特徴的食材
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/08 08:07 UTC 版)
穀物以外の食材では海産物や野菜が多く、鳥を奉げる神社は少なくないが、獣肉を奉げる神社は限られる。『延喜式』第七巻祗七に記載された大嘗祭の品目によると、神酒の他に鰒、烏賊、いりこ、魚腊(いおのきたい)、胎貝、堅魚(かつお)、興理(より)、刀魚(といお)、鮭などの海産物、海菜(もは)、昆布(ひろめ)、海松(みる)、紫菜(のり)などの海藻類、梨子、橘子、柿、柚、栗などの果実、未豆子(ふきまめ)、大豆、小豆などの豆類、搗き餅、捻り餅、勾り餅などの餅類、おこし米などが奉げられたと記録されている。第五巻祗五の斎宮の品目には、米、栗、白酒、黒酒、油などに加え鰒、堅魚、烏賊、螺(さざえ)、年魚(あゆ)、鮒などの記録があり、この内、堅魚、年魚、鮒については、煮た堅魚、塩煮の年魚、醤煮の鮒など、調理方法の記録もある。 禁葷食を求められる神饌がある一方、賀茂別雷神社ではニンニクが奉げられ、獣肉を奉げる例としては、銀鏡神社で行われている「オニエ」と呼ばれる、その年に狩猟された猪の頭部を奉納する儀式で奉げられる神饌がある。あるいは、護国神社などの実在した人物を祀る神社では、ビールや煙草といった既製品が奉げられる場合もあり、これらもまた神饌である。 その土地の特産品や古事にあやかった神饌が奉げられることも多く、それらは現代に受け継がれ、その土地独特の神事として形を残している場合がある。例として奈良県の牛蒡喰神事、島根県の茄子神事、滋賀県の胡瓜祭り、京都府の山葵祭り、イタドリ祭り、福島県の生姜祭り、秋田県の牛尾菜祭り、長野県のウド祭り、東京都のスモモ祭りなどがある。 豊かな実りを表す食材の他にも、福井県三方郡美浜町にある彌美神社、青森県三戸郡南部町にある諏訪神社、島根県松江市にある美保神社などでは野老(ところ)とよばれる、日常的には食べない食物が奉げられている。彌美神社では飢饉が起きた際にこれを食べて飢えを凌げたことを感謝し奉げられているとされるが、それに対して美保神社では、江戸の元禄期に書かれた『本朝食鑑』に「白髭が多く、多寿の祝いとして正月の蓬菜飾りに用いていた」という記述があるため、縁起物として神饌に納められたのではないか、と考え、諏訪神社では薬として用いられる風習があったため神饌として奉げられていたのではないか、と同じ食材に対して三者三様の解釈がなされている。
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