の記事における「警察への追及」の解説
2000年1月12日発売の『FOCUS』第3号において、「桶川女子大生刺殺『主犯』を捕まえない埼玉県警の『無気力捜査』 事件前の対応から問題」という記事が掲載され、追及の矛先は犯人グループから新たに上尾署の捜査状況に向けられた。この記事では被害者が一連の被害申告をした際の警察の対応や、警察から被害者への告訴取り下げ要請の事実が書かれていた。犯行グループの容疑に「名誉毀損」が加えられ、新たにAが同容疑で指名手配されたのはその4日後のことであった。さらにその翌週の『FOCUS』には、Aの指名手配が遅いこと、その容疑が殺人ではなく「名誉毀損」であることをさらに批判する内容が掲載される。 『FOCUS』の記事に特に強く反応したのがテレビ朝日の報道番組『ザ・スクープ』でキャスターを務めていた鳥越俊太郎であった。鳥越は『FOCUS』各バックナンバーを読み、この事件の背景には警察組織の問題があると確信するにいたる。この前年には、神奈川県警において押収品を使用した女性脅迫、警察官による痴漢や万引き、覚醒剤使用の警察官の組織的隠蔽、逮捕容疑者への暴行といった不祥事が続々と明らかになっており、さらに当年1月28日に発覚した新潟少女監禁事件でも新潟県警の不祥事が明るみに出るなど、警察のレベル低下が盛んに報道されていた。 鳥越は被害者の父親に対し、テレビ番組で事件を特集し、警察捜査について検証したい旨を記した手紙をしたため、また代理人弁護士には参考資料として自身の著書を送付し、父親への取り次ぎを要望した。そして3通目の手紙が送られたのち、著書を読んだ弁護士が父親に面会を勧め、2月22日に両者の面会が実現した。2月28日にはAPF通信の山路徹が起草した、被害者への告訴取り下げ要請の有無、被害者からの度重なる被害申告と、それを受けての上尾署の捜査の有無など10箇条からなる質問書が埼玉県警に送付された。これに対し県警は「告訴取り下げ要請の事実はない」「警察がそうした要請をすることはない」「6月13日に3人が被害者宅を訪れた事案は、弁護士から解決済みとの連絡があった。ビラ散布の名誉毀損事案については捜査を進めている最中だった」と回答。取材側がこの内容を遺族に確認すると「事実と違う」との答えであったことから、「取材した内容と回答に食い違いがあるが、どのように解釈すればよいか」と県警に再度質問書が送付された。番組放送日の3月4日昼には県警から番組スタッフルームに電話が入り、さらに午後9時に行われた電話でのやりとりでは、県警刑事部長が告訴取り下げ要請について「『告訴取り下げとは言われていないが、話の中で誤解を生じさせる発言があったので、そのように受け取った』と遺族が言っている」との主張を行い、その後さらに県警からの2回目の質問回答書が到着した。ここでは「告訴取り下げ要請の事実はない」という点は先の回答と変わらなかったものの、6月13日の事案について「弁護士から解決済みとの連絡があった」との文言が削られるなどの改変があった。 放送では遺族から取材した事件の経緯や、テレビ朝日が警察へ送付した質問書と回答内容についての検証などが行われた。番組の終盤に鳥越は「被害者が捜査中に殺されたならば重大なミスだし、捜査を怠って殺されたならばこれも重大なミス。どう転んでも上尾署の責任は免れない」などと論評を加え、警察庁に内部調査の実施を進言。さらに「一生懸命訴えているときに、これは男と女の事件だという思い込みで事に当たられることがどんなに危険かということをこの事件を通じて学ばなければならない」「この事件は民事ではなく刑事事件だったということを申し上げておきたい」とし、向後の取材継続を宣言して番組を結んだ。
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