研究の現状
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/03 15:10 UTC 版)
内分泌攪乱物質の研究は経済協力開発機構などを中心として各国が協力する形で進められている。日本では環境省を中心とするプロジェクト "SPEED '98" として進められ、当初内分泌攪乱物質の可能性が高いと考えられた物質から順に次のような試験で検討されてきた。 動物試験 ラットを用いた繁殖試験、子宮肥大試験(女性ホルモン様作用を検出)、ハーシュバーガー試験(前立腺肥大により男性ホルモン様作用を検出)など。 試験管内試験 ホルモン(女性ホルモン、男性ホルモン、甲状腺ホルモン)受容体への結合性試験、レポータージーン試験(ホルモン受容体による作用を調べる)、乳がん細胞試験(女性ホルモンによる増殖促進を検出)など — これらは動物での実際のホルモン様作用を検出するのでなく、その可能性があるかどうかを短時間で調べる方法である。検出感度は高いが、これで検出されたものが全て環境ホルモンとは限らない。 魚類などに対する試験 繁殖試験、試験管内試験、ビテロジェニン試験(卵黄たんぱく質ビテロジェニンによりメス化の有無を調べる)など。 これまでにノニルフェノール、4-オクチルフェノール、ビスフェノールAが魚類に対してのみホルモン様作用を示すと発表されたが、高濃度で実験的に起きることが示されたのであって、自然界で実際に起きたことが示されたわけではない。また一般に哺乳動物のホルモン受容体は魚類のものより感受性が低いことなどから、これらの物質のヒトに対する影響はまずないとも考えられている。 SPEED '98 で取り上げられた物質のリストについては一部で「すでに環境ホルモンとして確認された」との誤解を招き、批判を受けた。現在このリストについては、拙速にまとめたリストであり根拠の乏しいものもあったこと、重点的な調査研究でも明確な内分泌攪乱作用を確認することができなかったことなどのため、実質的に廃止された。 なお、貝類で見られるメスのオス化は防汚剤として船舶に使われたトリブチルスズの影響である可能性が高いといわれているが、これは貝類特有の反応とされている。 上述のフォム・サールらの「逆U字効果」についても再現されなかったとの報告が多く、現在ではほぼ否定されている。また、男性の精子濃度が低くなってきたなどの報告もいくつかあるが、統計的妥当性に異論も多く、とうてい環境ホルモンの影響を議論できるものではない。 このように、環境中の化学物質は当初考えられたような危険性を持っているとは考えにくい。極端な論者によれば、環境ホルモンは「人心を攪乱しただけだ」という主張もなされるようになっている。 しかし、以下の事例のように環境ホルモンの研究の要請は続いている。 厚生労働省は、ビスフェノールAについて、2008年7月8日に「近年、動物の胎児や産仔に対し、これまでの毒性試験では有害な影響が認められなかった量より、極めて低い用量の投与により影響が認められたことが報告されたことから、妊娠されている方(これらの方の胎児)や乳幼児がこの物質を摂取すると影響があるのではないかという懸念が持たれています」として、食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼している。ただし、この元になった国立医薬品食品衛生研究所菅野純毒性部長が厚生労働省の科学研究費補助金事業として総額約三千万円の公費助成を受けてまとめた内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)ビスフェノールAの健康影響についての報告書に、少なくとも46ヶ所もの数値集計ミスがあったことが2009年7月に報道され、現在、報告書の信頼性を含めて食品安全委員会において審議されている。 農林水産省は、とうもろこしなどの穀物につくカビが産出するカビ毒ゼアラレノンが、環境ホルモンとして危惧されているとして、2008年5月12日にリスクプロファイルシートを作成している。 蓄積状況 かつて排出された内分泌攪乱物質は水質を経由して底質や底生生物に蓄積されている状況が、「化学物質環境実態調査-化学物質と環境(年次報告書)」に示されている。:品質向上のため利用 プラスチックは石油から作られる合成樹脂だ。加工しやすく、軽くて安価なため、1950年代以降、ガラスや金属に代わって急速に普及した。新型コロナウイルスの感染対策に使われている、飛沫(ひまつ)防止のパーティション(間仕切り)やフェースシールドなどにもプラが用いられている。
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