意見と学説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/12 14:40 UTC 版)
「ニューサウスグリーンランド」の記事における「意見と学説」の解説
W・J・ミルズに拠れば、モレルはその同時代人の間で「南洋の大ウソつき」という評判があった。ミルズはモレルの最東端から西への航海を「不可能 ...信じられないほど速く、その航路の大半で海岸線より南を通っている」と言っている。ミルズはその説明を探して、モレルの証言は航海から9年経って書かれており、船の日誌をみることが出来なかった可能性があり、そのために自分の叙述を維持する目的で、「もっともらしく見えるよう詳細を発明しなければならないと考えた」かもしれないと示唆している。 ヒュー・ロバート・ミルは、ニューサウスグリーンランドが存在しないことが決定的に証明される以前の1905年に、モレルの証言に叙述される出来事の幾つかについてその全くのばかばかしさに触れ、モレルの大失敗と、他の者の経験を自分の話に取り込む習慣の故に、彼の主張は全て証明されないものとして扱うべきと記していた。それでもミルは「ある男が無知で、自慢好きで、曖昧であったとしても、しっかりした仕事をしていた」ことは認めていた。カナダの地理学者ポール・シンプソン=ハウスリーはもっと同情的なアプローチをしている。モレルの証言の多くについては疑問が多いが、西行きの速度が速いとしても不可能ではないと言っている。ミルが疑問にしているモレルが進んだと主張するウェッデル海の最南端にしても、その1か月前にさらに4度南まで航海したジェイムズ・ウェッデルのことえお考えれば、全く可能性を否定できないとも考えている。 モレルの正当性を弁護する方向に傾く別の人物は作家のルパート・グールドであり、1929年に出版した作品集『エニグマ』(謎)に、ニューサウスグリーンランドに関する長い随筆を書いている。ニューサウスグリーンランドを見たというのは単純にモレルによる創作であるという仮定が否定されている。その主たる根拠は、モレルの500ページに及ぶ証言で、この発見にはほとんどページが割かれていないことである。グールドは、「もしモレルが南極探検家として不当な評価を得たいと願うならば、それほど厚い本の目立たない片隅でそのことをでっち上げた後、「正当化できる断片」を埋めるよりもそれについてましな方法に訴えることができると考えるだろう」と記している。南極については比較的少ないページしか使われておらず、モレルの発見に関する証言は簡潔で、完全に事実にのみに終始し、自分よりも2年前のジョンソン船長にその功績を与えている。 グールドはモレルが見たものが実際にグレアムランドの東海岸、いわゆる「フォイン海岸」だった可能性についても論じている。ただしそこは、モレルがニューサウスグリーンランドを見た場所よりも経度で14度西である。グールドは、半島の東海岸がモレルの叙述した海岸線と酷似していると主張して、その説を補強している。この説は、モレルがおそらく適切な航海観測に必要な時計を持っていなかったために、船の位置を誤って計算したという推測を行っている。モレルはその証言で、「様々な航法や数学の装置が欠けていた」が、その叙述の別の部分で、標準的なものの例外として推測航法による計算が行われていたことを明らかにしている。如何なる状況にあったとしても、経度の14度は大きな数字であり、フォイン海岸までの約350マイル (560 km) という距離は、船の位置が正確に記録されるサウスサンドイッチ諸島から10日間の航海で行くには遠すぎるように見える。そうであるとしても、グールドは「他の証拠」によってモレルの見たものはフォイン海岸であることを示していると主張している。 フィルヒナーがニューサウスグリーンランドが見えたのは蜃気楼で説明できるとした見解は、シンプソン=ハウスリーが支持している。モレルとその乗組員は上位蜃気楼を見たのだと仮定している。上位蜃気楼の1つの形態はファタ・モルガナ(イタリア語)とも呼ばれ、遠くにある海岸線あるいは氷の縁を垂直にも水平にも歪め、高い崖があるようにもまた高い山頂と谷が有るようにも見させることがある。シャクルトンはその遠征記録『南』の中で、1915年8月20日に観察した蜃気楼について触れており、それは偶然にもその遠征船「エンデュアランス」が漂流してニューサウスグリーンランドの記録された位置に近づいていたときだった。「遠くの叢氷が聳える障害のような崖になり、その麓にある青い湖や水の線に反射している。これら崖の上に沿って密な感覚で東洋の外観のある大きな白と金色の都市が遠くの氷山を示している。 ...線が上がっては降下し、震え、消えてはまた現れ、終わりなく変形している。」と書いていた。
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