植生・昆虫
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 05:37 UTC 版)
利根川の植生についても、上流と中・下流域では様相が異なる。上流では山岳地帯が広がるが尾瀬や浅間山北麓では高山植物が多く自生、尾瀬や日光戦場ヶ原ではミズゴケやツルコケモモなどからなる高層湿原が存在する。また標高1,600m以上の高山地帯では常緑針葉樹林であるオオシラビソやコメツガ、標高700 - 800m付近ではブナやミズナラなどの樹木が自生している。しかし渡良瀬川源流部の足尾山地については、足尾銅山の煙害(後述)によって植生が高度に破壊されている。 一方中流では常緑広葉樹林であるヤブツバキ・アカガシ・シイなどが従来自生していたが田地・宅地開発などによりその自生数は減少し、スギ・ヒノキなどの植林された樹木が多い。また河川敷ではヨシやススキのほか、スギナ・イヌタデ・カナムグラ・カヤツリグサなどが自生。下流部になるとコガマ・マコモなど多様な植物が自生する。ヨシの群落は中流から下流にかけての湖沼・湿地帯に見られるが特に渡良瀬遊水地には大規模なヨシ群落があり、日本で唯一当地で自生しているハタケテンツキを始めミズアオイ・フジバカマなど絶滅危惧種が自生している。利根川流域に存在する植物種の総数は2002年の国土交通省調査により666種が確認されている。藻類では水質が貧栄養である上流部では少なく、中流・下流に入るとケイソウ類が主に分布。特に中流部ではチャヅツケイソウが広範囲に分布している。霞ヶ浦では水質の悪化により夏季にはミクロキスティスなどの異常繁茂によるアオコの大発生が問題化した。外来種としては中流にはセイタカアワダチソウやブタクサが多く繁茂。下流にはアレチウリ、オオフサモ、ボタンウキクサが繁茂しているがこの三種は在来固有種への影響が大きいことから特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)により環境省から特定外来生物に指定され、河川管理者である国土交通省などが駆除を行っている。 昆虫については同じ2002年調査で節足動物であるクモを含めて975種が生息しており、内訳は甲虫類が397種、チョウ類が170種、カメムシ類が125種、クモ類が84種の順となっている。分布については上流部の高山地帯にミヤマシロチョウ・ミヤマモンキチョウ・エルタテハやオゼイトトンボ・オオルリボシヤンマなどの山地・高山に分布する昆虫が生息している。一方中流部・下流部では一般的に見られる昆虫類のほか、湿地に限局的に生息するヒヌマイトトンボ・ベニイトトンボなどの種が見られる。生息する昆虫類の中には国蝶であるオオムラサキのほかムスジイトトンボなどの貴重な種が存在する。
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