根の進化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 09:06 UTC 版)
リンボク類の根(写真下)は、「葉痕」と「根痕」の類似性から、機能的に幹(上)と同じものだったと考えられる。これらの標本は別の種のものである。 根は植物にとって、主に2つの点で重要である。まず一つは、地盤への固着性をもたらすことである。もう一つ、さらに重要なのは、土から水と栄養分をもたらすことである。根は植物を高くしっかりと生長させる。 根の出現はまた、地球的なスケールで影響を与えた。土壌をかき乱すことと、(窒化物やリン酸などの養分を吸い上げることによって[要出典])酸性化を促進することで、気候に対してCO2の引き出しを促進し、気象に多大な関連がある。この影響は大量絶滅を引き起こすほどの重大なものだったかもしれない。 しかし、根がいつどのように最初に進化したのだろうか? 根に似た筋の圧縮化石が、後期シルル紀から産出しているが、本体の化石は、初期の植物は根を欠いていることを示している。多くは、まっすぐな軸の一方で地面の上や下に広がるつるを持っていたり、あちこちに穴のあいた葉状体を持っていたりした。いくつかのものは、光合成をせず気孔の無い地下枝を持ってさえいた。根と、特殊化された枝の違いは、発生学的なものである。真の根は、茎とは別の発生の軌跡をたどる。さらに、根は分岐のパターンでも異なる。また根冠を持っている。シルル紀~デボン紀の、リニア Rhynia やホルネオフィトン Horneophytonは、生理学的に根と等しいものを持っていたが、根冠をもち、葉を付けない真の根は後になるまで現れなかった。根はあまり化石として残らないので、われわれの根の起源の進化についての知識は貧弱なものである。 仮根は、根の機能を部分的に実現する小さな構造であり、通常1細胞の大きさである。非常に早くに進化した可能性がある。おそらく、植物が陸上へ進出する前にも存在した。仮根は陸上植物の姉妹群であるシャジクモ類にも認められている。仮根が進化したのは1度だけではないと考えられている。たとえば地衣類の偽根(rhizine)は類似の役割を実行する。チューブワームなどの動物さえ、根と類似の構造を持っている。 より進化した構造は、ライニーチャートに見られる。また他の比較的初期のデボン紀の化石にも、根と似ており、同様な機能の構造がある。リニア植物は細かい仮根を持っていた。またライニーチャートのトリメロフィトン類と草本の小葉植物は、土の中に数㎝突き刺さる根に似た構造を持っていた。しかしながら、これらの化石のどれも、近代的な根に備わる特徴のすべては持っていなかった。根と根に似た構造は、デボン紀の間に一般的になり、より深く刺さるようになってきた。木本の小葉植物は、中期デボン紀のアイフェリアンとジベティアンには、長さ20 cmの根を生やしていた。前裸子植物も、それに続くフラニアンには、1 mの深さまで根を伸ばした。真の裸子植物とシダ類のジゴプテリス類 Zygopteridaceaeは、Famennian期のあいだに浅い根のシステムを形成した。 小葉植物の担根体は、根の働きにやや近い。これらは茎と相同で、そして葉に相同の組織で細根の働きをするものを備えている。似た構造が、現生の小葉植物のミズニラ類に見られる。またこのことは、小葉植物と、その他の植物で、少なくとも根が2回独立に進化した証拠と考えられている。 維管束系は、根のある植物には不可欠である。なぜなら、非光合成組織である根は、糖分の供給を必要とするからである。また維管束系は水と養分を根から他の組織へ輸送するためにも必要である。これらの植物はシルル紀の、専用の根組織を持っていない先祖より少し進化していた。しかしながら、平たく倒れている軸は、明らかに、今日のコケ植物の仮根と似たものに発達したのを見ることができる。 中期デボン紀から後期デボン紀までには、ほとんどの植物のグループが独立に何らかの形で根の組織を発展させていた。根が大きくなると、大きな木を支えることができ、土は深くまで風化する。この深い風化は、前述のCO2の枯渇の影響を与えただけではなくて、菌類と動物の陸上進出の環境を用意した。 根は今日、物理的な限界にまで発達した。それらは、地下水面に届くまで何メートルも地中に伸びる[要出典]。最も細い根は直径40 μmになり、これはちょっとでも細くなると物理的に水を通せなくなる細さである。これに対し、発見された根の化石で早期のものは、直径3 mm~700 μm弱である。もっとも、化石生成過程により、われわれが観察することのできる太さはどうしても制限される。
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