霧の彫刻とは? わかりやすく解説

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霧の彫刻

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/13 08:12 UTC 版)

霧の彫刻 (きりのちょうこく, : Fog Sculptures)は、芸術家の中谷芙二子による一連の作品。人工のを発生させる装置を使い、1970年から約50年にわたり世界各地で展示されている。中谷は「霧の彫刻家[1]」や「霧のアーティスト[2]」とも呼ばれており、本作品は中谷の代表的なシリーズとなった[3]


注釈

  1. ^ 宇吉郎が学んだ物理学者の寺田寅彦は、「茶わんの湯」というエッセイで、茶碗の湯気の観察から始めて霧や雲などの気象現象の原理を解説している[7][8]
  2. ^ 宇吉郎は著書『雪』で、この問題を書いている[10][9]
  3. ^ クルーヴァーは学生時代にスウェーデン映画協会連盟を設立し、アメリカの映画や文化を好んでいたが、実用性や政治的な価値を重視する状況に不満を抱いた[12]
  4. ^ Experiments in Art and Technologyという組織名は、税金対策のために弁護士がつけた名前であり、メンバーは特にExperiments(実験的)という部分に不満をもっていた[12]
  5. ^ 1960年代から1970年代にかけて、バックミンスター・フラーの著書『宇宙船地球号操縦マニュアル』(1968年)や、スチュアート・ブランドが創刊した雑誌『全地球カタログ』(1968年-1971年)などが出版された。アメリカでは『全地球カタログ』は150万部を越す人気となり、地球規模で環境を考えることが広まり、テクノロジーを役立てるための試みが芸術においても行われた[13]
  6. ^ コンポジションに対する呼称として、中谷は自らの作品をデコンポジションと名付けた[14]
  7. ^ 『九つの夕べ』の参加者は、ジョン・ケージスティーヴ・パクストンイヴォンヌ・レイナー、ラウシェンバーグ、デイヴィッド・チューダーなど[16]
  8. ^ クルーヴァーとラウシェンバーグは、マース・カニンガムのダンス・カンパニーの日本公演に同行していた[17]。ラウシェンバーグは来日時にコンバイン作品の公開制作を行なった[18]
  9. ^ 当時、生物学者のレイチェル・カーソンによる著書『沈黙の春』(1962年)が環境汚染の問題提起を行っていた。また、都市計画が住環境に与える悪影響はジェイン・ジェイコブズの著書『アメリカ大都市の死と生』(1961年)が指摘していた[19]
  10. ^ 中谷はビデオ・アートとして『水俣病を告発する会 - テント村ビデオ日記』(1972年)を発表した。これは公害病である水俣病患者の支援者による、チッソへの抗議活動を撮影した作品だった[20]
  11. ^ 霧は大気汚染によって増加する性質があり、ロンドンや横浜では霧が減りつつある。汚染物質を高濃度に含む酸性霧が環境に与える影響も研究されている[23]
  12. ^ dNAは、魚や鳥の群れの動きや細胞の分化など、ボトムアップによる自律的な生成システムを追求している[33]
  13. ^ 万博には『太陽の塔』が著名となった岡本太郎をはじめ、実験工房出身の山口勝弘武満徹伊福部昭一柳慧小杉武久など多数の芸術家が参加した。他方で、万博への参加は国策に協力するプロパガンダ芸術とみなす批判もあり、万博破壊共闘派などの芸術運動も起きた[35]
  14. ^ アジア市場の拡大を目指すペプシコは事業として万博に参加し、パビリオンの企画をE.A.T.に依頼した。他の参加者として、映画制作者・画家・彫刻家のロバート・ブリア英語版らもいた[36]
  15. ^ ミーの会社はエコロジカルな噴霧装置で事業を拡大し、農業用、工業用、屋外クーリング、加湿装置などで世界的に利用されるようになった[38]
  16. ^ 風洞実験では、1/200のペプシ館の模型とドライアイスを使った[40]
  17. ^ チューダーはE.A.T.でも活動し、他にも『BANDNEON!』などの作品を発表した[21]
  18. ^ 東九条は、韓国併合(1910年)の影響によって戦前から在日朝鮮人が多く生活し、戦後はバラックの撤去、東海道新幹線敷設などの影響を受けた。密集や火災の多発などの生活環境が社会福祉の観点から問題視されたが、対策が進められたのは1980年以降だった[50]
  19. ^ 短辺では上下のノズルは高さ約3.6メートル、約12.5センチ間隔で設置された。ノズルの角度は、包囲や上下によって違いがあり、東側では上列ノズルは下向き45度、下列ノズルは下向き30度であり、西側では上列が0度、下列が下向き45度となる。長辺のノズルは1列のみで約10センチ間隔、下向き30度となっている[53]
  20. ^ 参加した芸術家は高谷史郎、曽根裕カールステン・ニコライなど[61]
  21. ^ サンフランシスコは霧の街としても知られている。寒流であるカリフォルニア海流が、陸地から流れる空気を冷やし、空気中の水分が集まって霧へと変わる[71]カリフォルニア州の気候も参照。

出典

  1. ^ a b “令和二年度文化庁長官表彰名簿”. 文化庁. (2020年12月17日). https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/pdf/92684701_02.pdf 2021年4月12日閲覧。 
  2. ^ a b “霧のアーティスト・中谷芙二子が日本初の大規模個展を開催。半世紀にわたり霧とビデオで示してきた「抵抗」”. 美術手帖. (2018年9月22日). https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/18491 2021年4月12日閲覧。 
  3. ^ 岡崎 2018e.
  4. ^ a b c 岡崎 2018c.
  5. ^ 菊池 2019.
  6. ^ 岡崎 2018e, pp. 230–232.
  7. ^ 寺田 2000.
  8. ^ 岡崎 2018e, pp. 238–239.
  9. ^ a b 岡崎 2018e, p. 242.
  10. ^ 中谷 2012.
  11. ^ 岡崎 2018e, pp. 239, 241–243.
  12. ^ a b c d 岡崎 2018a.
  13. ^ 尾崎 2021.
  14. ^ 岡崎 2018e, p. 246.
  15. ^ 中谷 2019, p. 198.
  16. ^ 9 Evenings: Theatre and Engineering(Daniel Langlois Foundation、2006年。2021年4月12日閲覧)
  17. ^ a b 岡崎 2018e, pp. 246–247.
  18. ^ 池上 2015, pp. 272–273, 276–277.
  19. ^ 岡崎 2018d.
  20. ^ ホリサキクリステンズ 2019, p. 277.
  21. ^ a b c d 阿部, 一直 (2010年7月15日). “環境創造としてのインスタレーション/チュードアへの応答(中谷芙二子+高谷史郎「CLOUD FOREST」)”. artscape. https://artscape.jp/report/curator/1216611_1634.html 2021年4月12日閲覧。 
  22. ^ 山峰 2019b, pp. 65–66.
  23. ^ 井川 2015, pp. 59–60, 62.
  24. ^ 井川 2015, pp. 59–60.
  25. ^ a b c d クルーヴァー 2020.
  26. ^ a b 岡崎 2018b.
  27. ^ a b 中谷 2019, p. 200.
  28. ^ 中谷 1996, pp. 198–199.
  29. ^ 山峰 2017b.
  30. ^ a b 中谷 1996.
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  32. ^ 岡崎 2018e, p. 248.
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  34. ^ “CLOUD WALK @ZKM. Fog Sculpture #10731”. ZKM. (2019年8月25日). https://zkm.de/en/cloud-walk-zkm-fog-sculpture-10731 2021年4月12日閲覧。 
  35. ^ 山本 2019, pp. 140–143.
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  37. ^ 水戸芸術館 2019, pp. 20–21.
  38. ^ 山峰 2019a, p. 222.
  39. ^ 山峰 2019a, pp. 219–222.
  40. ^ 山峰 2019a, p. 224.
  41. ^ 山峰 2019a, pp. 223–225.
  42. ^ a b 水戸芸術館 2019, p. 22.
  43. ^ 水戸芸術館 2019, pp. 28–29.
  44. ^ 水戸芸術館 2019, pp. 40–41.
  45. ^ 水戸芸術館 2019, p. 31.
  46. ^ “島へ - 海を渡る音 ヨハン・ヨハンソンの世界”. インタークロス. (2007年). https://intercross-com.co.jp/uploadpdf/report_pdf4_1190720469.pdf 2021年4月12日閲覧。 
  47. ^ YAMAMINE, JUNYA (2017年5月17日). “【前編】芸術と科学を越境するアーティスト、中谷芙二子。テート・モダンで77番目の霧の新作を発表”. Bound Baw. http://boundbaw.com/world-topics/articles/28 2021年4月12日閲覧。 
  48. ^ 水戸芸術館 2019, pp. 46–47, 50–51.
  49. ^ 水戸芸術館 2019, pp. 48–49.
  50. ^ 山本 2009.
  51. ^ “展覧会「霧の街のクロノトープ」”. 京都市立芸術大学. https://liquid-kcua.jp/2020/10/16/exhibition-2020/ 2021年4月12日閲覧。 
  52. ^ “中谷芙二子と高谷史郎が見せる「霧の街のクロノトープ」。京都・北河原団地跡地で野外公開”. 美術手帖. (2020年12月5日). https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/23191 2021年4月12日閲覧。 
  53. ^ 平倉 2021, p. 19.
  54. ^ 平倉 2021, pp. 19–21.
  55. ^ 平倉 2021, p. 27.
  56. ^ Over the Water: Fujiko Nakaya(Exploratorium、2013年。閲覧2021年4月12日)
  57. ^ 水戸芸術館 2019, pp. 26–27.
  58. ^ 水戸芸術館 2019, p. 42.
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  69. ^ - ESCULTURA DE NIEBLA Nº 08025 (F.O.G.) Fujiko Nakaya(Guggenheim Bilbao。2021年4月12日閲覧)
  70. ^ a b 水戸芸術館 2019, pp. 44–45.
  71. ^ Fog Bridge #72494(Exploratorium、2013年)
  72. ^ Fog Bridge #72494 by Fujiko Nakaya(Exploratorium、2013年)
  73. ^ a b “中谷芙二子「霧の彫刻」を常設する長野県立美術館がオープン。「ランドスケープミュージアム」が目指すものとは”. 美術手帖. (2021年4月10日). https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/23874 2021年4月12日閲覧。 
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  75. ^ “中谷芙二子監修の「霧」を抜けて。よみうりランドで「Pokémon WONDER」がオープン”. 美術手帖. (2021年7月7日). https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/24266 2021年8月3日閲覧。 
  76. ^ “中谷芙二子氏が芸術文化勲章を受章”. フランス大使館. (2019年1月17日). https://jp.ambafrance.org/article12533 2021年4月12日閲覧。 
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  78. ^ 水戸芸術館 2019, pp. 34–37.
  79. ^ 港区探訪 品川シーズンテラス(Kissポート、2015年。2021年4月12日閲覧)


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