根の機能
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/23 06:41 UTC 版)
根はふつう地中にあり、水やそこに含まれる窒素塩 (硝酸塩など) やカリウム、カルシウム、リン酸などの無機養分を吸収し、維管束の木部を通して植物体全体に送る (木部輸送)。根は分枝することで表面積を広げ、このような水や無機養分を吸収している。ライムギ (イネ科) の場合、根の表面積は地上部のシュート系 (茎と葉) の表面積の40倍に達すると試算されている。根は効率的な無機栄養吸収のための応答を示し、例えば硝酸塩が多い場所では根はよく分枝し、またその細胞は効率よく硝酸塩を吸収できるような遺伝子発現を行う。根毛や菌根菌の存在は根の表面積を広げ、根の吸収効率を高めている。 土壌粒子はふつう負に帯電しているため、硝酸、リン酸、硫酸などの陰イオンは土壌粒子には結合しない。そのためこれらの無機栄養は容易に土壌溶液に溶脱し、根によって吸収される。一方、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど陽イオンは土壌粒子に結合しており、容易には溶脱しない。根は呼吸によって土壌中に二酸化炭素を放出し、土壌溶液を酸性化する。その結果水素イオン (H+) が供給される。この水素イオンが土壌粒子を中和、結合していた陽イオンが土壌溶液に溶脱し、根が吸収する。この過程は陽イオン交換 (cation exchange) とよばれる。 根の表面で吸収された無機養分を含む水溶液は、細胞壁内や細胞間隙など原形質外の通路 (アポプラスト経路) や原形質を通る通路 (シンプラスト経路) を通って維管束の木部へ輸送される。根では、維管束は内皮に囲まれているため、吸収された水溶液が木部に輸送される際には必ず内皮を通る。内皮細胞どうしの接着部には疎水性物質であるスベリンが蓄積してカスパリー線が形成され、さらに細胞膜がカスパリー線に密着している。そのため、アポプラスト経路で輸送されてきた水溶液も、内皮では細胞壁を通ることはできず、必ず内皮細胞の原形質を通らなければならない。内皮細胞は木部へ送られる物質の選別を行い、必要な物質を通し、不必要な物質は透過しない。また、内皮細胞は中心柱から外側へ物質が逆流することを防いでいる。さらに、皮層の最外層にカスパリー線をもつ外皮が形成されることもある (上記)。 根は植物ホルモンであるサイトカイニンの主な生成場所であり、他にもオーキシンやジベレリン、ストリゴラクトンなどの植物ホルモンを生成する。サイトカイニンは細胞分裂を制御し、オーキシンは側根や不定根の形成を促進する。またオーキシンは高濃度では細胞伸長を抑制するが、この伸長抑制が根の重力屈性に関わっていると考えられている。エチレンによって根や根毛形成が促進され、ブラシノステロイドは低濃度で根の成長促進、高濃度で根の成長阻害をする。ストリゴラクトンは菌根菌を根に誘因するが、ストリゴラクトンを感知して宿主の根に寄生する寄生植物も知られている。
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