将棋の棋譜
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/21 23:23 UTC 版)
将棋の棋譜の表記例 基本的な考え方はチェスの代数式と同様である。 先手、もしくは下手を下として、盤面を右上を基点として、横を1、2、……、9の算用数字、縦を一、二、……、九の漢数字(古くは縦横いずれも漢数字を用いた)とし、手番と進んだ先、駒を示す。例えば、第一手で先手が角道を開ける手は、「▲7六歩」である。▲は先手、△は後手を示す。ただし、印刷物では三角形の代わりに将棋の駒をかたどったものである「☗」(U+2617、画像:)、「☖」(U+2616、画像:)を使うことが多い。 ただし、日本将棋連盟では、漢数字を使わずに縦横いずれも算用数字で棋譜を記録するように定めてある。 直前の相手の移動先の駒もしくは打った駒を取る場合は、移動先の代わりに「同」を用いて「▲同金」のように記す。ただし、改ページの直後が「同」を用いる手となる場合や解説書などで「同」を用いる手から棋譜を記すときは「▲3三同金」のように動かした場所を明確にすることもある。 移動によって成ることができる場合、成った場合は「成」(「なり」と読む)、成らなかった場合は「不成」(「ならず」と読む)を付け加える。ルール上成れない場合「不成」は付けない。ただしルール上必ず成らなければいけない場合(歩や香車が最前線に、桂馬が敵陣2段目以内に移動した場合)は「成」を付ける。なお、字数を減らす、あるいは字数を整えるためなどの理由により「不成」を「生」と表記することもある。 詰将棋においては、特に駒の種類を特定しなくてもよい合駒を「合」と表記することがある(「△2三合」など)。また、「合駒である」ということを強調するため、指し手に「△2三銀合」などと「合」を加えることもある。 上記の表現のみではどの駒を動かしたのか特定できない場合は、さらに以下の文字を付記して区別する。 「打」(うち、うつ) その位置に盤上の同種の駒が移動できる位置に持ち駒を打った場合、駒の後ろに「打」をつける。右の図で、持ち駒の銀将を7三に打ったときは「▲7三銀打」となるが、7二に打ったときは7二に動ける盤上の銀は存在しないので単に「▲7二銀」となる。 「寄」(よる)「引」(ひく)「上」(あがる) その位置に盤上の同種の別の駒が移動できる位置に盤上の駒を移動させた場合「寄」「引」「上」によって具体的な移動を記述する。横方向にのみ移動し縦方向の移動がなかった場合は「寄」、縦方向に1段以上下がった場合は横方向への移動に関係なく「引」、縦方向に1段以上上がった場合はこちらも横方向への移動に関係なく「上」で表す。なお、縦方向への昇降は指した主体から見てのものであり、先手の側からではない。 「右」(みぎ)「左」(ひだり)「直」(すぐ) 「寄」「引」「上」では判断不可能な場合は「右」「左」「直」で区別する。桂馬は「上」以外の動きができない駒であり、3枚以上が同じ場所に移動できることはあり得ないため2枚のうち「右」と「左」どちらにあった方を動かしたかだけで区別する。銀将、金将(成金を含む)の場合は動いた先から見た元の位置が左右どちらにあるかで表し、まっすぐ上に上がった場合は「直」となる。2枚とも同じ筋にあって左右が区別できない場合も考えられるが、この場合、「寄」「引」「上」で判別できるため考える必要はない。なお、まっすぐ下に下がる場合は考える必要はない。まず、銀はそもそもまっすぐ下に下がれない(ただし反則が発生した場合はこの限りではない)。金(成金も含む)の場合、まっすぐ下に下がる動きは「引」に当たるが、金(成金も含む)ができる「引」の動きはまっすぐ下に下がる動きだけなので「引」で必ず区別がつく(ただし反則が発生した場合はこの限りではない)。角行、飛車の場合は「寄」「引」「上」と「右」「左」で表せるため、「直」は使われない。竜馬、竜王の場合は2枚までしか盤上に存在し得ないので同種の別の駒から見て左右どちらにあったかで表し、「直」は使わない。右の図で、1三の竜が2四に動いたときは「▲2四竜右」、2二の竜が動いたときは「▲2四竜左」となる(▲2四竜引ではどちらの竜が動いたが判別できない)。なお、ここでの左右も縦方向への昇段と同様指した主体から見てのものであり、先手の側からではない。また、「右」「左」は動かす前の位置を表し、「寄」「引」「上」のように動いた方向を表すわけではない(例えば銀将や金将に「右」がついた場合は、動かす前に右にあった駒のことを指し、その駒の動いた方向は左である)。 銀将、金将(成金を含む)の場合、「寄」「引」「上」と「右」「左」が複合する場合もある(「直」はまっすぐ上に上がる場合にしか使われないので動く方向は「上」しか考えられないので複合することはない)。右の図で、4二のと金が5一に移動した場合、「▲5一と右上」となる(「上」だけでは6二のと金と区別が付かず、「右」だけでは4一のと金と区別が付かないので両方付記する必要がある)。ただし、どちらか片方だけで区別できる場合は複合しない。右の図で、6二のと金が5一に移動した場合、「▲5一と左」となる(「上」だけでは4二のと金と区別がつかないが、「左」とあれば6二のと金しかありえないのでそれをわざわざ複合して「左上」とはならない)。 なお、他の駒はどちらか片方だけで判別できるので複合することはない(ただし反則が発生した場合や四人将棋(飛車を4枚用いる)の場合はこの限りではない)。銀将と金将(成金を含む)の場合もこの複合だけで全て判別できる(ただし反則が発生した場合はこの限りではない)。表記順序は(先手or後手)、(移動先の筋)、(移動先の段)、「同」、(移動させた(打ったのも含む)駒の移動させる前の種類)、「合」、(「右」or「左」or「直」)、(「寄」or「引」or「上」)、(「成」or「不成」or「打」)の順である。例えば右の図で、先手が8四の銀将を9三に動かし、成ったときは「▲9三銀右上成」となる。 速記する場合は下のような略記法を使うことがある。略記法ではアラビア数字だけを用い、漢数字は用いない。 歩兵 香車 桂馬 銀将 金将 角行 飛車 玉将 フ、・ 禾 土 ヨ 人 ク ヒ、乙 玉 原始筋違い角戦法の出だしの棋譜を例にあげる。 ▲7六歩 △3四歩 ▲2二角成 △同銀 ▲4五角 △6二銀 ▲3四角 △3二金
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