町政をめぐる騒動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/13 05:42 UTC 版)
2019年11月12日、新井祥子町議は「2015年1月に町長室で黒岩信忠町長と性行為をした」という内容の電子書籍(飯塚玲児著)を配信した上で、同月29日に町長にいきなりキスされ、床に押し倒されたなどと記者会見を開き、「町に住む弱い女性の立場をもっと尊いものにするため、町長を告発することにした。最終的には町長の辞任を目指す」と主張した。黒岩町長は事実無根だとし、新井及び執筆した飯塚を名誉毀損で告訴した(なお、新井側は強制猥褻罪などで被害を警察には届け出ておらず、後に黒岩から批判されている)。翌12月2日の町議会本会議において、新井は本の内容を引用して町長を「町長として欠格がある」と非難し、町長に対する不信任決議案を提出したが賛成は新井と中沢康治町議のみであり反対多数で否決された。逆にこの時の新井の発言が「議会の品位を傷つけた」とし、懲罰動議が発議され、新井は失職した。また、同調した中沢にも不信任決議案に際し、電子書籍の内容に触れたことを問題視され、6日に懲罰動議にて謝罪に追い込まれた。 黒岩町長は同月16日に、さらに新井、飯塚、中沢に対する総額4400万円の慰謝料と、記事の削除、謝罪広告掲載などを求め前橋地裁に民事訴訟を提訴した。 一方、新井は9日に山本一太群馬県知事に処分の取り消しを求める審決申請書を提出し、翌2020年2月に県による除名処分の一時停止措置が取られ議席が回復した。その後、8月6日に新井の訴えが認められ正式に除名処分が取り消され、完全に復職した。 これを受けて除名処分に賛成した町議らは「新井祥子の解職を求める会」を組織し、9月15日から解職請求(リコール)運動を開始した。署名集めを担う受任者として220人以上の町民が活動に参加し、収集期限である10月15日を待たず、27日時点でリコール発議の必要数である約1795人を上回る3292人分の署名を集め、新井の解職の是非を問う住民投票が11月16日告示、12月6日投開票で決まった。解職理由には一連の町長に対する批判やメディアで批判を続けていることのみならず、電子書籍において草津温泉で活躍する多くの女性を貶める発言をしていたことや、居住実態が無かった嫌疑も盛り込まれた(後に住所を偽った件で前橋地検に告発が行われる)。新井は住民投票が決まったことについて「活動をする町議は経営者が多く、従業員である町民は疑問を感じていても依頼を断れない」と批判したが、12月6日の投開票では賛成が有効投票の9割以上を占める2542票で反対の208票を大きく上回り、新井は即日失職した。当日有権者数5283人(男2645人、女2638人)中、投票率は53.66%(男51.76%、女55.57%)だった。地元紙の上毛新聞は、「発端となった新井氏の告白の真偽が不明な中、町全体を巻き込んだ騒動に対し、多くの町民が早期収束を望んだ結果と言える」「議会での新井氏の発言には疑義もあり、不信感を募らせた町民は多い。一連の騒動が議会の停滞につながったのも事実だ」と評した一方で、解職請求を主導したのが黒岩卓議長ら町議たちだったことにリコールの本来の趣旨を違えているのではないかとして疑問も呈した。 失職した新井は「町の民主主義のため、理不尽と闘いながら黒岩町政に反対を訴えていく」と述べ、中沢と「明るい草津を創る会」を立ち上げて政治活動を続ける意向を示し、合わせて県選挙管理委員会にリコール無効の申し立てを行ったが退けられた。この決定に対し、新井は東京高裁に対して、町議らがリコールを主導したのは制度の乱用として、県選挙管理委員会の裁決取り消しを求める訴訟を起こしたが、2021年6月9日に高裁は解職請求を行うための署名運動を禁じる規定はないとし、この請求を棄却する判決を下した。新井は上告したが同年11月22日に最高裁は原告の訴えを退ける判決を下し、失職が確定した。 一方、町議会ではインターネット上などで「セカンドレイプの町」などと誹謗中傷を受けたとして、2021年1月18日に草津温泉のイメージを回復するための対策を求める請願を賛成多数で採択した。なお、この件に関する黒岩が起こした刑事訴訟および民事訴訟については2020年12月時点で決着していない(新井は性被害に対して刑事・民事共に起こしておらず、上記1月18日に採択された請願でもこのような新井の行動が問題視されている)。
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