臨時特別給付金の誤振込
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 07:00 UTC 版)
2022年、阿武町は新型コロナウイルスの流行下における住民税非課税世帯への臨時特別給付金(10万円)の給付実施に際し、4月8日に463世帯に各10万円ずつの本来の給付金とは別に、463世帯分に相当する給付金4630万円を誤って1世帯の口座に誤送金した。 なお、自治体による給付金の誤送金は東京都世田谷区や大阪府寝屋川市でも発生している。 振込の依頼にあたり、担当者が463世帯分の振込依頼のリストを作成してフレキシブルディスクに記録して4月1日に銀行に提出した一方、別の新人の担当者が別途、システムを操作して紙面で振り込み依頼書を作成し、4月6日に銀行に提出した。本来この紙面の依頼書の作成や提出は不要であり、そもそも他者のチェックを受けていなかった。また、依頼書には振り込み総額と、振込先リストの先頭の1件のみが記載される仕様で、金融機関コードの順番に並んだリストの一番最初に載っていた男性の口座が振込先として記載されていたことから、463世帯分の給付金がこの男性の口座に振り込まれることとなった。4月8日に振り込み処理が行われた後、9時50分に山口銀行阿武支店から誤振込ではないかと町に問い合わせがあり、町としても即座に組戻しの依頼をしたが、振込先が山口銀行以外であったため、銀行窓口で口座名義人による手続きが必要となり、職員が男性に連絡を取って銀行窓口への同行を求め、当初は男性が組戻しに同意して職員とともに宇部市の銀行支店まで車で向かうが、支店についた直後に態度を翻し組戻しの手続きを拒否した。 同月15日、職員は山口県内に住む男性の母親を連れて男性の勤務先を訪れ返還の説得を試みるが、男性は役場の非を咎め、弁護士と話さないと対応できないと述べた。同日、町は記者会見を開き、入金のミスを公表。同月21日夕方、職員が自宅を訪問すると男性は「お金はすでに動かした。もう戻せない」と告げた。同月22日、阿武町は受け取った世帯主が返還を拒否しているため回収できていないことを発表した。同月27日、花田町長は町議会全員協議会で全額回収に向け、最善を尽くす方針を改めて示した。末若憲二議長は「現時点で議会としても打つ手が見つからない」と述べた。 同年5月12日朝、阿武町議会は臨時議会を開催した。全額の返還に加え、弁護士費用などを含めた5116万円の支払いを求める訴えを起こす議案を全会一致で可決した。これを受けて阿武町は、「不当利得の返還」を求める内容で山口地裁萩支部に提訴した。 花田町長は「当初は申し訳なかったけれども、もう完全に私は犯罪者だというふうに思います。これは大切な町民の公金であるので、ぜひ今からでもよろしいので返してもらいたいということを呼びかけたい」と述べている。 返還を拒んでいる男性について阿武町によると「2020年10月、町の空き家バンク制度を利用して県内の別の地域から移住し、県内の店で働きながら一人暮らしをしていた」という。男性はすでに勤務先を退職し、連絡が取れない状況である。男性が住む家の家主は「いい子よ。若いし男前。5月分の家賃はもらってます」などと述べている。 5月12日、阿武町は花田の署名入りで今後の対応についての記事を公表した。またその中で訴状を公開し、返還を拒否している男の住所と実名が公表された。 5月17日、誤送金した金が海外のカジノサイトで使われた可能性があることについて報道陣に問われた花田は「あれだけの大きなお金がいっぺんに消費されるということは考えにくかった。もし事実であれば許せないという気持ち。回収に向けて全力を尽くす」と述べた。 5月19日、午後8時43分に山口県警が男性を逮捕した。容疑は、阿武町が誤って4630万円を振り込んだことを知りながら口座から決済代行業者に振り込み不法に利益を得た電子計算機使用詐欺である。 5月24日、花田は記者会見し、新型コロナウイルス対策の臨時特別給付金4630万円(463世帯分)を誤って1世帯に振り込んだ問題について、約4299万円を法的に確保したと明らかにした。5月30日、花田は「当初から厳正な処分を行うことは当然のことと申し上げてきたが、ここにきて一定程度のお金の回収の目途が立った」と述べ、町は、花田の月給50%、副町長の月給の40%、出納室長の月給10%をそれぞれ3か月カットする処分方針を発表した。減給の条例案は翌6月の町議会に提出される予定。
※この「臨時特別給付金の誤振込」の解説は、「阿武町」の解説の一部です。
「臨時特別給付金の誤振込」を含む「阿武町」の記事については、「阿武町」の概要を参照ください。
- 臨時特別給付金の誤振込のページへのリンク