後発医薬品の品質問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 16:01 UTC 版)
前述のとおり、後発医薬品はかつては「ゾロ薬」と呼ばれ、「安かろう悪かろう」とされていた時代もあった。しかし院内調剤が主流であった1990年代までは、薬価差益が大きく病院や診療所にとって、利益を増すため採用されていた。 詳細は「診療報酬#薬価差益」を参照 その後は医薬分業が進んだこと、後発医薬品の品質が向上かつ安定してきたこと、また先に述べた公的健康保険制度の医療費削減という大きな課題から、日本国政府主導の『骨太の方針』により、後発医薬品を大々的に推進するようになった。 後発医薬品は有効成分や効能については基本的に先発医薬品(新薬)と同等としているが、製造法や品質管理は製造会社により、様々に異なる。このため日本の製薬会社により製造された後発医薬品においても、2020年(令和2年)に小林化工による死亡を含む大規模な健康被害の発生例がある。 詳細は「小林化工#成分誤混入による健康被害」を参照 また、後発医薬品企業で日本最大手の日医工においても、製品の自主回収が相次いで発出され、2020年(4月1日から12月11日現在)では35医薬品(クラスII該当、承認規格または社内規格不適合、承認書にない工程を実施、試験の実態と手順に齟齬、書類不備など)に上った。日医工は、品質試験で基準に満たずに廃棄すべき錠剤を再利用していた件について、多くの品目を製造してスケジュールが厳しくなっていたことも理由の一つとして挙げている。 「日医工#事案」も参照 これらの事案に対し、日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会は、2020年(令和2年)12月18日に「ジェネリック医薬品関連で発生している各種回収事案についての緊急声明文」を発表。その中で「ジェネリック医薬品の信頼を損ねる事案が相次いで発生したことに、大きな失望を禁じ得ない」「少数の企業の不祥事により、後発医薬品の努力と信頼が崩れることは、決して容認できない」と激しく非難するとともに、小林化工・日医工の2社に対し事案内容の詳細な公表、第三者委員会による調査受け入れ、再発防止策の立案とその公表を、同学会として強く要望するに至った。また一連の事態について、日本経済新聞は2021年(令和3年)3月6日に「相次ぐ不祥事は、薬価引き下げや薄利多売の構造的課題を抱えながら、拡大路線に走ってきた業界のひずみを浮き彫りにしている」と分析・報道している。 2020年12月に判明した小林化工による健康被害問題をきっかけに、他社の医薬品の事故や品質問題も次々明るみにとなり、さらに回収や出荷停止が相次ぐ展開となった。日刊ゲンダイの取材において、ある大手薬局チェーンの担当者は「毎日回収の情報があり、卸も薬局も対応に追われ大混乱で、経験した事がないレベルの事態です。そのうえ、オリンピック開催によって、観客や選手の新型コロナ感染だけではなく熱中症などでも医薬品の需要が増えたら、とてもじゃありませんが耐え切れそうにない。命に抱わる深刻な健康被害も起きかねない」と応じ、ある医薬品卸の関係者も「安定確保医薬品と言って、その医薬品が無いと命の危険に直結し、かつ簡単に代替の効かないような薬を(2021年)6月1日に厚生労働省がリストアップしたところです。全部で506成分あって、特に優先度が高いものだけで21成分。この中で新型コロナ治療やワクチン副反応対応で対処療法として使う可能性があるものが13成分ほどあります。また現在流通に問題があったり製薬会社の出荷に不安があったりして、特に心配なものが18成分はある。オリンピック・パラリンピックで多くの人が集まって新型コロナがまた流行したり何か大きな事故があったりしたら、既に現段階で逼迫しているのですから、あっという間に命に直接関わる医薬品の供給がストップするかもしれません。その時にはもはや地域や、薬の内容は関係なく、日本中大混乱になりかねません。絶対起こしてはならない恐ろしい事態です。医薬品業界としては、昨年より今年の方が危ない状態なんですよ。なのに命がけで綱渡りをする必要があるでのでしょうか」と答えている。 ジェネリック医薬品の品質に懐疑的な考えの病院では、必要以上にジェネリックを導入しない方針を取るケースがある。
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