霧の彫刻
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霧の彫刻 (きりのちょうこく, 英: Fog Sculptures)は、芸術家の中谷芙二子による一連の作品。人工の霧を発生させる装置を使い、1970年から約50年にわたり世界各地で展示されている。中谷は「霧の彫刻家[1]」や「霧のアーティスト[2]」とも呼ばれており、本作品は中谷の代表的なシリーズとなった[3]。
注釈
- ^ 宇吉郎が学んだ物理学者の寺田寅彦は、「茶わんの湯」というエッセイで、茶碗の湯気の観察から始めて霧や雲などの気象現象の原理を解説している[7][8]。
- ^ 宇吉郎は著書『雪』で、この問題を書いている[10][9]。
- ^ クルーヴァーは学生時代にスウェーデン映画協会連盟を設立し、アメリカの映画や文化を好んでいたが、実用性や政治的な価値を重視する状況に不満を抱いた[12]。
- ^ Experiments in Art and Technologyという組織名は、税金対策のために弁護士がつけた名前であり、メンバーは特にExperiments(実験的)という部分に不満をもっていた[12]。
- ^ 1960年代から1970年代にかけて、バックミンスター・フラーの著書『宇宙船地球号操縦マニュアル』(1968年)や、スチュアート・ブランドが創刊した雑誌『全地球カタログ』(1968年-1971年)などが出版された。アメリカでは『全地球カタログ』は150万部を越す人気となり、地球規模で環境を考えることが広まり、テクノロジーを役立てるための試みが芸術においても行われた[13]。
- ^ コンポジションに対する呼称として、中谷は自らの作品をデコンポジションと名付けた[14]。
- ^ 『九つの夕べ』の参加者は、ジョン・ケージ、スティーヴ・パクストン、イヴォンヌ・レイナー、ラウシェンバーグ、デイヴィッド・チューダーなど[16]。
- ^ クルーヴァーとラウシェンバーグは、マース・カニンガムのダンス・カンパニーの日本公演に同行していた[17]。ラウシェンバーグは来日時にコンバイン作品の公開制作を行なった[18]。
- ^ 当時、生物学者のレイチェル・カーソンによる著書『沈黙の春』(1962年)が環境汚染の問題提起を行っていた。また、都市計画が住環境に与える悪影響はジェイン・ジェイコブズの著書『アメリカ大都市の死と生』(1961年)が指摘していた[19]。
- ^ 中谷はビデオ・アートとして『水俣病を告発する会 - テント村ビデオ日記』(1972年)を発表した。これは公害病である水俣病患者の支援者による、チッソへの抗議活動を撮影した作品だった[20]。
- ^ 霧は大気汚染によって増加する性質があり、ロンドンや横浜では霧が減りつつある。汚染物質を高濃度に含む酸性霧が環境に与える影響も研究されている[23]。
- ^ dNAは、魚や鳥の群れの動きや細胞の分化など、ボトムアップによる自律的な生成システムを追求している[33]。
- ^ 万博には『太陽の塔』が著名となった岡本太郎をはじめ、実験工房出身の山口勝弘や武満徹、伊福部昭、一柳慧、小杉武久など多数の芸術家が参加した。他方で、万博への参加は国策に協力するプロパガンダ芸術とみなす批判もあり、万博破壊共闘派などの芸術運動も起きた[35]。
- ^ アジア市場の拡大を目指すペプシコは事業として万博に参加し、パビリオンの企画をE.A.T.に依頼した。他の参加者として、映画制作者・画家・彫刻家のロバート・ブリアらもいた[36]。
- ^ ミーの会社はエコロジカルな噴霧装置で事業を拡大し、農業用、工業用、屋外クーリング、加湿装置などで世界的に利用されるようになった[38]。
- ^ 風洞実験では、1/200のペプシ館の模型とドライアイスを使った[40]。
- ^ チューダーはE.A.T.でも活動し、他にも『BANDNEON!』などの作品を発表した[21]。
- ^ 東九条は、韓国併合(1910年)の影響によって戦前から在日朝鮮人が多く生活し、戦後はバラックの撤去、東海道新幹線敷設などの影響を受けた。密集や火災の多発などの生活環境が社会福祉の観点から問題視されたが、対策が進められたのは1980年以降だった[50]。
- ^ 短辺では上下のノズルは高さ約3.6メートル、約12.5センチ間隔で設置された。ノズルの角度は、包囲や上下によって違いがあり、東側では上列ノズルは下向き45度、下列ノズルは下向き30度であり、西側では上列が0度、下列が下向き45度となる。長辺のノズルは1列のみで約10センチ間隔、下向き30度となっている[53]。
- ^ 参加した芸術家は高谷史郎、曽根裕、カールステン・ニコライなど[61]。
- ^ サンフランシスコは霧の街としても知られている。寒流であるカリフォルニア海流が、陸地から流れる空気を冷やし、空気中の水分が集まって霧へと変わる[71]。カリフォルニア州の気候も参照。
出典
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- ^ 水戸芸術館 2019, pp. 34–37.
- ^ 港区探訪 品川シーズンテラス(Kissポート、2015年。2021年4月12日閲覧)
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