不甲斐ない
別表記:不甲斐無い、腑甲斐ない
「不甲斐ない」とは、だらしない、しまりがない、意気地がない、根性が足りない、見ていて情けなくなるほどだ、といった意味で用いられる表現である。「不甲斐ない結果に終わる」「不甲斐ない気持ちでいっぱいだ」といった言い回しで用いられることが多い。
文脈に応じて「不甲斐がない」「不甲斐のない男」「不甲斐なさを感じる」といった語形で用いられることもある。
「不甲斐ない」という言い方ではない形で「不甲斐」という表現が用いられる例は見出し難い。たとえば「不甲斐がある」という表現はない。
「甲斐」という言葉はあるが、「不甲斐」の「不」が「甲斐」に係る否定語であるとは言い難い。
「不甲斐ない」の「不」は当て字であろうと推定されている。
かつて「不甲斐ない」は「腑甲斐ない」とも表記された。たとえば明治文学では「不甲斐ない」よりも「腑甲斐ない」と表記される例の方が多く見つかる。
- 「わたしのように腑甲斐ないものは、大慈大悲の観世音菩薩も、お見放しなすったものかも知れません」(芥川龍之介「藪の中」)
- 「一個の創作家たるものが、いつまでもお手本の匂いから脱する事が出来ぬというのは、まことに腑甲斐ない話であります」(太宰治「芸術ぎらい」)
- 「彼は、その場合にそれほど大切な品物をぼんやり忘れてしまう自分の腑甲斐なさがしみじみと情なかった」(菊池寛「出世」)
- 「我を腑甲斐なしと思ふな、腕には職あり身の健やかなるに、いつまで斯くてはあらぬものをと口癖に仰せらるゝは」(樋口一葉「軒もる月」)
- 「明智は訳の分らぬことを云って、 不甲斐なくも渋面を作った」(江戸川乱歩「猟奇の果」)
- 「そして、布引氏は不甲斐なくも、いつしか意識を失ってしまった」(江戸川乱歩「恐怖王」)
- 「イヤイヤこれも自分が 不甲斐ないからだと、思い返してジット辛抱。」(二葉亭四迷「浮雲」)
不甲斐ない
「不甲斐ない」とは、情けない・歯がゆいほどに意気地がない・気概がないという様を意味する表現である。
「不甲斐ない」とは・「不甲斐ない」の意味
不甲斐ないとは、情けない状態を意味する言葉である。他にも、意気地がない、歯がゆい、などネガティブな感情を抱くときに使われる言葉だ。周囲からの期待や希望に沿うことができずに、良い結果が出ないときなどに自分に感じる残念な気持ちを言い表している。不甲斐ないというこの言葉の語源には諸説ある。例を挙げると「甲斐」つまり、行動の結果としての効き目や効果、それをしてみるだけの値打ちという意味のある「甲斐」に対し、それを打ち消す意味である「不」を付けて「不甲斐ない」となったという説である。他にも、江戸時代の方言集にある、「いふかひなし(云甲斐無し)」の「い」が抜け落ちたという通説も存在する。これは「言ってもしかたがない(言う甲斐なし)」という言葉が時代とともに変遷し「情けない」「意気地がない」「だらしがない」といういまの不甲斐ないに近い意味になっていったとされている。「不甲斐ない」の不を腑という一文字に変え、「腑甲斐ない」が語源だったという説もある。腑とははらわたや、心の底という意味を持っているため、心の底から甲斐がない、つまり無駄なことである、を意味する。いずれにしても、自分に対しても、人からの評価でもネガティブなニュアンスで使われるというところは、昔もいまも変わりはない言葉である。
「不甲斐ない」の熟語・言い回し
不甲斐ないの熟語や、言い回しには次のようなものがある。不甲斐ない気持ちとは
残念な気持ち、情けない気持ちを表している。大事な試合に負けてしまったときや、仕事で思ったほどの成果が出なかったときなど、自分の力不足を感じる場面などで使用される表現である。
不甲斐ない自分とは
周囲の希望や期待に沿うことができないときなど、自分をネガティブに評価したときに用いる。情けなく、歯がゆい状態を言い表した言い回しである。気概がなく、自信も持てず宙ぶらりんで心細いようすも表している。
不甲斐ない気持ちでいっぱいとは
物事に対し、自分の力が足りないとき、自分ではどうすることもできないときに、自分を卑下するのと同じように、情けなく、歯がゆいという意味を込めて使う。情けない気持ちでいっぱいという表現と意味はほとんど同じである。
不甲斐ない態度とは
いくじがなく何事にも及び腰で情けないさまを表す言葉である。勇気が持てなくてぐずぐずとし、周囲から見て歯がゆいさまを言い表している。なにをしても気力が感じられず、無気力な感じを漂わせる態度のこと。
不甲斐ない私ですがとは
いくじのない、情けない私、と自分を過小評価するようなときに使う。自分を謙遜しているようにも取れる表現だ。「不甲斐ない私ですが」の後に続く言葉によっては、希望が感じられる前置きにもなる。
「不甲斐ない」の使い方・例文
期待されていた大事なプロジェクトに対してこんな結果しか出せずに不甲斐ないあんなに努力して勉強したのに、希望の学校に入れず不甲斐ない気持ちでいっぱいだ
あれもだめ、これもだめ、得意なことがなにもない自分が不甲斐なくて泣けてくる
どんなときもあなたの力になってあげたいのに、それが叶わなくて自分が不甲斐ない
大好きな彼女がいるが、こんな不甲斐ない自分に結婚する権利はない
子どもがなかなか言うことを聞かない、親の自分が不甲斐ないからだ
絶叫マシンが怖くて、彼女の前で泣いてしまった、不甲斐なくて自分が嫌になる
大事な試合にかけていたのに、こんな結果になってしまい本当に不甲斐ない
大切な人に告白したいけれど、こんな不甲斐ない自分でも大丈夫だろうか
不甲斐ない自分ではあるが、精一杯努力するのでご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いしたい
ふがい‐な・い〔ふがひ‐〕【×腑▽甲×斐無い/不▽甲×斐無い】
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