彫像・浮彫り
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/11 17:14 UTC 版)
スクー寺院の第3層目の寺苑には、ガルーダのほか、3体の扁平なカメの彫像や、自身の陰茎を握る等身大の男像など多くの彫像ならびに浮彫りの彫刻が見られる。 3体の亀の彫像 2体の大きなカメの彫像がピラミッドの入口付近にあり、残る1体の彫像は主祠堂の前より少し離れた位置にある。幅およそ2メートルの3体のカメの頭部はすべて西側を向いている。それらの平らな甲羅は、清めの儀式や祖先崇拝のための祭壇として備えられたとも考えられる。ヒンドゥー教の神話において、カメは乳海攪拌におけるヴィシュヌ神の化身(アヴァターラ)のクールマであり、世界の基礎・土台を象徴する。 陰茎を握る男像 1463-1464年頃に構築された南側の基壇(祭壇)付近にある頭部を失した陰茎を握る男像は、祭壇を守護する彫像あるいは寺院でなされた豊産の祭儀を象徴する造形とも捉えられる。南側の基壇にはシヴァの石柱 (Siva Obelisk) が立つ。 ビーマの浮彫り 主祠堂の北側前方の石造構造物(モノリス)の基壇には、馬蹄形(子宮の形)のなかにヒンドゥー教の大神バターラ・グル(英語版)とビーマを描いた石板彫像がある。ビーマはインドの叙事詩『マハーバーラタ』のパーンダヴァ兄弟5人のうち英雄として登場する戦士である。 『スダマラ』の浮彫り 北西側には、動物の彫像とともに石板の浮彫りが集約して置かれ、西暦1440年の碑文が認められるものなど、古代ジャワ文学『スダマラ』物語の場面を描いたいくつかの浮彫りがある。スダマラは『マハーバーラタ』に登場するサハデーヴァ(サデワ、ジャワ語: Sadewa)である。物語は、女神ウマー(Uma、パールヴァティー)が夫神シヴァ(グル神、Guru)によりドゥルガーに変えられるが、シヴァに救われたサハデーヴァによってウマーの姿に戻り、スダマラ(「穢れを浄化する」の意)の名を授ける。『スダマラ』はワヤンの演目にある。これらのスダマラ物語の浮彫りのもとの位置は不明であるが、どのように配置されていたかは、北側の基壇上の壁面にスダマラに付随する浮彫りが今に残ることにより知ることができる。 鍛冶屋の浮彫り 遺跡の南壁面側には、鍛冶屋で剣戟を鍛造する1組の男(ビーマ、アルジュナ)の像と、ヒトの身体でゾウの頭を持つ神ガネーシャの踊る姿を描いた浮彫りがある。ヒンドゥー・ジャワの神話では、鍛冶屋は金属を変造する技術のみならず、霊的に超越する鍵を持つものと考えられている。鍛冶は火の神より剣(クリス)を造りだす力を得たものであり、鍛冶屋は聖堂と見なされる。ヒンドゥー・ジャワの王政は、ときに剣戟の所有により正当化され、権限が与えられていた。 鍛冶屋の浮彫りにある冠をかぶった象頭の彫像は、障害を取り去るヒンドゥー教の神ガネーシャを描いている。しかし、ガネーシャの姿は、ほかによくある描写といくつかの点で異なる。座る代わりに、スクー寺院の浮彫りにあるガネーシャの形象は踊る姿を見せており、また、性器の露出、悪魔的な顔つき、妙に間の抜けた踊りの姿態、骨のロザリオ(またはラトル)を持ち、イヌと思われる小動物をつかむなど顕著な特徴がある。このスクー寺院のガネーシャの浮彫りについては、ターラナータ(英語版)が記したチベット仏教史に見られる密教の儀式との類似性も指摘される。
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