経営統合の経緯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/11 16:05 UTC 版)
土佐電気鉄道と高知県交通の統合は1990年代にも持ち上がったことがあったが、資金調達の目途が立たず挫折した経緯がある。 2013年(平成25年)3月、その前年の5月の土佐電気鉄道株式会社の株主総会で、竹本昭和社長と、同社会長で高知県議会議員の西岡寅八郎(自民党)が、友人の暴力団幹部の名を挙げて一部の株主を恫喝したことが発覚した。これを理由に、当時の社長と会長は共に引責辞任、西岡寅八郎は県議も辞職し、また四国銀行などの高知県を代表する企業と、高知県議会議員や暴力団が裏でつながっていた事が露呈し、高知の経済界、政界は一挙に信用を失った。 2014年(平成26年)1月に後任として元高知県理事の片岡万知雄が土佐電気鉄道社長に就任した。これを契機に再編へ向けた模索が始まり、2014年(平成26年)4月4日に高知県中央部の公共交通のあり方について検討を行う「中央地域公共交通再構築検討会」が土佐電気鉄道と高知県交通の統合も視野に協議する方針を高知県議会産業振興土木委員会で報告した。 土佐電気鉄道・高知県交通の2社合計で路線バス事業は1999年(平成11年)から2013年(平成25年)までの15年間の累積赤字が合計約90億円に達していた。そのため、国に加えて高知県と高知市が合計約43億円の補助金を支出したものの、2013年(平成25年)3月末時点で土佐電気鉄道が約14.8億円、高知県交通が約20.1億円の実質的な債務超過に陥っていた。また、借入金も土佐電気鉄道・高知県交通の2社合計で約75億円に上っていた。さらに、2007年(平成19年)の調査で、当社の運行する高知市周辺の交通手段は、自動車の割合が約59%に達するほど高い一方で、土佐電気鉄道・高知県交通の運営する路面電車と路線バスはいずれも約1%に留まっていた。 そうした利用率の比率の低さに加え、今後の人口減少を加味すると、土佐電気鉄道・高知県交通の運営する路面電車と路線バスの輸送人員は2010年(平成22年)の合計約1201万人から2035年には合計約969万人と約80%まで落ち込むとの見通しもされた。こうした状況を踏まえて今後経営を維持していくのは非常に困難であるとして、公共交通を維持していくためにも、2014年(平成26年)4月28日に「中央地域公共交通再構築検討会」が、金融機関による債権放棄を行うと共に、土佐電気鉄道と高知県交通の両社を新旧会社に分離し、自治体が出資し新会社を設立して事業を統合するのが望ましいとの報告を取りまとめた。 これを受けて、高知県と沿線市町村の協議会が開かれ、2014年(平成26年)5月27日に新会社に出資する10億円の分担割合を決定した。そこでは、同じ高知県内の土佐くろしお鉄道への支出や全国の第三セクターの事例を考慮して高知県が50%を負担することになり、残りは人口や路線の運行状況、赤字補てんの補助金実績などに応じて沿線市町村が分担することになった。また、並行して金融機関に債権放棄の承諾を求めて事業再生計画案の説明などを行い、2014年(平成26年)5月30日までに対象となる6金融機関が事業再生計画案を了承する回答をした。そして、2014年(平成26年)6月2日に開催された「中央地域公共交通再構築検討会」で、高知県と沿線12市町村の出資同意と6金融機関の債権放棄同意が報告され、土佐電気鉄道と高知県交通の株主総会や高知県と沿線12市町村の議会で経営統合や出資についての同意取り付けに進むことになった。 それを受けて、土佐電気鉄道と高知県交通に土佐電ドリームサービスを加えた3社が、2014年(平成26年)6月3日にこの新会社を設立して経営統合することについての基本合意書に調印した。 そして、2014年(平成26年)6月2日に開催された土佐電気鉄道と高知県交通の株主総会で、経営統合して第三セクターの新会社を設立する議案が承認された。また、高知県と沿線12市町村の議会での同意の取り付けも並行して進められ、2014年(平成26年)6月12日に開催された本山町議会で新会社をへの出資金を含む一般会計補正予算案を可決したのを皮切りに、同年7月14日に開催された南国市と香美市の両市と土佐町の議会で新会社をへの出資金を含む一般会計補正予算案を可決され、出資予定自治体すべての議決が揃って再編計画が正式に決定した。 そこで、2014年(平成26年)7月16日に土佐電気鉄道と高知県交通が、新会社設立委員会を設置し、初会合を開催して準備作業を本格化させた。 「公共交通は県民や利用者の関心が高く、一企業だけに収まらない」ことを理由に新社名は公募で決定することになり、2014年(平成26年)7月31日締切で公募を行い、1235点の中から「とさでん交通」を選定して同年8月13日に発表した。そして、2014年(平成26年)10月1日に「とさでん交通」が設立され、土佐電気鉄道と高知県交通に土佐電ドリームサービスを加えた3社の事業を引き継ぎ、同日運行を開始した。
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