ヒトに対する影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/05 05:57 UTC 版)
現在使用されている洗剤は、肝臓で分解できるものが多く、分解できない分は体外に排出され、蓄積性はないといわれている。しかし、その排出にかかる時間は非常に長い。ほんの数時間暴露するだけで、それを排出するのには半年から数年である。ただし、他の物質と比べると多少分解されにくい(したがって一度に多量摂取は危険である)。また、家庭用洗剤の皮膚からの浸透量はおよそ0.53%であり、ヒトが一日に摂取する界面活性剤の量(洗濯物に付着した洗剤の皮膚から吸収される量、食器に残留した洗剤、添加剤として食べ物に付着したもの等の合計)は多くとも14.5mgである。この量は最大無影響量のおよそ1000分の1に相当する(体重50kgの場合)。また催奇性や発がん性などの性質はないといわれている。しかし、経皮吸収による発ガンではない様々な症状がある。被暴露領域での湿疹、全身性の知覚異常、全身の皮膚の乾燥、多臓器の不調による体への影響。皮膚から吸収された石油系合成物が人体にどのように影響するのか全く研究がなされていない。発ガン性のみを取り出し、発ガン性がないから安全であると結論する風潮に気をつけないといけない。合成界面活性剤の人体への脅威は発ガン性などの重篤な症状ではなく、皮膚が崩壊したり、乾燥したりといった、重篤でない症状が主である。特に危険なものは神経性の症状がであり、人によっては長期間苦しむ。関節痛などもある。生死には影響を及ぼさないまでも人体への影響がないといってはならない。 界面活性剤の影響で注意が必要なのは刺激性である。種類によっては界面活性剤は長時間使用すると、人によって手湿疹など肌荒れを引きおこすことがある。これは皮膚の角質に作用し表面の滑らかさを奪うためであり、界面活性作用の強いものほど起こりやすい。一部の化粧品にも界面活性剤が(主に成分を混ぜるための乳化剤、または浸透剤として)用いられるため、長期間・多量の使用はかえって肌を害しやすいともいえる。このため、活性剤を使用しない無添加製品などの開発が進んでいる(そのほうが人体によいのかについては不明)。ただし、化粧品に用いられる界面活性剤はもちろん刺激性の低いものを使用しているので台所用洗剤(英: Dishwashing liquid)と同列に扱うことはできない(上述)。 なお現在、人工の界面活性剤と天然物に関して、人体への影響に大きな差がある。石油系合成界面活性剤は安く強い乳化作用をもち、多量に生産されている。一方で、石油をつかわない洗剤は非常に高価であるため、普及していない。石鹸は石油系でないものが人体によいのだが、生産とコストの問題から、市場規模は大きくならない。 強い洗剤は、脂質を落としタンパク質を損傷し天然保湿因子を損失させ、肌の角質層のバリア機能を損なわせ皮膚がはがれることを促し、乾燥、刺激、皮膚の硬さ、痒みなどを起こす。一方で1990年代より 優しい界面活性剤を用いた洗剤が開発され、このような損傷は減少しており、またしかし、まだ皮膚の乾燥を引き起こす可能性がある。ステアリン酸やパルミチン酸のような飽和長鎖脂肪酸を入れることで、バリア機能の改善に役立つ。
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