発生の傾向
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/16 23:09 UTC 版)
Eスポは弱く電離したものを含めると年間を通じて発生しているが、VHF電波を反射できるほど電子密度が極度に高くなるEスポに関しては、季節的には5月中旬から8月上旬に発生頻度が高くなる。日間変化としては、時間的に午前の11時から12時と、午後の17時から18時頃が最も出現頻度が高い。また数日続けて同じ時刻近辺にEスポが出現しやすい傾向があるが、発生頻度は不規則である。 Eスポの発生頻度に地域的偏りがありその原因は不明であるが、地球上では日本付近において最も出現率が高いことが知られている。通常の電離層(D, E, F層)と比べると電子密度が極めて高いのがEスポの特徴で上空約100kmで雲のような状態で分布し高速で移動する。 夜間に発生するVHF帯の異常伝播は、E層で「FAI(Field-aligned Irregularities)」と呼ばれる電離層構造ができるという説もある。FAIとは、Es層内プラズマ中の不安定な構造が地磁気の磁力線に沿った鉛直方向に対して電子密度が高くなる濃淡構造をいう。FAIは磁力線に直行の方向から入射する電波を強く後方散乱し、夏の夜半前にしばしば現れるといわれている。 電離層(D, E, F層)の電子密度の変化は11年周期の太陽活動との相関が高いことが知られているが、Eスポでは出現頻度や最大電子密度と太陽活動との関係はない。流星を起源とする金属イオンによって高い電子密度が保たれるため流星群の出現と相関があるとする説や、逆に流星群の出現とは相関が無いとする説や、ある特定の気圧配置において出現しやすいとする説もあったが、近代ではウィンドシアー理論(このリンクは、誤った理解による対流圏内現象をリンクしていますが、本現象の説明理論ではありません。出典した論文の文献は、全て削除されていました。)によるスポラディックE層の生成過程説が有力視されていた。しかしながらウィンドシアー理論による高層大気の風が集積する場所にスポラディックE層が発生するとは限らないことから、ウィンドシアー理論だけではスポラディックE層の生成過程を説明できていない。(ただしこれは1980年代の古い文献です。) アマチュア無線家の間では、雲がどんよりした蒸し暑い日に起きやすい、とする科学的根拠を伴わない噂話しや、50MHz帯の異常伝播の傾向について、戦後間もなくの非常に古い時代の栗山晴二氏の唱えた「キングソロモンの法則」が知られていた。この名称は、栗山のコールサインであるJ2KS, JA1KSにちなむものである。「日本列島を温暖前線が縦断した時、かつ雲が垂れ込めていると発生しやすい」というものである。 ただし気象現象は対流圏内(およそ上空10km程度まで)の活動であるにもかかわらず、なぜE層の高さ(上空100kmの電離層、熱圏)にまで影響するのかといった因果関係を説明できる科学的根拠等は記載が無く、科学的立証の無い無線雑誌の記事が噂として広がって定着した。これは、経験則として長く根強く支持される経過を辿ったが、あくまで一個人の仮説である。(科学的立証思考手順を伴わないため、学説では無かった。) 一方、VHF帯の電波は対流圏内に形成されるラジオダクト(電波伝播)と呼ばれる経路が形成されることで異常伝播が起こることも知られている。 VHF電波の異常伝播は、Eスポ、流星エコー、対流圏内ラジオダクトによるものが知られている。 Eスポによる最長の伝播距離は1500Km以内になる。 一方、1500kmを越えるVHFの異常伝播は複数のEスポの発生によるマルチホップ仮説が無線雑誌に書かれたが、観測データ提示の無い仮説に留まっていた。 電離層の電子密度の高くなる現象は、発達したF層、中緯度の赤いオーロラ、赤道上空高高度の電離構造(プラズマバブル)などが知られている。
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