清算・決済制度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/30 09:56 UTC 版)
概要 平成2年の商品取引所法改正で、それまで、取引所における取引の決済は「商品取引所を経て」行うこととされ、法律上クリアリングハウス制度が存在しなかったのが、取引所の選択により、クリアリングハウス方式で清算を行うことができるよう規定が整備された。また、平成16年の商品取引所法の一部改正により、それまでの①「商品取引所を経て」行う決済方式、②インハウス型クリアリングハウスに加え、取引所横断的な決済が可能となるアウトハウス型クリアリングハウスも導入することができるよう制度改正が行われた。また、商品先物取引の心臓部は重要性から清算・決済制度にあるといえる。 クリアリングハウス制度導入以前 日本の取引所は売り手と買い手の決済を仲介するだけで、取引の相手方にはならない。また取引の清算過程で清算の執行を直接、保証しない。また、日本の商品取引所には当業者(メーカーや商社など取引所に上場されている商品の生産や売買等を業としている事業者)など自ら直接取引に参加する「一般会員」と投資家や当業者から注文を受けて取引を執行する「受託会員」の区別はあるが、この「受託会員」の中に「清算会員」と「非清算会員」の区別は設けられておらず、すべての受託会員が取引の清算において、直接契約の当事者になる形を取っていた。 取引所を経由して清算を行う型 取引により生じた債権・債務関係は、値洗いで損勘定になった会員の集団が債務者になり、益勘定になった会員の集団が債権者(ネットで売り(買い)の会員が益勘定の場合は、ネットで買い(売り)の会員が損勘定)となって成立している。これを、個々の取引所が仲介して、損勘定となった会員から損金を徴収し、益勘定となった会員へ益金を交付する。受託会員については、自己と委託を区分して差金の徴収及び交付を行う。商品市場における取引の債権・債務が益勘定になった会員の集団と損勘定になった会員の集団との間の関係になるため、1会員の債務不履行(違約)が違約玉の反対建玉を有する会員集団全員の損失につながりうる。会員は他の会員の信用力による決済リスクを有することになる。また、一般論ではあるが、国際的には、クリアリングハウスを介さない相対取引よりもクリアリングハウス制度を活用する取引のほうが決済リスクが低い分、安心して取引が出来ると評価されている[要出典]。 違約時には違約会員の自己、委託玉ともに反対売買により手仕舞いする(取引所業務規程等)。違約会員の建玉(違約玉)のうち片建玉の部分については、原則として、違約玉に対当する反対玉(被違約玉)を有する会員に按分して反対売買により手仕舞いがされる。違約処理に伴い、被違約玉に係る益金の支払いが取引所が必要と認める期間留保されることとなっている。 違約処理のための財源 違約の際の財源として、取引所は会員に会員信認金(法第38条第1項)、取引証拠金(法第79条第1項)、特別担保金(法第84条の2第1項)を預託させている。違約発生に伴う損失は、違約会員の会員信認金、違約会員の取引証拠金、違約会員の特別担保金、違約担保積立金(損失補填準備金として取引所の剰余金から積立)、当該商品市場における違約会員以外の会員の特別担保金の順で填補される。 清算参加者の資格構成 我が国においては、法律上も取引所の規程上も、清算参加者について特別の資格要件を設けておらず、全ての取引所の会員が清算に参加していた。(清算に参加する会員の財務上の要件) 一般会員 商品市場ごとに定款で定められた額以上の純資産があること。 商品取引員 受託業務を行う商品市場ごとに省令で定められた一定額を合算した額以上の純資産額があること。なお、「純資産」は、「総資産-総負債」として計算され、固定資産(簿価)が含まれる。 純資産が資本金を上回っていること及び流動比率(流動資産/流動負債)が100%を超えていること。 神戸生絲取引所では、平成2年の違約者の債務不履行に対し違約損失補塡交付金制度により取引員自身が損失を負担せずに取引所が被違約者に損失の補填をした事例もあるがこの制度は例外であった。 クリアリングハウス制度導入以後 平成15年6月より東京工業品取引所自身がインハウス型クリアリングハウスとなり、株式会社日本商品清算機構がアウトハウス型クリアリングハウスとして、平成17年4月に主務大臣の許可を得、同年5月から業務を開始して以降、国内の商品取引所全ての取引に係る清算・決済を行っていた。2020年6月現在では、現存する日本の商品取引所(東京商品取引所・大阪堂島商品取引所)で成立した取引にかかる清算・決済は、東京商品取引所の子会社である日本商品清算機構において行われている(※日本商品清算機構は、2020年7月27日に、金融系取引の清算・決済を行ってきた日本証券クリアリング機構に吸収合併された)。 商品取引清算機関(取引所または外部のクリアリングハウス)が差金の徴収及び交付を行う点では前記と同様であるが、各会員の取引により生じた債権又は債務の相手方となって決済の履行を保証することにより、会員の違約リスクが他の会員に直接及ばない。取引に関する債権・債務の関係が商品取引清算機関と違約会員との関係になるため、違約が生じた場合においては商品取引清算機関の損失になりうる。会員は商品取引清算機関の信用力で決済リスクを判断できる。国際的にも、相対取引よりも決済リスクが低いという意味で決済の安心面の観点からクリアリングハウス制度での清算は先物取引を行う上での判断材料とされている。 平成15年6月より、東京工業品取引所においては、違約対策財源として、証拠金、清算預託金、違約担保積立金等に加え新たに、50億円の違約対策保険契約により違約処理の財源を確保していた。 株式会社日本商品清算機構における決済不履行時の対応 アウトハウス型クリアリングハウスである株式会社日本商品清算機構は、指定商品市場毎に次の順序により損失の補填を行う。 当該清算参加者が当該指定商品市場について預託している自己分の取引証拠金、当該清算参加者が当該指定商品市場について預託している清算預託金、当該清算参加者が当該指定商品市場について預託しているその他の預託金等、当該清算参加者が返還請求権を有する当該指定商品市場分の委託分の取引証拠金 当該清算参加者が会員として指定商品市場毎に指定市場開設者に預託している信認金 株式会社日本商品清算機構の剰余金のうちから積み立てた「決済不履行積立金」 指定商品市場毎に第三者による損失補償又は損失保証により受領する金銭 損失を補填し得ない指定商品市場に係る他の清算参加者が株式会社日本商品清算機構に預託している清算預託金 損失を補填し得ない指定商品市場に係る他の清算参加者の負担 株式会社日本商品清算機構は、決済不履行が発生した場合においても決済を円滑に履行する必要があることから、指定決済銀行との間で「緊急融資枠」に関する契約を締結している。なお、当該「緊急融資枠」の額は、過去の清算実績を勘案して設定している。
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