漢字
『南総里見八犬伝』肇輯巻之5第9回 伏姫は夏の伏日(=夏の末の最も暑い頃)に誕生したので、父里見義実が伏姫と名づけたのだったが、「伏」の字は人にして犬に従うのであり、伏姫は生まれながらに、犬の八房と夫婦となる運命に定まっていたのだった〔*また、子犬の八房を育てた狸は別名「玉面」と言い、これを訓読みすれば「たまつら」で、里見家を呪う玉梓(たまづさ)と似通い、不吉なことであった〕。
『南総里見八犬伝』第2輯巻之2第14回 八房が銃弾に倒れ(*→〔穴〕1)、伏姫が自害して、数珠の8つの玉が八方に飛び去った。「八房」の2文字は分解して配列すれば、一尸八方「ひとりのしかばねはっぽう(にいたる)」となり、伏姫の死が、やがて関東の諸地方からの八犬士の出現をもたらすことを暗示していた。
『和漢三才図会』巻第69・大日本国「参河」 松平清康公(徳川家康公の祖父)が妙大寺村の龍海院(岡崎市)に宿った夜、夢に「是」の字が掌に書かれているのを見た。これを判じさせると、「是=『日の下の人』である。徳化を天下に及ぼすことになるでしょう」と言われた。清康公は日に日に威を増し、家康公に至って天下一統の主将となった。これによって、俗にこの寺を「是(ぜ)の字寺」と称する。
『太平記』巻3「主上御夢の事」 後醍醐帝は、鎌倉幕府を倒すべく挙兵したが、十分な軍勢が集まらなかった。思い悩みつつまどろんだ帝は、「常磐木の南枝のもとに臣下が列座し、そこに自らが坐すべき玉座が設けられている」との霊夢を見る。帝は「木に南と書けば、楠という字である」と夢解きをし、「このあたりに、『楠』と言う武士がいるか?」と尋ねる。召しに応じて楠正成が参上し、帝への忠誠を誓う。
*2つの漢字を、1文字に見間違える→〔読み間違い〕3の棒の手紙(日本の現代伝説『幸福のEメール』)。
*「八」と「人」を合わせると、「火」になる→〔火〕6の『酉陽雑俎』巻2-82。
『白楽天』(能) 白楽天が日本にやって来て、「唐土では詩を作って遊ぶ。日本で翫(もてあそ)ぶ『歌』とは、いかなるものか?」と、漁翁(=住吉明神の化身)に問う。漁翁は、「天竺の霊文(=経典の陀羅尼)を唐土の詩賦とし、唐土の詩賦を日本の歌とする。天竺・唐土・日本と、三国を和(やわ)らげ来たるゆえ、大いにやわらぐる歌と書いて『大和歌(やまとうた)』というのである」と説く→〔知恵比べ〕。
『義経千本桜』2段目「渡海屋」 北条の家来・相模五郎主従が船問屋へ来て「船を貸せ」と命じ、さらに「義経の縁者などをかくまっているのではないか」と、刀に手をかけて踏み込もうとする。主の渡海屋銀平が押しとどめ、「刀脇差は人を斬るものではなく、身を守る道具。武士の『武』の字は、『戈(ほこ)を止(とどむ)る』と書くそうにござります」と説く。相模五郎主従は銀平に斬りかかるが、逆に投げ飛ばされて逃げて行く→〔共謀〕1。
★4.形が類似した漢字。
『今昔物語集』巻28-29 博士の紀長谷雄は、陰陽師から「某月某日に物忌みせよ」と注意されたが、それを忘れた。その日、長谷雄邸では怪事が起こった(*→〔見間違い〕2)。人々は、「博士なのに『忌』と『忘』を間違え、『(物)忌ノ日』が『忘ル日』になった」と言った。
*「太」と「犬」→〔書き間違い〕1aの『ドラえもん』(藤子・F・不二雄)「ライター芝居」。
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