尼港開城の条件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/06 08:50 UTC 版)
尼港開城にあたって、日本軍とパルチザンの間でかわされた合意条項に関して、双方の見解を比較する。 まず日本側だが、『西伯利出兵史要』は「日露(パルチザン)両軍が治安を維持すること。裁判なくして市民を銃殺しないこと。ほしいままに市民を捕縛したり、略奪したりしないこと」が合意事項であったようだとし、『西伯利出兵 憲兵史』は「ニコラエフスク市内においては反革命派を検束しないこと。規定数以上のパルチザンを市内に入れないこと」だったのだろうとする。 一方、スモリャークが述べるソ連側の見解では、一応、日本側は交渉の席で、「人格と住居の完全な不可侵、白軍や官吏、政府機関職員を含む全市民の財産の不可侵。過去の完全な免責。新政権と同一の見解に立たない白軍の全将校と兵士は、日本軍司令部の保護下におかれ、航行が再開され次第、その護衛の下に自由に外国に出国する権利をもち、また出国にいたるまでの期間軍服を着用する権利を保持する」という保障を求めたが、パルチザン側はこれを認めなかった、としている。原暉之もまた、ソ連側文献を根拠に、日本側からは「砲を日本軍にわたすこと。入市するパルチザンの数を制限すること。新政権と意見のあわない将兵は日本軍と日本領事館の保護を受け、解氷とともに出国する権利を保障されること」といった条件が出されたが、パルチザン側はこれをつっぱね、日本軍が折れて合意に達した、とする。 これに関して、事件直後の宣誓証言から、引用する。 私は、町の引渡しに関する赤軍との交渉が、どのように始まったのか正確には知らない。秘密裏に行われていたからである。その後、我々(白軍司令部)の代表数人も参加した。これらの代表者は、ムルガボフ少尉とネムチノフ大尉である。これら軍の代表者に、町の代表者たちが加わった。町の代表者は、市長カルペンコ、市議会議長コマロフスキイ、ゼムストヴォ(地方自治会)の議長シェルコブニコフであった。交渉が終ると、メドベーデフ大佐は会合を召集し、白水中将の宣言によって、日本軍は赤軍との交渉を始め、町を引渡すことを決定し、しかも引渡しの条件もすでに決定している、と文書を読み上げて、我々に伝えた。全部は憶い出せないが、最も重要なポイントは次のようなものであった。ロシア軍(白軍)部隊は、個々人の免責は保障される、そして、アムール河の航行が可能となったら、町を自由に離れることも許可される。日本軍は武器を保持するが、ロシア軍は赤軍が町に入る前に、武器と装備を日本軍に引き渡す。また、町の住民は、一切の免責と平和を保障される — グリゴリエフ中佐(『ニコラエフスクの破壊』付録A 事件直後の宣誓証言集、pp. 171-172) 町を引渡すときの条件は、以下のようなものであった。日本軍は武器を保持する。ロシア軍(白軍)部隊は、パルチザン入市以前に日本軍によって武装解除され、全ての町の警備は一時的に日本軍によって代行される。ロシア軍のその後の処遇については、ソビエト政府の法律によって決定される。市民は、その自由を制限されることはない。この最後の項目は、希望的な表現になっていた — E.I.ワシレフスキイ(『ニコラエフスクの破壊』付録A 事件直後の宣誓証言集、p. 202) 誰もが、『流血が起らない限り、日本軍は、権力の移譲に反対しない』という白水中将の声明に驚いた。日本軍は、休戦に合意した。一方ロシア軍(白軍)は、武装解除を要求された。合意によれば、ロシア軍派遣隊は、パルチザンの到着前に日本軍に武器を引き渡すこと、そして市内の治安維持活動も日本軍に引き継がれることになっていた。パルチザンとの戦闘に参加した者に対しては、全員の罪の免除が保障されていた — S.I.バルナシェフ(『ニコラエフスクの破壊』付録A 事件直後の宣誓証言集、p. 210) 降伏に関して、その条件案が話し合われました。それによると、逮捕されるのは諜報機関のメドベーデフ大佐と参謀長スレズキンだけとなっていました。全ての市民とその資産は、無傷で保全されることになっていました。この降伏に関する条件が、町中に張り出されまし — V.N.クワソフ(女子学生)(『ニコラエフスクの破壊』付録A 事件直後の宣誓証言集、p. 243) 合意では、日本軍は、日本人居留民ならびにロシア人を含む一般住民の、護衛権を保持することになっていた。その他の合意条件は、次の通りであった。パルチザンの到着以前にロシア軍(白軍)は武器を日本軍に引渡すこと、日本軍は武器の保有権を有すること、パトロールを継続できること、日本人所有の建物の護衛権を保持すること — I.R.ベルマント(『ニコラエフスクの破壊』付録A 事件直後の宣誓証言集、p. 239)
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