発生の根本的な原因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/30 13:14 UTC 版)
「エルニーニョ・南方振動」の記事における「発生の根本的な原因」の解説
海水温や気圧の異常を引き起こす根本的な原因を突き止めようと研究が行われているが、根本的な原因は未だに詳しく解明されていない。しかし、一部分については解明されてきている。 まずエルニーニョの場合、海水温の異常が発生する数か月前に東から西に流れる赤道海流(北赤道海流と南赤道海流)が弱まったり反転したりする現象が観測されている。これは、何らかの原因によって海流に変化が起きたことによるものと考えられている。また反転の後、西太平洋の低緯度地方(フィリピン付近など)で急激に西風が強まる現象(西風バースト)が観測されたことがあるがこれは赤道海流の変化によって海水温が変化し、これが大気に伝わり気圧の変動を起こしていく過程で発生するものと考えられている。しかし、赤道海流と西風バーストはどちらが原因でどちらが結果であると断定できるものではない。これは両者が海洋大気相互作用現象で密接に関係しているためであり、解明が非常に困難である。 また最近の研究によれば、月の潮汐力の変化と関連があるのではないかとの指摘がなされている。これは月の潮汐力が熱塩循環にも影響を与えるためではないかと言われている。モデル等においてもENSOやそれに伴う気象変化を高精度で再現して原因を究明する動きがあるが、いずれにしても根本的な原因は確定していないのが現状である。 他方、地球温暖化とエルニーニョ・ラニーニャの関連性については科学的にも社会的にも関心は高い。気候モデルによるIPCCの予測、気象庁をはじめとした各研究機関の予測のいずれにおいても、平均的に太平洋赤道域東部の海水温はわずかに上昇し、エルニーニョのような海水温異常が強まるという予測が多い。また一般的な認識においても、地球温暖化によってエルニーニョが増えたり強まったりするという考えが多い。ただ、気候モデルによる予測では「エルニーニョが強まる・増えるだろう」という大体のことは分かっても「強まる・増える」と断定できるほど確実なレベルには達していない。エルニーニョの原因がはっきりと解明されていないことや(解像度が低いため)モデルが再現できない小規模な気象がまだあるということ、エルニーニョなどの現象に対してモデルの再現性がまだよくないことなどが原因として挙げられている。また研究者の間でも、過去数十年間の太平洋赤道域東部の海水温の変化傾向は地球温暖化が関係しているという意見と自然変動であるという意見に分かれている。結論として、今の段階ではモデルの予測に基づいても「エルニーニョが強まる・増える」とは断定できず地球温暖化との関連については「関連している可能性がある」程度にとどまっている。 なお「エルニーニョは地球温暖化によって起こる」という考えも見受けられるが、推測の域を出ない。
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