糖原病
学名:glycogenoses
糖原病で筋症状(ミオパチー)を合併ないし主症状とするものは糖原病II, III, V, VII型です。いずれも常染色体劣性遺伝をとります。
☆糖原病II型(酸マルターゼ欠損:acid maltase deficiency)
遺伝子座は第17染色体長腕にあり、酸マルターゼをコードする遺伝子にいくつかの点変異が見いだされています。本症は発症時期により、次の3型に分類されています。
a.乳児型(infantile acid maltase deficiency: Pompe disease)
生後数カ月以内に近位筋の筋力低下、筋緊張低下、心、舌、肝肥大をみます。呼吸不全、哺乳力低下がみられ、通常2歳までに呼吸不全、あるいは心不全で死の転帰をとります。
心電図では心肥大所見と、PR間隔の短縮が特徴的所見です。筋生検による組織化学的検査と、酸マルターゼ酵素活性の測定で診断が確定します。
病理学的には神経細胞、骨格筋、心、肝、平滑筋細胞内に著明なグリコーゲンの蓄積をみます。筋生検ではリソゾームが増加し、酸フォスファターゼ活性は著明に上昇している(組織化学的に証明できます)ことが診断に役立っています。
b.小児型(childhood acid maltase deficiency)
乳児期あるいは小児期に筋力低下で気付かれます。近位筋の筋力低下が主症状で、心、肝肥大はありません。血清クレアチンキナーゼ(CK)値も軽度ですが高いので、多くの患者さんは肢帯型筋ジストロフィーの臨床診断をうけます。四肢の筋力低下はゆっくりと進行します。本症では特に呼吸筋が侵されやすいので、呼吸機能に関する注意が必要です。呼吸機能が低下した人には人工呼吸器を使用します。
筋生検では乳児型より軽症ですが、同じ所見をみます。
c.成人型(adult-onset acid maltase deficiency)
20歳以降に発症し、進行性の筋力低下をみます。臨床的には肢帯型筋ジストロフィーと同じで、心、肝肥大はありません。呼吸筋が侵され易いこと、頸屈筋の筋力低下が目立つこと、筋電図で偽ミオトニー現象をみることが本症の特徴とされています。
治療:今のところ抜本的な治療法はありません。ただし、酵素補充療法が実現化しそうですし、遺伝子治療の研究も進んでいます。
☆糖原病III型(脱分枝酵素欠損:debranching enzyme deficiency)
本症の典型例は肝腫大、成長障害、低血糖を主症状とするものですが、思春期以降に症状が改善することが多く、予後がよい疾患とされています。ただ、小児期ないし成人にかけて、進行性の筋力低下を主な症状とする人がいます。遠位筋、近位筋、いずれも侵されます。心筋の異常もありますので、心機能、呼吸機能の定期的なチェックが必要です。
血性クレアチンキナーゼ(CK)値は上昇するので、臨床的には肢帯型筋ジストロフィーの診断が下されます。筋生検では、筋線維内に著明なグリコーゲンの蓄積をみます。リソソーム酵素(酸フォスファターゼなど)の活性上昇はほとんどないことで、本症と診断できます。
☆糖原病V型(筋型ホスホリラーゼ欠損:myophosphorylase deficiency; マックアードル病: McArdle disease)
大半が15歳以下に発症し、運動中の筋痛、易疲労、筋強直を主症状とします。症状には個人差が大きいといわれています。筋痛などの症状が出現した後に少し休止して、その後に運動を続けても今度は症状がひどく出ません。これは"second wind"と呼ばれています。
激しい運動をすると筋細胞が壊れます(筋線維の壊死)。そのために筋細胞の中のミオグロビンが血中に流出します。このミオグロビンは尿に排泄されますので、ミオグロビンが多い尿(ミオグロビン尿: myoglobinuria)はコーラのような色になります。ミオグロビンの血中濃度が高くなると、ミオグロビンが腎臓の尿細管を閉塞し、急性の腎不全になります。約半数の患者は、一生のうちに一回はミオグロビン尿、腎不全を経験するといわれています。急性腎不全が強いときは透析などが必要となります。
症状は年齢とともに軽くなるといわれています。確実な治療法はありません。ただ、患者さんは自分でどの程度の運動であれば大丈夫か、学習しておられる方が多いようです。自分のペースにあった運動や仕事をする。それが一番大切です。
検査所見では、発作時に限らず、安静時でも血性クレアチンキナーゼ(CK)値は上昇しています。阻血下運動負荷試験(血圧を測る時と同じように手にマンシェットをまき圧をかけて、そこで手を握りしめる運動をくりかえします)では血性乳酸値の上昇をみないことが診断の重要なポイントとなっています。筋生検ではグリコーゲンの蓄積は軽度です。ホスホリラーゼ活性は生化学的にも、組織化学的にも欠損するか、著しく低下しています。
治療では、ビタミンB6が有効であるとの報告もあります。
☆糖原病VII型(ホスホフルクトキナーゼ欠損:phosphofructokinase deficiency: 垂井病)
本症は1965年、大阪大学名誉教授の垂井先生らにより最初に報告されました。本酵素のサブユニットMの欠損で、遺伝子座は第一染色体にあります。点変異によるスプライシングの異常といわれています。患者さんの数はあまり多くなく、マックアードル病にくらべるとずっと少ないです。
臨床症状、検査所見はV型(McArdle病)に酷似します。すなわち、激しい運動による筋痛とミオグロビン尿です。ただし本症では赤血球の酵素活性も低下するので、溶血傾向があり、高ビリルビン血症、網状赤血球の増加をみます。
糖原病で筋症状(ミオパチー)を合併ないし主症状とするものは糖原病II, III, V, VII型です。いずれも常染色体劣性遺伝をとります。
☆糖原病II型(酸マルターゼ欠損:acid maltase deficiency)
遺伝子座は第17染色体長腕にあり、酸マルターゼをコードする遺伝子にいくつかの点変異が見いだされています。本症は発症時期により、次の3型に分類されています。
a.乳児型(infantile acid maltase deficiency: Pompe disease)
生後数カ月以内に近位筋の筋力低下、筋緊張低下、心、舌、肝肥大をみます。呼吸不全、哺乳力低下がみられ、通常2歳までに呼吸不全、あるいは心不全で死の転帰をとります。
心電図では心肥大所見と、PR間隔の短縮が特徴的所見です。筋生検による組織化学的検査と、酸マルターゼ酵素活性の測定で診断が確定します。
病理学的には神経細胞、骨格筋、心、肝、平滑筋細胞内に著明なグリコーゲンの蓄積をみます。筋生検ではリソゾームが増加し、酸フォスファターゼ活性は著明に上昇している(組織化学的に証明できます)ことが診断に役立っています。
b.小児型(childhood acid maltase deficiency)
乳児期あるいは小児期に筋力低下で気付かれます。近位筋の筋力低下が主症状で、心、肝肥大はありません。血清クレアチンキナーゼ(CK)値も軽度ですが高いので、多くの患者さんは肢帯型筋ジストロフィーの臨床診断をうけます。四肢の筋力低下はゆっくりと進行します。本症では特に呼吸筋が侵されやすいので、呼吸機能に関する注意が必要です。呼吸機能が低下した人には人工呼吸器を使用します。
筋生検では乳児型より軽症ですが、同じ所見をみます。
c.成人型(adult-onset acid maltase deficiency)
20歳以降に発症し、進行性の筋力低下をみます。臨床的には肢帯型筋ジストロフィーと同じで、心、肝肥大はありません。呼吸筋が侵され易いこと、頸屈筋の筋力低下が目立つこと、筋電図で偽ミオトニー現象をみることが本症の特徴とされています。
治療:今のところ抜本的な治療法はありません。ただし、酵素補充療法が実現化しそうですし、遺伝子治療の研究も進んでいます。
☆糖原病III型(脱分枝酵素欠損:debranching enzyme deficiency)
本症の典型例は肝腫大、成長障害、低血糖を主症状とするものですが、思春期以降に症状が改善することが多く、予後がよい疾患とされています。ただ、小児期ないし成人にかけて、進行性の筋力低下を主な症状とする人がいます。遠位筋、近位筋、いずれも侵されます。心筋の異常もありますので、心機能、呼吸機能の定期的なチェックが必要です。
血性クレアチンキナーゼ(CK)値は上昇するので、臨床的には肢帯型筋ジストロフィーの診断が下されます。筋生検では、筋線維内に著明なグリコーゲンの蓄積をみます。リソソーム酵素(酸フォスファターゼなど)の活性上昇はほとんどないことで、本症と診断できます。
☆糖原病V型(筋型ホスホリラーゼ欠損:myophosphorylase deficiency; マックアードル病: McArdle disease)
大半が15歳以下に発症し、運動中の筋痛、易疲労、筋強直を主症状とします。症状には個人差が大きいといわれています。筋痛などの症状が出現した後に少し休止して、その後に運動を続けても今度は症状がひどく出ません。これは"second wind"と呼ばれています。
激しい運動をすると筋細胞が壊れます(筋線維の壊死)。そのために筋細胞の中のミオグロビンが血中に流出します。このミオグロビンは尿に排泄されますので、ミオグロビンが多い尿(ミオグロビン尿: myoglobinuria)はコーラのような色になります。ミオグロビンの血中濃度が高くなると、ミオグロビンが腎臓の尿細管を閉塞し、急性の腎不全になります。約半数の患者は、一生のうちに一回はミオグロビン尿、腎不全を経験するといわれています。急性腎不全が強いときは透析などが必要となります。
症状は年齢とともに軽くなるといわれています。確実な治療法はありません。ただ、患者さんは自分でどの程度の運動であれば大丈夫か、学習しておられる方が多いようです。自分のペースにあった運動や仕事をする。それが一番大切です。
検査所見では、発作時に限らず、安静時でも血性クレアチンキナーゼ(CK)値は上昇しています。阻血下運動負荷試験(血圧を測る時と同じように手にマンシェットをまき圧をかけて、そこで手を握りしめる運動をくりかえします)では血性乳酸値の上昇をみないことが診断の重要なポイントとなっています。筋生検ではグリコーゲンの蓄積は軽度です。ホスホリラーゼ活性は生化学的にも、組織化学的にも欠損するか、著しく低下しています。
治療では、ビタミンB6が有効であるとの報告もあります。
☆糖原病VII型(ホスホフルクトキナーゼ欠損:phosphofructokinase deficiency: 垂井病)
本症は1965年、大阪大学名誉教授の垂井先生らにより最初に報告されました。本酵素のサブユニットMの欠損で、遺伝子座は第一染色体にあります。点変異によるスプライシングの異常といわれています。患者さんの数はあまり多くなく、マックアードル病にくらべるとずっと少ないです。
臨床症状、検査所見はV型(McArdle病)に酷似します。すなわち、激しい運動による筋痛とミオグロビン尿です。ただし本症では赤血球の酵素活性も低下するので、溶血傾向があり、高ビリルビン血症、網状赤血球の増加をみます。
糖原病と同じ種類の言葉
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