米国内での反対の動き
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 02:04 UTC 版)
「環太平洋パートナーシップ協定」の記事における「米国内での反対の動き」の解説
2012年2月2日、ゼネラルモーターズ、フォード・モーター、クライスラーのアメリカ自動車大手3社で組織する米自動車貿易政策評議会 ( (American Automotive Policy Council) , AAPC) のマット・ブラント (Matt Blunt) 会長は、TPP交渉への日本の参加を拒否するよう、当時の米大統領バラク・オバマに求めていることを明らかにし、「TPP交渉に日本が参加すれば、交渉が数年にわたって長引き、おそらく実を結ぶことはないだろう」と語った。なお、これはUSTRが1月に意見を公募した結果でもある。 2013年10月1日、ローリー・ワラックは次のように伝えた(要旨)。 米国では連邦議会がTPP草案文面を見ることが許された。 そこで議員たちの間では次に掲げる4点が懸念されている。医薬品と関係する項目が大手製薬会社に有利 著作権がweb上の言論規制に利用される 食料安全基準/表示 米国ですら自由に金融政策をとれない アメリカン大学のロースクールは、米韓FTAや偽造品の取引の防止に関する協定 (ACTA) の規定を超えた知的所有権強化を懸念し、USTR代表(ロン・カーク)宛に下院議員10名による開発途上国、特にベトナムでの公衆衛生(public health)や医薬品の利用を脅かす事態を憂慮する書簡が提出されている。 ワシントン州議会の民主党の議員らがワシントン州選出の上院・下院議員宛に手紙を書き、TPPの様々な問題点を指摘した。その手紙の中で、製薬会社のための知的財産権の拡大による薬価高騰、法的拘束力無き環境・天然資源保護、航空宇宙産業の雇用へのダメージ、基本的人権へのコミットメントが無いことや労働基準のコンプライアンス欠如などについて懸念を表明した。USTRは「環境・健康その他に関係する規制には例外処置がある(よって守られる)」と主張している。だが過去のISDS特別法廷では、「政府側の義務」を(申し立てる側が)拡大解釈するのを防ぐ条項を特別法廷が無視してきた。ゆえにUSTRのいう例外処置は役に立たないだろう。そしてTPPはより多くの投資家にISDSを使わせることを可能にする。米国の自己決定権保持者は米国国民であり、外国の大企業ではない。ワシントン州議会議員らはワシントン州選出の上院・下院議員に対してTPPに反対するように呼びかけた。 2016年4月中旬、オックスファムや国境なき医師団を含めた50以上の団体が米国議会に書簡を出し、TPPに反対するよう請願した。 TPPは製薬企業に市場独占を許し新薬の価格設定にも関与する権限を強めるために、薬価が高騰する。バイオ医薬品については基本的に8年間の独占期間が与えられる。Federal Trade Commission(FTC)は、「企業のイノベーションのインセンティブとなりコストの回収にもなるように、バイオ医薬品については独占期間を設けないことが必要である」と結論づけているにもかかわらずである。 薬価を下げる効果的な方法は薬剤市場にジェネリック医薬品を流通させることである。米国ではジェネリック医薬品によって医療コストを(過去10年間で)1.5兆ドル削減することが出来ている。またジェネリック医薬品はHIV流行への対応策としての側面も持っている。 だがTPPはジェネリック医薬品の販売も制限する。薬価高騰の結果、患者が救命のための薬剤を使用することがより難しくなる。さらには製薬会社がISDSを使って政府を訴えて多額の賠償金を請求する場合もあるだろう。既にイーライリリー・アンド・カンパニーがNAFTAのISDSを行使し、2つの薬剤特許の無効化を不服としてカナダ政府を訴えて5億ドルの請求をしている。 オックスファムらの団体は、TPPが米国国内の保健のための優先事項や世界的保健政策と相容れないものであることを指摘している。 エリザベス・ウォーレン上院議員は、米国のプログレッシブ派の議員らにTPPに反対するよう呼びかけている。「TPP支持者は、TPPは国際貿易の枠組みを構築するにあたっての米国の存在感の大きさを示すものだと信じさせようとしています。しかしTPPは米国労働者を助けるような枠組みを構築するものではありません。TPPは巨大企業のための枠組みをつくるものなのです。」
※この「米国内での反対の動き」の解説は、「環太平洋パートナーシップ協定」の解説の一部です。
「米国内での反対の動き」を含む「環太平洋パートナーシップ協定」の記事については、「環太平洋パートナーシップ協定」の概要を参照ください。
- 米国内での反対の動きのページへのリンク