直角カルダン駆動方式とは? わかりやすく解説

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直角カルダン駆動方式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/13 14:52 UTC 版)

直角カルダン駆動方式
赤い部分がカルダンジョイント
乗り越しカルダン駆動台車
MF67形 パリメトロ

直角カルダン駆動方式(ちょっかくカルダンくどうほうしき)は、電車モーター駆動方式のうち、カルダン駆動方式の一種。

概要

一般的な形式

台車枠の中に、車軸と直角にモーターを台車枠に固定する。ここから自動車同様のカルダン・ジョイントプロペラシャフトと、スパイラル・ベベルギア(ねじり傘歯車)を介して車軸を駆動する。

メリットは比較的構造が簡単なこと、狭軌であっても主電動機の容積が比較的大きく取れること、特にハイポイドギヤを用いるとギヤ比選定に自由度が高いこと、等。それに対して、デメリットはスパイラル・ベベルギアやハイポイドギヤの噛み合わせ整備に手間が掛かる、台車の全長が他のカルダン駆動方式に比べて長くなってしまう、プロペラシャフトの分とギヤケースの剛性確保のため平行カルダンよりも重量が大きい、トルク駆動の場合駆動軸左右車輪に輪重差が生じる[要出典]、などがある。

同種の発想は古くから存在していたが、アメリカの路面電車会社各社が共同開発した高性能路面電車PCCカー1935年)の駆動システムに用いられて以来、広まった。

ドルトムント方式

直角カルダン駆動方式の一種で、台車枠の中で、前後2軸をベベルギアを用いて、途中にスプラインジョイントを設けたプロペラシャフトで連結し、その途中に主電動機を搭載し、プロペラシャフトに歯車で回転を伝達する方式。自動車四輪駆動方式(ミッドシップ4WD)とよく似た構造となる[1]

1921年ドイツドルトムントで試作・発表されたため、ドルトムント・カルダン・ドライブと呼ばれる。

この方式は、本来の構造では2個の主電動機を1つの駆動軸に接続するため、電動機の共振による騒音の発生や電動機の破壊の問題があり、やがて米国の重電メーカーが一般化させた上記の形式が世界的にも直角カルダン駆動方式の主流を占める。

しかしドルトムント方式は、両軸式の主電動機を用いて、台車あたりの主電動機を1個とする、いわゆる1トラック1モーター方式をとることが出来るため、この用途として後年に生き残ることになった。

そのほか、東洋電機製造が実用化したツインディスク継手を用いた直角カルダン駆動方式も存在する。

日本での事例

多摩都市モノレール1000系電車の動力台車、インバータ駆動式でTD継手式直角カルダンが採用されている。(各部の詳しい説明は画像をクリックしてください)

日本では、1951年2月に東芝製の試作直角カルダン駆動台車を、東芝が所有していた旧鉄道省モハ41071戦災復旧のモハ1048号に装架し、小田急電鉄の線路を借用して走行テストしたのが最初である(この試験運転は一般に「相武台実験」と呼ばれ、日本で初めてカルダン駆動方式のテストが行われた例と言われている)。

一般営業用車両では、1952年国鉄の試作電気式気動車キハ44000形に45kW形が初採用され、1953年には東武鉄道の特急電車5700系5720番台に搭載された(故障が相次いだため、後に吊り掛け駆動方式に改造)。本格的な採用は1954年以降で、東急5000系電車がその代表例である。

また、ドルトムント方式は1台車1主電動機方式の駆動系として東急6000系電車(B編成)にて採用されたが、同系列自体が試作レベルで終わったため、普及せずに終わった。

路面電車ではPCCカーの影響を受け、大阪市交通局3000形3001形、名古屋市交通局などで弾性車輪と組み合わせて多く用いられた。

1950年代、前述の東急や小田急、相模鉄道阪神電気鉄道名古屋市営地下鉄100形など初期のカルダン駆動電車に広く用いられ、特に阪神では標準軌の鉄道としては異例である同方式の採用となった。

しかしながら、1950年代末期以降、新型継ぎ手の開発と、主電動機の小型化が進んだことから、整備性の良い平行カルダン駆動方式への移行が進んで廃れたが、相鉄だけは21世紀に突入した年の2001年まで直角カルダン駆動の車両を製作し続け[注 1]JR東日本E231系電車に準じた車両である10000系電車の導入の際にTD平行カルダン駆動方式へ移行した。

なお、新交通システムモノレールトロリーバスに関しては、車体構造等の関係から現在も直角カルダン方式が採用されている。

新幹線においては、951系の現車走行試験において大きなばね下質量の影響で著大輪重が発生し速度向上が阻害された時、その解決策として弾性車輪の採用が検討された、それまで車輪側面についていたブレーキディスクの熱が弾性車輪に悪影響を与えるため、ブレーキディスクをモーターと駆動装置を結ぶ駆動軸上に配置した直角カルダン試作台車DT9014が製作されたが台上回転試験を行っただけで放棄された(弾性車輪の寿命上の問題といわれている)。

日本初のVVVFインバータ制御式電車である熊本市交通局8200形電車は、1台車1モーターの直角カルダン方式である。

日本製の超低床電車である広島電鉄5100形電車はWN継手式直角カルダンである。また、沖縄都市モノレール1000形電車ほかのインバータ駆動式跨座型モノレールはTD継手式直角カルダンである。

鉄道研究者や鉄道ファンの中には、車体装架カルダン駆動方式を広義の「直角カルダン」の一種と捉える考え方もある。

脚注

注釈

  1. ^ 2001年に増備された9000系電車が最後である。相鉄で用いられている直角カルダン駆動装置は、形態的にはウェスティングハウス式に近いが、プロペラシャフトをドルトムント方式のようなスプライン入りとし、歯車にはスパイラルベベルギヤを用いている。

出典

  1. ^ 鉄道ピクトリアル」2009年10月(通算824)号 特集「吊掛電車」

関連項目


直角カルダン駆動方式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/11 04:17 UTC 版)

カルダン駆動方式」の記事における「直角カルダン駆動方式」の解説

かさ歯車ハイポイドギヤもしくはウォームギア単独あるいははすば歯車との組み合わせにより、駆動軸レール方向に平行となるように主電動機台車に装したもの歯車整備性難があること、駆動装置そのもの重量容積大きいこと、軸距長くなり台車重量増大しやすいことなどが欠点として挙げられる。もっとも、電機子軸方向長さ車輪のバックゲージに制約されないため、狭軌向けであっても比較大出力の主電動機選択できることに加え電動機前後電機子軸を出すことで容易に1台車2軸駆動構成とすることができ、また、スパイラル・ベベルギア利用することで平行カルダン比較して格段に大きな静粛性得られるというメリットがある。日本においては、特に初期狭軌私鉄向け高性能電車路面電車多用された。もっとも、大きな力のかかる歯車全般中でも特にスパイラル・ベベルギア表面耐摩耗性内部靱性両立加えきわめて高精度切削処理が要求されるため、材料選定加工が非常に難しく日本最初にこの方式に挑んだ東芝では材料となる合金鋼製造表面処理手を焼いた。そのため、それらのノウハウ確立され且つ高精度な加工を可能とするアメリカ製専用工具導入され1954年まで、充分実用に耐える製品製造できなかったという。日本では東芝の他、日立製作所製造行っており、後者では大口納入先一つであった相模鉄道技術陣がこの方式に固執した事もあって、その製造21世紀入りインバータ駆動三相誘導電動機組み合わせるまで続けられた。近年広島電鉄5100形電車のように、左右車輪別々に駆動する必要のある超低床路面電車において、1台車前後車輪左右別々に、かつ1台車あたり2基の主電動機駆動する手段としてこの方式を採用するケース存在する

※この「直角カルダン駆動方式」の解説は、「カルダン駆動方式」の解説の一部です。
「直角カルダン駆動方式」を含む「カルダン駆動方式」の記事については、「カルダン駆動方式」の概要を参照ください。

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