発生の機構
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/20 21:40 UTC 版)
鉄道車両の車輪は円筒形ではなく円錐形のような勾配を持った形状となっており、車輪のフランジ側(内側)の直径は大きく、外側の直径は小さくなっている。このような勾配を車輪踏面勾配と呼ぶ。また、超低床LRVのような車両を除き、鉄道車両では左右の車輪は車軸により固定され繋がる構造となっている。この車輪と車軸の一組を輪軸と呼ぶ。これらの特徴により、輪軸が直線の軌道を転がるときは、輪軸がレールの片側に寄った場合に定位置に戻る復元力を得、曲線を転がるときは自動車のようなステアリング操作無しにレールに沿って曲がる機能を発揮する。このような働きを輪軸の自己操舵機能と呼ぶ。しかし、踏面勾配による自己操舵機能は輪軸に左右動を引き起こす原因ともなる。すなわち、輪軸がどちらかのレールに偏った場合、それを戻そうとする復元力の働きにより、中立位置を超えて反対側のレールに偏り、さらにまた逆向きの復元力が作用するといった繰り返し運動が発生することとなる。動きとしては、左右変位とヨーイング回転の振動が連成して現れるものとなり、上から見て蛇がくねって進むような運動をするため蛇行動と呼ばれる。 実際の鉄道車両では、輪軸は単体ではなく車体-台車-輪軸という連結構造となっている。このように輪軸は台車に対して拘束されているため、通常の走行速度内では、蛇行動は台車・車体の質量や輪軸に対するサスペンションにより吸収・抑制されている。しかし車両の走行速度を上げていくと、蛇行動を発生させる輪軸を動かす力である車輪・レール間のクリープ力などの影響が、輪軸を拘束しようとする力を上回り蛇行動が発生するようになる。さらに、輪軸、台車、車体は、ばねやダンパー、すり板のような剛性要素、減衰要素、摩擦要素などによって連結されているため、それぞれの動きは相互に影響を及ぼす。このため、輪軸単体での蛇行動のみならず、台車の蛇行動、車体の蛇行動も発生する。蛇行動が発生する箇所に応じて、輪軸蛇行動、台車蛇行動、車体蛇行動と呼ばれる。車両の諸元、装備により蛇行動に対する安定性は異なり、高速走行を行う車両では蛇行動の安定性に配慮して設計される。この蛇行動に対する安定性のことを走行安定性とも呼ぶ。
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