私鉄特急との競合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 11:18 UTC 版)
東海道新幹線の開業以来、新幹線と競合した私鉄特急としては、近畿日本鉄道(近鉄)、小田急電鉄、名古屋鉄道(名鉄)の特急があった。 私鉄特急はいずれの場合も、所要時間では新幹線と比較して大きく不利なので、割安な運賃・料金、駅の立地、車内の居住性などで対抗することになった。 近鉄特急との競合 直接の競合は、名古屋 - 大阪間で見られる。大阪側では、新大阪駅から離れたミナミに対して、乗換を必要としないエリア(難波、鶴橋など)があることなどから、近鉄特急にも優位性がある。 競合は1964年(昭和39年)の東海道新幹線開業時に始まる。当初は運賃・料金でも差が小さかったことや、所要時間の大幅な差などから利用客を新幹線に次々と奪われた。大阪万博のあった1970年(昭和45年)を除き、1970年代前半までは低迷が続き、近鉄の名阪ノンストップ特急(甲特急)は汎用車両の2両編成による運行を余儀なくされた。一時は単行車両の導入も検討されたといわれている。 しかし、1970年代後半以降は、国鉄の頻発する運賃・料金の値上げとストライキに対する嫌気から、名古屋 - 大阪間においては、特に急がない個人客を中心に、新幹線から近鉄特急への乗客移行が多く見られた。その結果、1980年代に入ると同区間の近鉄特急も3両編成、後には6両編成にまで復調したが、運用される車両は汎用車両のままであった。 その後、100系車両の投入(1985年)とJR東海の発足(1987年)による東海道新幹線の競争力強化を受けて、1988年(昭和63年)に近鉄特急も新型車両「アーバンライナー」を投入し、2000年代には更なる新型車両「アーバンライナーnext」投入や「アーバンライナー」の「アーバンライナーplus」へのリニューアルを実施、運賃面でも割引乗車券の名阪まる得きっぷを導入するなどして、主に運賃面と快適性をアピールした。 なお、伊勢志摩・奈良方面など新幹線と競合しない区間では、むしろ東海道新幹線と近鉄特急は補完関係となっている。1964年(昭和39年)の東海道新幹線開業で、近鉄は自社特急網を新幹線の培養ルートとして育成し、新幹線で大阪・京都・名古屋に到達した旅客を自社沿線の観光地へ誘致する戦略を採った。伊勢志摩方面では在来線列車「みえ」との競合も多少見られるが、JR東海の特別企画乗車券の中には、新幹線と接続する京都駅から奈良方面への移動にJR西日本の奈良線ではなく、近鉄線を指定しているものも存在する。 なお、上述した歴史的経緯の詳細は、近鉄特急史に詳しい。 小田急特急との競合 東京 - 小田原において、「はこね」などとの競合が見られる。ただ、運賃格差の大きさと箱根方面への輸送を含むというその性質の差、それに東京側ターミナルの違い(新幹線・東京駅、小田急・新宿駅)などが作用して、棲み分けがされている。 東海道新幹線を運営するJR東海とは、国鉄時代から継続して小田急から御殿場線に乗り入れて新宿 - 御殿場間を運行する「ふじさん」(2018年までは「あさぎり」。一時は運行区間を新宿 - 沼津間に拡大し、専用車両として371系・20000形RSEを開発して共同運行を行っていた)を設定するなどしており、対立関係は見られない。 名鉄特急との競合 愛知県の名古屋 - 豊橋について競合が見られるが、JR東海は並行する東海道本線において新快速などを運行しており、むしろこちらが名鉄特急との直接の競合関係にある。なお、この区間の新幹線利用を促進するために、在来線用の「名古屋-豊橋カルテットきっぷ」と併せて使うと新幹線に乗れる「カルテットきっぷ専用新幹線変更券」が販売されている。
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