敷金礼金
「敷金礼金」とは・「敷金礼金」の意味
「敷金礼金」は、賃貸物件を借りる時に必要な初期費用の一部である。相場は地域によって異なり、中には「敷金礼金無し」という物件もある。敷金と礼金は、支払うタイミングは同じだが、その性質は全く異なるものである。敷金は、大家に対して預ける、いわゆる「担保」のようなイメージだ。家賃滞納があった場合や、退去時の清算金への充当などに使われる。もし、清算後に敷金が残った場合は、入居者に返還される仕組みになっている。一般的には、通常の仕様に伴って発生した損耗に関しては、入居者ではなく貸主の負担となる。しかし、故意・重過失による汚損や破損、毀損などがあった場合は、原状回復費用として借りている側に支払う責任が課せられる。退去時にこのような費用が発生した場合、その費用は敷金として預けている金額の中から差し引かれるシステムだ。
賃貸借契約の中で、ルームクリーニング費用が借主負担となっているケースも少なくない。この場合は、退去時にきれいに掃除をしても、敷金から所定のルームクリーニング費用が差し引かれる。また、賃貸借契約時の特約には、退去時に敷金から差し引かれる費用について記載されているため、退去時に思わぬトラブルに発展しないよう、契約前に隅々まで確認しておく作業が欠かせない。なお、退去時の原状回復費用が、敷金の費用を超えてしまった場合は、借主が追加分を支払う必要がある。
敷金に関する基準や、原状回復に対する基準には、これまで曖昧な部分も多かった。そのため、故意や過失とは無関係な範囲についても、入居者に請求されることもあり、退去時にトラブルになるケースも少なくなかったのである。しかし、そういった現状を改善するために、2020年に民法が改正され、賃貸の契約に関してもルールの見直しがされた。その中には「原状回復」に関する内容も盛り込まれており、今まで曖昧だった基準が明確になったのである。この改正によって、政府が公表しているガイドラインに定めるもの以外は、原則返金可能になった。ガイドラインの中では、賃貸人負担部分や賃借人負担部分の線引きや、退去時のルールが明確にされており、敷金のトラブルを未然に防ぐ法整備として、大きな注目を集めている。
一方、礼金は、物件を借りる際に、貸主、つまり大家に対して払う謝礼のことを指す。かつて、下宿に預ける際に、「子供を宜しくお願いします」という気持ちを込めて、親が謝礼として渡していたことがルーツと言われている。当時はまだ賃貸物件の数自体が少なく、感謝の気持ちとして渡していたのだ。時代は流れ、賃貸物件の数は増えて、大家と入居者との間に、かつてのような密接な関係性はそれほど見られなくなった。しかし、この礼金というシステムは消えることなく、単に慣習として残されていたのである。そのため、法律で定めされているものでもない。そして、この礼金は退去時に返還されることはないのだ。この、返還されるかどうかという点が、敷金との最大の違いでもある。
なお、関西や九州の一部地域では、敷金礼金方式ではなく、その代わりに「保証金」を支払うケースも多い。保証金は、敷金と同じような意味、目的で使われるものである。しかし、「敷引き」がある場合は注意が必要だ。退去時に清算する際に、敷引きとして定められている金額に関しては、返金されないという特徴がある。この慣習は、他の地域から来る借主にとっては分かりにくいとして、次第に敷金礼金方式を取り入れているところも増えてきている。ただ、全くなくなったわけではなく、一部ではこの保証金方式を採用している物件もあるため、契約時にはその内容を確認しておく必要がある。
「敷金礼金」の熟語・言い回し
「敷金礼金」を使ったフレーズとしては、以下のようなものが挙げられる。「敷金礼金相場」とは
「敷金礼金相場」とは、敷金礼金の相場のことを指す。単身者用のマンションやアパートの場合、地域によっても異なるが、敷金、礼金それぞれ家賃1~2ヶ月分程度が相場となっている。最も多いのは、敷金礼金それぞれ1ヶ月分ずつで、両方合わせて2か月分になるパターンである。しかし一方で、戸建てやファミリー層向けにつくられている広い物件などでは、3ヶ月分以上と、敷金礼金が高額になる傾向がある。また、ペットと一緒に暮らす場合も注意が必要だ。たとえペット可の物件であっても、敷金礼金を高く設定しているケースも少なくない。
「敷金礼金無し」とは
「敷金礼金無し」とは、敷金礼金を無料としている賃貸物件のことである。貸主としては、なるべく早く空室を埋めたいため、「敷金礼金無し」としている物件もあるのだ。引っ越し費用や新生活の準備など、住み始める時期には多くのお金が必要になってくるため、敷金礼金無しの物件は入居者にとってもメリットがある。「敷金礼金ゼロ」「ゼロゼロ物件」と言われることもあるが、「敷金礼金無し」と同じ意味で使われている。
また、何らかの事情があり、敷金礼金を無しとしているケースもある。具体的なものとしては、以下のものが考えられる。
・日当たりが悪い場合
・築年数が古い場合
・最低限の原状回復工事しか行っていない場合
・最寄りの駅から離れている場合
・騒音問題がある場合
内見時には、敷金礼金無しとしている理由を確認しておくと安心だ。また、賃貸物件の場合、部屋を借りたい人が増えるハイシーズンになると敷金礼金が必要な物件が増え、反対に、借り手が見つかりにくい時期になると敷金礼金無しの物件が増えるという傾向もある。
ただし、敷金礼金無しとする代わりに、家賃が高く設定されていることもある。長期間入居する場合は、トータル的に考えた時に、敷金礼金がある物件の方が安く済む場合も出てくるのだ。入居期間を踏まえた上で、負担する費用をしっかり計算しておくことが大切だ。敷金礼金無しの物件を探す場合は、まわりの家賃相場とも比較しつつ、見極めていく作業が欠かせないだろう。
資金礼金無しの物件は、初期費用が安く済むものの、退去時のクリーニング費用や、短期解約の違約金など、特約として様々な条件が定められていることも多い。敷金がないため、退去時にはなんらかの費用を支払う必要が出てくるのだ。その費用を少しでも抑えるためには、次のようなポイントが挙げられる。
・賃貸契約書は特約など細かい内容までしっかり確認する
・入居時には、荷物を搬入する前に汚れやキズ、不具合などを記録する
・入居時に作成した記録のコピーを、管理会社や大家に送る
・汚れやキズができるだけ付かないよう、部屋を綺麗に使う
・退去立ち会い時に、負担個所を明確にする
・退去費用は明細まで確認する
なお、敷金礼金のどちらかだけ「無し」としているケースもある。「敷金無し」は、退去時に敷金の清算トラブルが起こらないよう、敷金の設定は行わず、礼金のみで募集している物件のことだ。この場合は、退去時のクリーニング費用など、別の名目で費用が必要になるケースが多いため、あらかじめ不動産会社に詳細を確認しておくことが重要だ。借主負担分は退去時に請求されるケースもあるが、回収できないリスクを考えて、契約時に請求している物件も少なくない。また、「礼金なし」としている物件もある。これは、礼金をなくし、敷金のみで募集している物件のことである。礼金をなくすことで初期費用を安くし、空室をなくしたいという貸主の意図が反映されているのだ。
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