裁判官の行為の違法性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 04:44 UTC 版)
原告側はまた、一審裁判官について 「自己の記憶に反して不本意」なものであると第一発見者が述べた検面調書の証拠採用(刑訴法第321条第1項第2号の自己矛盾供述許容規定に当らない) 「検問表」を丸暗記しただけの警官の証言の採用(刑訴法第324条の伝聞証拠禁止原則違反) 検察側すら争わなかった遠藤車とバスのすれ違い地点に関して、弁護側に抗弁する機会も与えず、無断で「現場より新潟市方面の地点」へとずらした不意打ち認定(刑訴法第308条・憲法第37条第2項に関する最高裁判例違反) 右後輪のシミが検問で見過ごされたという不合理な認定 検察側と弁護側が激しく争っていたはずの、付着物の発見場所についての判断回避 血液予備試験結果が陰性であれば血液ではない、という法医学の常識に反した認定 江守鑑定および船尾鑑定を、なんら合理的な理由を示すことなく排斥した恣意性 事故様態について、上山鑑定の「2回の轢過」という部分のみを採用し、「被害者はうつ伏せであった」との部分を対抗鑑定もなく無視した恣意性(証拠裁判主義違反) 部分的に採用した上山鑑定と矛盾する、1回のみの轢過を示す遠藤の自白の証拠採用(刑訴法第378条第4項の理由齟齬) 同じく、「右後輪に人血が付いている」との偽計を用いて引き出された自白の証拠採用(最高裁判例違反) 布目痕鑑定に関する検察側立証を撤回させ、その反面で、立証がほぼ終了していた段階での検問関係の検察側補充立証を許容した偏頗性(刑訴法第294条の訴訟指揮権の濫用) において、遠藤を何としてでも有罪に導こうと、付与された権限の趣旨に明らかに反した権限行使を行った、と主張した。 控訴審裁判官についてはこれに加えて、 伝聞証拠に過ぎない「検問表」の証拠採用 遠藤の職場で付着物が発見されていたにもかかわらず、証拠保全措置もなく遠藤自身に岩沼署までトラックを運転させた、という不合理な認定(「被告人の員面調書には、職場で付着物が発見されていないとは明記されていない」と判示した、近代裁判から逸脱した「推定有罪」の論理) において、一審裁判官と同様、故意または単なる過失に留まらない重大な過失・違法が存在する、と述べた。 庭山は、一審判決について「こういう判断をする裁判官はその職を退いてもらうほかないとさえ思う」と怒りを露わにし、阿部もまた、控訴審裁判官が「検問表」作成者の立場を独自に認定したような、証人の立場を意図的に歪める行為は「もとより証拠の解釈などという問題ではない」、「司法権・裁判権を裁判官に付託した主権者の国民に対する重大な裏切り行為である」と述べ、一審・控訴審判決は「結論を決めた行政処分のようなものであって、真の意味での裁判ではない」と批判した。庭山の他に、阿部泰隆・小田中聰樹や宗岡嗣郎などの法学者も、本判決を国賠法上違法であると指摘している。 一方、この訴訟で原告側が提出した訴状においては、桂鑑定が「箸にも棒にもかからない鑑定」と批判され、その反応時間が桂の謳うものと違っていることにも弁護側は一審から気付いていた、とされている。この点について桂は、その批判には理由の説明すらなく、また反応時間の違いに一審から気付いていたのなら、なぜその疑問を照会も証人申請もせずに放置したのか、と抗議の弁を述べている。
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