災害派遣の種類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 08:05 UTC 版)
通常の災害派遣(自衛隊法第83条2項本文) 災害発生により発生した被害については、まず自治体(消防・警察などを含む)や海上保安庁が対応することとなるが、十分な対応が困難な場合、(市町村の要求をうけた)都道府県知事、海上保安庁長官や管区海上保安本部長、空港事務所長からの要請に基づいて自衛隊の部隊等が派遣される。災害派遣の場合の行動命令の略号は「行災命」。 特に大規模な震災で多人数の派遣が必要とみなされた(防衛大臣による大規模震災の指定)場合には、防衛大臣より「大規模震災災害派遣命令」が発される。東日本大震災に際しては、3月11日18時に発令されている。 自主派遣(自衛隊法第83条2項但し書き) 緊急に人命救助が必要な場合で都道府県知事等と連絡が取れない場合(通信の途絶や現地の混乱など)や災害発生時に関係機関への情報提供を行う場合など一定の要件を満たす場合は要請がなくても部隊が派遣されることがあり、このような場合は「自主派遣」と呼ばれる。自主派遣された場合でも、後日に都道府県知事等からの正式な要請文書を受け取る場合が多く、完全に「自主派遣」とされることはまれである。近年のテロ警戒活動において、警戒地域内または周辺で災害派遣の垂れ幕を付けた自衛隊車両が多数待機している場合がある。テロ攻撃という事態に対し迅速な政治判断ができない場合に備えて自主派遣でもって出動するためである。現在では被害状況の把握としてファスト・フォース(後述)が派遣要請前に情報を収集する際の根拠ともなっている。 具体的な自主派遣の例として、2020年1月31日および同年3月18日、中国で発生した新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の流行に伴い、感染拡大の防止が特に緊急を要し、「都道府県知事等の要請を待ついとまがない」と認められることから、「新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により中国より帰国した邦人等の救援を目的として、河野太郎防衛大臣(当時)が自衛隊に対して自主派遣を命令・実施することを発表した。具体的には防衛省とPFI契約を行っているフェリー「はくおう」を一時停留場所として提供するほか、宿泊施設の提供を実施した。 他の例として2016年10月の鳥取県中部地震では災害派遣の要請が出される前に航空機が先行して被災地を調査している。また2010年横浜でのAPEC首脳会議ではテロ警戒として自主派遣の措置が取られたとされるが、要請があった事実は確認されていない。 近傍派遣(自衛隊法第83条3項) 部隊や自衛隊の施設の近傍で災害が発生している場合に部隊等の長が部隊を派遣することがあり「近傍派遣」とよばれる。この活動は近所づきあいの範囲とされ都道府県知事等の要請は必要としない。1995年(平成7年)1月17日午前5時46分に発生した阪神・淡路大震災において。様々な不備により国・自治体レベルでの救助活動が遅れ、自治体首長からの自衛隊への災害派遣要請がなされず、各駐屯地の自衛隊が待機せざるを得なかった中、被災地に近い第36普通科連隊が近傍派遣を活用する事により、最初期(午前6時台)に出動することができた。 地震防災派遣(自衛隊法第83条の2) 詳細は「地震防災派遣」を参照 地震災害に関する警戒宣言が出された際に地震災害警戒本部長の要請により部隊等が派遣されるもので、1978年(昭和53年)の大規模地震対策特別措置法の制定に関連して追加された。この条文での派遣実績はない。地震防災派遣の場合の行動命令の略号は「行震命」。 原子力災害派遣(自衛隊法第83条の3) 詳細は「原子力災害派遣」を参照 原子力緊急事態宣言が出された際、原子力災害対策本部長の要請により部隊等が派遣されるもので、東海村JCO臨界事故を受けて1999年(平成11年)に制定された原子力災害対策特別措置法に関連して追加された。2011年東北地方太平洋沖地震で発生した、福島第一原子力発電所事故対応のため、2011年3月11日、原子力災害対策特別措置法に基づく要請により派遣された。原子力災害派遣の場合の行動命令は「行原命」。2011年6月24日の閣議にて派遣手当が自衛隊イラク派遣手当を超える日額4万2千円と定められた なお、有事における災害派遣の扱いは不透明であったが、2004年(平成16年)国民保護法の成立に伴い国民保護等派遣(自衛隊法第77条の4)として分離された。また、冷戦終結後の1990年代以降は、国外へ医療・航空部隊等が派遣されているが、これは国際緊急援助隊の派遣に関する法律に規定されている「国際緊急援助隊」であり、別のものである。
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