植生・生産
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 17:24 UTC 版)
キヌアの穂は品種により、赤、黄、紫、白など様々な色を呈し、直径約2mmの種子を一つの房に250-500個程度つける。脱穀した種子は白く扁平な円形をしており、食料となる。冷涼少雨な気候でもよく育つ。 キヌアの草丈は1-2メートルと高く分枝は少ない。主幹は半木質で葉は波状のものから歯状のものまで多様な形態で幅が広く先端は狭くなり鋭い歯状である。花は伸び出した草質の円錐花序で花被片は5枚である。現在のキヌアの栽培種には栽培地に応じて「高原型」「塩地型」「谷型」「海岸型」の4つの品種群がある。高原型はアンデス山脈の標高3000メートル以上のアルティプラノで栽培される。塩地型はボリビア南西部のウユニ塩原周辺で栽培される種、谷型はクスコより北の谷間で栽培されるもの、海岸型はチリの中部(中緯度)海岸地帯で栽培されている。キヌアは数千年の栽培の歴史があるが、植物毒であるサポニンを種子の表面に含み、種子の脱落性がある等、野生種の特徴を保持している。他の栽培作物では人類による数千年の栽培の過程で利用に適するよう人為選択されるが、キヌアにおけるサポニンの保持は、キヌアが栽培される土地では植生が乏しく、鳥獣による食害を防ぐためではないかと推察されている。 ボリビアでは栽培特性から、ふたつに分類される。 高地型(Altiplanoタイプ) 年間降水量約 400mm程 度の比較的降水量の多い地域でジャガイモやムギ類と輪作して栽培される。 塩地型(Salarタイプ) 年間降水量約 200mm 程度のウユニ塩湖畔の降水量が少ない地域において単作される。 しかし、近年のブームによりボリビアでは栽培面積の拡大や作付けをしない期間の短縮によって、土壌劣化の進行による栽培の持続性が懸念されている。 キヌアはコロンビアからボリビアにかけてのアンデス山脈一帯が原産と考えられており、5千-7千年前頃から野生種の利用が始まり、3千-4千年前頃には栽培が始まっていた。キヌアの栽培地域では栽培されていない野生のキヌア(Chenopodium quinoa var. melanospermum)が自生しており、原種あるいは栽培種の子孫と考えられている。海抜ゼロメートル地帯から標高4000メートルの半乾燥地帯(温帯ステップ気候)で生育するが、アンデス地方では主に標高2500メートル以上の地域で栽培されている。ウユニ塩原北方の標高約4000メートルのチパヤ(英語版)では降水量が少なく土壌の塩分濃度が高いため他の作物が育たず、キヌアが唯一の作物となっている。 日本の国際農林水産業研究センターの分析によると、遺伝子的には多様で、旱魃や塩分濃度が高い環境でも育つ系統があり、品種改良も可能である。 インカ文明ではキヌアはトウモロコシと同様に貴重な作物であり、「チソヤ・ママ」(「穀物の母」)と称され神聖な作物と見なされていた。季節の初めにはインカ皇帝が金の鋤で種まきの儀式を行なっていた。スペインのインカ帝国征服後、スペイン人はインカ文明を払拭して現地人を同化させるために、キヌアの栽培を禁止した。他のラテンアメリカ原産のトウモロコシ、ジャガイモ、インゲンマメなどは、スペイン人の交易により世界に広まり、全世界の主要作物となったが、キヌアはそれほど急速に広まらなかった。 2014年の生産量は、ペルーが114,725トン、ボリビアが74,382トン、エクアドルが3711トンであった。南米を含め100カ国以上で栽培されている。 痩せた土地でも栽培ができるため、モンゴルなどの気候条件が厳しく主に遊牧のみが行われてきた地域などでも栽培が試みられている[リンク切れ]。 1990年代以降の降雨量の減少のためにそれまで栽培されていたラッカセイが育たなくなったインドのアナンタプラム県ではキヌアの栽培が試みられている。 葉 花 蕾の状態 種子の状態 水を取り拡大した種子
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