彫刻としての特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/09 04:21 UTC 版)
水滴の集合として現れる霧は、固有の形をとどめずに変化し続けるプロセスであり、固定した形を鑑賞しようとする者の認識には抵抗する。こうして霧の彫刻は記録ではなく、出来事として表現される。物質的な状態や振る舞いを意味するメディウムが、中谷の作品に共通する特徴であり、この特徴はメディア・アートなど中谷の他の芸術活動にも共通している。 霧の彫刻は、視覚だけでなく全感覚を通して環境を知覚するのを助け、知覚だけでなく動作にも影響を及ぼす。中谷は、霧の彫刻を最も気に入っている点として、自然条件の均衡そのものの現象であり、条件が少しでも変われば消えてしまう点にあるかもしれないと書いている。サンフランシスコ、ボストン、ロンドンなど霧で知られる地域での展示も多く、これには人工の霧を各地の霧と出会わせるイメージもある。 1980年代には、霧の彫刻の発表を中断した時期もあった。商業イベントで霧の演出を依頼されることが増えたため、消費文化の活動から距離をとるのが目的だった。霧の彫刻について、1996年に中谷は以下のように書いている。 いま、切実に問われているのは、人間と自然の間の信頼関係ではないかと思う。私たち都会人は、ペットボトルの水しか信用しなくなってしまった。水道の水は臭くて飲めない。川や海は汚染されているからプールで泳ぐ。そこまで自然を信用できなくなったら、もうバーチャルな世界で泳ぐしかない。(中略)人工霧を大量に発生させて、環境とのインタラクションを楽しむ「霧の彫刻」は、大気の呼吸を視覚化して刻々に変化するライブ環境であり、自然と向き合う媒介項としての彫刻である。
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